第3話 「目指せ!罠マスター!」
「はぁ、腹が減った...」
俺は今、森の中を彷徨っている。
その足取りはとても重く。
ドナドナと曲が流れて来そうなほどだ。
決して、売られるからではないのだが。
ゴブリンに喰われた男を埋葬してから、5時間以上食べれそうな動物を探しているが、見つかりそうにない。
時折、それらしい動物が見えるが、狼が集団でいたり、足が速く、すぐ逃げてしまったりと近づくことすらできない。
腹が減り、このままでは冗談抜きで死んでしまう。
目を皿のようにして、辺りを見回すがやはり、動物は捕まえられそうにない。
どうすれば動物を捕まえられるのか......。
そもそも、動物とは総じて足が早い。
そんな相手に木刀1本で挑むのは無謀な気がする。
「.........そうだ!」
もし周りに人がいたら、俺の頭の上に激しく点滅する。
電球が見えるに違いない。
......空腹でテンションまでおかしくなってきた。
まぁ、そんなどうでもいいことは置いといてだ。
俺の思いついた作戦。
それは────罠だ。
前に倒した。ゴブリンは倒してそのまま放置してある。
それを餌にして肉食の動物を捕まえるのだ。
今日は丸焼きが食えるぞ〜。
俺は先ほどの雰囲気とは一転。スキップでもしそうな歩みで墓のある所へ行った。
墓の近くにゴブリンの死体はあった。
腐敗して虫の湧いているような様子はない。
傷が少ないからだろうか?
ゴブリンの死体に近づき、足を持つ。
そして、肩に担ぐようにして背負い、歩く。
辺りを見回して、草が余り生えておらず、細い道になっている場所がないか探す。
探しているのは、動物の通り道。
俗に言う獣道だ。
しばらく探していると、草が余り生えておらず、通りやすくなっている場所を見つけた。
そこにゴブリンの死体を置き、穴を掘る。
木刀を使いえぐるように掘り進むと3時間ほどで、胸の辺りまで埋まる深さの穴ができた。
幸い、掘ってる最中に動物が来るようなことはなかった。
その穴の上に枝と落ち葉を敷き、落とし穴だとバレないようにする。
......何がかかるか、今から楽しみだ。
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罠の近くの林に隠れながら、罠に獲物がかかるのを待つ。
2本あったカロリーメイトもついさっき、食べ切ってしまった。
俺は祈るような気持ちで獲物を待つ。
すると、遠くからカサカサと落ち葉を踏み締める音が聞こえてきた。
(キターーーーーーーー!!!!)
頭の中はすでに肉のことでいっぱいだ。
ステーキにしようか、丸焼きにしようか、やっぱりステーキにしようか。
頭の中でステーキと丸焼きがダンスをしている。
ついでにナイフとフォークを持った俺も一緒におどっている。
息を潜め、獲物がかかるのをじっと待つ。
(来るぞ、来るぞ、来るぞ......)
心臓が口から飛び出そうなほど、脈打っている。
だんだんと足音が近づいてきた。
速度も速くなっている。
肉に向かって小走りで近づいてきた動物。
それは猪だった。
しかし、それが普通の猪でないことは一目瞭然だった。
その猪は────頭に大きな角を持っていた。
猪は罠がそれが罠であるとは、微塵も思わず餌に向かって近づいていく。
ステーキと猪丸焼きのダンスが激しくなっていく。
そして、ついに猪が穴の上に来た。
「ブモォ!?」
猪は一瞬空中で静止した後、重力に従って落ちていく。
そして、その時、角が根元から穴の淵に引っかかった。
「ブモォ!ブモモォ!」
猪が脚をバタつかせてもがく。
(まずい!逃げられる!)
俺は林から飛び出し、猪を倒そうとした。
しかし、その時。
パキン
角が乾いた音を立てて折れた。
「ブモオオォ......」
猪は悲しげな鳴き声を残して、穴へ落ちていった。
しばらくして、恐る恐る穴を覗いてみると、
猪は角から血を流して死んでいた。
頭の中のステーキと丸焼きは肩を組んで歌っていた。
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穴から猪を引っ張り出し、食べようとした時。
気づいた。
動物を捌くナイフも焼く焚き火もどっちもないじゃん!
俺はその場で膝から崩れ落ちた。
ステーキと丸焼きは凹んでいる俺を慰めている。
...慰めるくらいなら食われろよ。
そんな八つ当たりをするが、無駄な事。
こいつらはあくまで俺の想像でしかない。
「はぁ......」
火を起こすしかないか...。
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道端に落ちていた石同士をぶつけ、鋭くする。
かなり大雑把だが、打製石器はこんな感じだったはずだ。
打製石器とは人間の祖先が刃物の代わりに使っていた、
石を鋭くした道具だ。
試してみると、力がいるが、なんとか猪を切る事ができる。
次は火起こしだ。
2本の枯れ枝を探し、片方は石器を使って平にしておく。
また、平らな部分にもう1本の棒と同じくらいの大きさの溝を彫る。
そして、溝に木を合わせてひたすら擦る。
それによって、摩擦で火を起こす。
うる覚えだが、そんな感じだったはずだ。
俺は地面どかっと座り、ひたすら木を回し、擦り合わせる。
ただ無心で擦る、擦る、擦る。
どれくらいの時間が経っただろうか。
辺りは暗くなり、手元も見えづらくなっていた。
月の光だけが頼りだ。
ふと、木の間が紅く光る。
すかさず、木を持ち上げ、息を吹きかける。
「ふぅ、ふぅ、ふうぅぅ...ぶほぉ!?」
少しむせったが、火が付いた。
その火をあらかじめ用意しておいた。枝の上に置く。
少し経つと火は燃え広がり、小さな焚き火が出来た。
「うおおぉぉーーー!!!」
長い間、枝を回していたいたので、手には水膨れのようなものが出来ている。
かなり痛いが、それ以上に火がついた喜びの方が大きい。
あとは、肉を焼くだけだ。




