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②土曜日、夜
②土曜日、夜
四ッ谷、ミキはガードパイプに座り地下鉄の昇り口を見ていた。柴田とサッコとの待ち合わせ場所だ。土曜日の夜、歓楽街とは違い、人通りは多くない。
若いスーツ姿の男が時折、前を通る。視線はミキに向くが、ため息をつきながら、通り過ぎて行く。自分には、到底不釣合なのを感じるのであろう。
肩までにカットした髪、Tシャツにジーンズに七分袖のジャケットを羽織って、足元もスニーカーである。淡い紅だけの化粧だが近寄りがたい品がある。
昨今、品など邪魔な概念となり久しいが、自然に顕すものには、人は畏怖されるものだ。
ミキは、変わらず上り口を見ていると、サッコの笑顔が見えて、隣に柴田が立つ。
四年前、ミキは同じ場所にいた。上り口に現れたのはサッコと柴田、そして金澤だった。最初はサッコが、花束を手にして手をあげた。ミキは思わず駆け寄ろうとして、足を止めたのだった。
三人はイタリアンレストランに入った。