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35 寺院へ

 教授を襲ったのは、仏像を知る者と、柴田は思う。

権力、財力、そして暴力を持たない市井の人であろう。それらがあれば、この地下道はすでに盗掘されていたはずだ。サモの祖父は、知っていたのかも知れない。少なくとも、米国に脱出しようとした輩がかき集めた金目を人夫として運んだのだろう。それは、他にもいるのが当然である。そして、自分たちでは、手が出せないのである。


 翌日、柴田は、屋台に千田を訪ねた。

 昼時、店先では千田のベトナム人の嫁が声をあげていた。

「あら、シバタ。いらっしゃい」

 柴田は手を上げた。嫁は、千田を呼ぶ。

「おう、柴田さん」

 剃り上げた頭に、タオルを巻いている。それを外して、汗を拭く。

「なんか、食うかい」

「焼きそばを」

「わかった」と言いながら、屋台に戻って行く。

 すぐに、パックと缶ビールを二本手にして、戻ってきて、近くのテーブルに座る。

「先生は、元気になったかい?」

「ああ、問題ないが、少し休むように言ってある」

「そうだな。やった奴は?」

「まだ、わからないが、それは警察に任せた。ところで、1日、俺に付き合ってくれないかな」

「それはいいが。いつ」

「早い方がいい。千田さんの都合で」

「俺は、何時でもいいで」

「それと、車を用意して貰いたい。オフロード車を運転手付きで」

「全然、問題ないが、何処へ行くんだい」

「山に御詣りに」


 ホテルで柴田はたこ焼きを肴にウイスキーを呑む。

帰りに千田が持たせたものだ。

 明日には、サッコが日本からやって来る。

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