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第10話 「記憶喪失」

コンコン


「んあ?」


ノックの音で目を覚ます。


寝起きの頭で扉を開けると、マリアさんがお湯の入った桶とタオルのような物を持って立っていた。


「おはようございます〜。ダイキさん、こちらお湯と体を拭く布です〜。宿の裏手の庭で体を拭いて下さいね〜」


「はい、わかりました」


マリアさんから桶とタオルを受け取ると、俺は宿の裏手にあるという庭に向かった。


基本的に朝は男、夜は女が庭で体を拭くという。


ちなみに「夜に庭に近づいたら、死ぬより辛い目に合わせますよー?」と笑顔で言われた。



夜は絶対に庭に行かないようにしよう。


外から覗こうって?...死にたいのか?


......今度試そうなんて思ってない。


───────────────────────────


庭に行き、タオルで体をよく拭いた後、立ち上がり意識を集中させる。


「......こい」


手の中に刀が現れる。


俺はそれを両手で握ると、目の前を切り裂くように縦に振る。


次は片手で横薙ぎに。


そして、目の前を突くように。


時々、フェイントも混ぜて。


その動作を繰り返し、だんだんと速度を速めていく。


ヒュン!


最初は静かだったが、速度が上がるにつれ風切り音が鳴る。


激しい動きに体からは汗が吹き出す。


それを10分ほど続け、ラストに強く踏み込む。


「ハァッ!!!」


両手で刀を握り、気合と共に頭上から斜めに振り下ろす。


「ふぅ......」


俺は刀を消し、地べたに座りこんだ。


最初は半信半疑だったが、やはりそうだ。


俺はこの刀の使い方を何故かはわかないが知っている。


今の動きもそうだが、以前は出来なかった。


そもそも、異世界に来て早々にホブゴブリンを切れたのも奇跡に近い。


落ち着いたらこの刀のことを調べた方が良さそうだ。


「すごい......」


後ろから声が聞こえて振り返る。


そこには白いローブを着たアリスが立っていた。


「あ、すいません。その、ご飯は食べるかマリアさんに聞いてくるよう言われて...」


「あー食べると伝えてくれ。汗を拭いたらすぐ行く」


そう言ったがアリスは動こうとせず、何かを言いたそうにこちらをチラチラと見る。


「どうした?」


「あの、その、ダイキさんはなんであの時あそこに居たんですか?それに、他の人とは少し変わった格好でしたし...」


うーん、ついに来たか。

いつかは聞かれると思っていた。


ゴブリンの巣の近くに1人でいるなんておかしい。

何か理由があると思うのが自然だ。


それに俺は昨日からずっと袴を着ている。


街中で似たような服装の人は見かけなかった。

やはり袴というのはこちらでも珍しいようだ。


さて、なんて答えるべきか。

異世界から来たなんて言っても信じてもらえるわけがない。

むしろ、頭のおかしい人として哀れみの目で見られるのがオチだ。


うーん......そうだ。記憶喪失というのはどうだろう。

それなら、わからない事があっても記憶喪失を理由に聞く事ができる。


我ながら名案だ。


「あの、言いにくいのでしたら、大丈夫です。不躾な事を聞いてしまい、すいませんでした」


俺の沈黙を拒否と受け取ったのか、アリスはそう言って頭を下げた。


「いや、言うよ。実は俺────記憶喪失なんだ」


「え......」


それから俺はアリスに出会う前の事を異世界から来たということは伏せて話し、名前以外のそれ以前の記憶がないことにした。


「そうだったんですか...。気づいたら森の近くの平原に...」


「あぁ、だから色々とわからない事も多いんだ。通貨の事とか、アリスが森で使った火の玉や水の玉、魔法だったか?その事とか」


「でしたら、朝食の時にでもお話します。助けてもらった恩もありますから」


俺の話を聞いて涙ぐみながら、アリスはそう言った。


こちらとしては嘘をついているので申し訳ない気持ちになる。



───────────────────────────


「アリスさんから聞きましたよ。今まで大変だったでしょう。私に出来ることならなんでも言ってください」


朝食のために宿に戻ると語尾の伸びてないマリアさんから抱きしめられ、頭を撫でられた。


マリアさんは真剣になると語尾が伸びなくなるらしい。


涙ながらに頭を抱えるように抱きしめられているが、俺はそれどころではなかった。


厚い胸部装甲に理性が負けそうだ。


理性が負け、狼になりかけた時。やっとマリアさんが解放してくれた。


服の上からではわからなかったがかなりの物だ。


ふと、視線を感じて後ろを振り返る。


アリスがじーっとこちらを見ている。


心の奥底まで見透かされているような気分になる。


やめろ。そんな目で見ないでくれ。

心を無にして必死に別のことを考える。


メロンなんて知らない。スイカなんて知らない。あーイチゴはおいしいよなー。


視線が弱まる気配がする。

なんとか切り抜けられたようだ。


ふぅ、危なかった。


「じゃあ2人とも料理を持ってきますから、座っていて下さい」


マリアさんに言われ、近くの席に向かい合うように座る。


しばらくして、運ばれてきた。料理を食べながら、アリスにわからないことについて質問をした。


 









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