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34 小佐の手記

 朝、柴田の携帯にメールが入った。

(資料があったわ)

 ミキからであった。ミキは、ベトナムからフランスに直行している。大学の資料室を物色するつもりだった。

 ミキが見つけたのは、インドシナで日本軍の捕虜になったフランス軍小佐少尉の回想録であった。


『私は、日本軍の捕虜となった。日本軍は、特に私たちを虐待するわけではない。隊のトップはカトウと言った。彼は紳士であった。声を荒らげる事もなき、淡々と部下に命令を下した。捕虜になったのは、ジャングルの中である。私自身も何処にいるか分からない。疲れはてていた所に、日本軍と出会ったのだ。抵抗する気は失せていた。ジャングルを私の部隊は日本軍に囲まれながら淡々と行軍した。カトウが止めと言った所に寺院があった。頭を丸刈りにした僧侶が出迎え、私達は食事にありついた。カトウは一人、僧侶の案内で奥に消えて行った。こんな密林に仏陀の寺が有ったのは知らない。夜、カトウは私の所に来た。「仏像に興味があるか?」カトウは

私を寺院の奥に連れて行った。一人の僧侶がいて、カトウが首肯くと扉を開けた。黄金色の仏像が安置されていた。カトウは言った「これは純金で出来ている。触ってはいけない。中には、釈迦の骨が納められている。私は、軍にも伝えていない。私の、父親は、僧侶である。私は、戦いに興味はない。フランスは人民の戦いとなったが、寛容の国と思っている。皆には、命永らえる事を思う。カトウの消息は知らないが、私の部下は大切に扱われた』


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