26/61
25 昼、壁の前で
柴田は、教授の地図を手に、壁に向かった。ホテル再建を口実に汚れを落とされた、綺麗に均され塗られていた白いセメントの壁がある。柴田は、手にした鶴嘴をその壁に打ち込んだ。2、3回打ち込んでは、横に移動しながら10メートル程を、往復した。サッコとミキ、そして教授は、声もたてずに、その打撃音を聴いていた。
鈍い音がした。柴田が頷いた。サッコが大ハンマー振りかぶった。更に音が鈍くなると、壁に10センチ程の穴があき、板と思われる物が現れた。柴田がヘッドライトで照らし、確認する。
「あったね」
教授、笑みを浮かべて言った。
柴田は、木工用の電動ドリルで木板に5センチの孔を開け、高光度のベンシル型ライトを差し入れ、教授に覗くよう促した。
「板と柱の土留めが綺麗に残っているね。殆ど真っ直ぐに続いている」
教授が、覗き込みながら説明する。
教授が離れると、三人が代わる代わる覗き込む。最後に柴田は、穴の前でライターの火を点した。炎は少しだが穴に靡いていた。
「帰ろう」
柴田の言葉に、皆頷く。サッコが白い粘土で、穴を埋めた。




