猿真似
その瞬間、刹那は無限大に引き伸ばされた。
僕は目の前を落ちてゆく花と目が合った。それは美しく、ゆったりと落ちてゆく。落ちてゆく花に触れようと手を伸ばすも届かない。僕の触れないその先でやはり美しく花は微笑みながら落ちている。
ああ、できることならこの刹那が終わることなく永遠に続いてほしい。
あの美しい花をつかまえようとどれだけ手を伸ばしても何かが邪魔をして阻まれる。手を伸ばせば伸ばすほど僕を阻む力は強くなる。
花と僕とで隔絶されるからこそ美しいのだろうか。
いつまでも僕の手先は空を掴む。
届きたい。あの美しさに。
僕だけが見つけた、花の美しさに。
僕を阻む物をすべて退けて、やっと手が届いたとき、振り返るとそこには、僕の知らない美しさがあったんだ。
先の問いは正しかったんだ。
僕はその美しさに見とれていた。
そんな悠久の刹那はけたたましい快速列車の警笛によりかき消された。