31 教授の話
サッコの部屋に夕食を済ませた三人がいる。
「敵対する人がいたのね」
教授の状況を聞いて、ミキが言った。
「ミキさん、大学での教授の専門はなんだったの」
「地勢学、それによる植民地政策や独立に伴うその後の紛争の根源と云うことかしら」
「教授が、話してくれたのは、フランスがインドシナを植民地としていた頃からの話だったよ」
窓から外を見ていた柴田が、ソファーに座った。
「教授は、大学の資料室でインドシナでのフランス軍資料を見つけたそうなんだ」
『侵略地での美術品を自国の物としようとするのは、国家の常です。違わず、フランスも軍を伴い、ベトナム中の美術品、とはいっても絵画とかは望めず、主に仏教寺院を調べあげたようだ。その為に、我が大学から二名の専門家が軍に派遣されていた。その経緯と調べた目録が資料として残っていたのだ。美術品としての数は、大したことはない。しかし、一つだけ気になる箇所があった。専門家たちは、カンボジア国境の近く、ジャングルの中に寺院を見つけた。大きな造りではないが東南アジアには珍しい、大乗仏教寺院、僧たちは修行僧であり仏像は少なく、本尊は秘仏とされて、一部の僧しか観られない。そして、それは、等身大で金のみで出来ているとい
う。専門家たちは、見つける事ができなかったと言う。僧たちを問い詰める事も出来ず、軍に言うこともしなかった』
「教授は、それを米軍が運び出したとみている」




