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⑰レストラン
柴田は小さく手を上げる。テーブルの二人が笑顔を返す。三人はグラスを上げる。
「この手紙だ。ミキも読んでいるよ」
サッコが柴田に手渡した。
「俺はフランス語は分からない」
柴田は苦笑いしながら、文面に眼を通す。英文であった。柴田の眼が変わった。サッコとミキは、柴田を見つめている。
柴田が顔を上げた。
「行こうか。ベトナムへ」
柴田は笑っていた。
「いつ」
ミキが言った。
「ミキさんの都合しだい。サッコはどうにでもなるだろう。ただ、一ヶ月後にしてくれ。今の現場が終わらないとね。社長には言うよ」
柴田は、今も、現場に出ている。良く言えば職人、別な言葉で言えば、土木作業員、後者の呼び名には、柴田は何の引け目も感じない。土の断面を観るのが好きなのだ。
「たぶん、教授は、生きているよ」
柴田は勝算の無い事は言わない。サッコ、そしてミキも知っている。




