③技能実習生
③技能実習生
柴田は相変わらず、現場に出ている。下水道管の敷設は土で汚れるが、地中に降りて地の断面を見るのが好きなのだ。今まで誰の目にも触れず、何千年の昔のままの地層は、綺麗だと思う。できることなら、そのままにしておきたいとも思う。
また、数メートル降りただけで、地上と隔絶した感がある。意外に騒音も聴こえない。東京区内でも似たようなものだ。
現場の脇、道路沿いに建築現場があった。低層階の建築物だ。柱組は終わり、内装工事に入っている。
その建築現場から、柴田の現場を見る小柄な青年がいた。浅黒い肌に作業服を着ている。流行りの海外からの技能実習生と分かる。姿から、ベトナムだろう。
視線の先には、バックホーがあり、地面を掘る動きをじっと見ていた。すぐに中に戻るが、外に出る度にそうしていた。
昼休み、柴田は外に出て来た青年を呼び止めた。
「どこの国から来たんだい」
青年はびっくりしたように立ち止まり、柴田の顔を見た。黒い髪が少し縮れている。
「ベトナムです」
まだ、日本語に慣れないアクセントだった。
「あの機械が好きなのかい?」
柴田はバックホーを指差して聞いた。
「いえ」
「あれをよく見てたけれど」
青年は、少し考えて「あの機械は高いですか」と言った。
「高いよ。買いたいのかい」
柴田が笑いながら言うと青年は黙り込んだ。
「借りて使えば良い。リース」
青年は顔を上げた。
「リース?」
「そう、使いたい時だけ借りる。お金もそんなにかからない。大きさにもよるけど。でも、免許をとらないとね」
「どこでも、借りられますか」
「日本中にあるよ」
「外国にもありますか?」
「あると思うけど。因みにどの国?」
「私の国です」
「ベトナムかい。んー、機械はあるだろうけど、リースのお店はわからないね。国に帰ったら、そんな仕事をしたいの?」
「いえ、掘りたいところがあります。とても、手では掘れません」
「何を掘るんだい」
青年は、しばらく空を見上げて言った。
「宝」