⑪夕食
柴田達は、ベトナムから帰国して、日常の生活に戻る。柴田とサッコは建設会社の宿舎に、ミキは大学の準教授に。
帰国した日に、三人は四谷のフランス料理店で夕飯をともにしている。これからどうするかを話し合うつもりだが、とどのつまり、柴田の話を聞くのが先決であった。
「ごめん。何もせずに帰ってきた。でも、ベルモンド教授がいた事は、サモの祖父が伝えた事と同義で、何かが彼処に在るのだろう。その何かを先取する権利は、教授が先なのだろうと思う。悪いが、先取した方がいれば邪魔をしてはいけないと言うことだ。ただ、これから教授には協力する旨を伝えてみるつもりだ。と言うことで、もし何かがあっても、それは教授の拾得物となる。でも、それはそれでいいと思う。宝探しは、続くんだ」
サッコとミキは、間をおいて首肯く。
二人の考えた事は同じ、(柴田は、なぜ此処にいるんだろう。なぜ、変な事を知っているんだろう)
サッコは柴田の博学を知っている。何を聞いても、すぐに答えてくれた。知らない事には、「分からない」と、答えるが、それは、一割にも満たない。
サッコが柴田と初めて会ったのは上野の美術館だった。柴田は、今でも土建屋の要は作業者だ。美術館に行くものは、少ないだろう。
結局、二人の考えた事は同じで、世間には知られる事はないが、妙に落ち着く殻の中にいられる事だった。




