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第八話 相性と特性で厨キャラ化する者もいる

 命からがらゴブリンから逃げ出した俺達は現在、冒険者ギルドで話し合いを行っていた。

 冒険者ギルド……浪漫をくすぐられる単語である。

 異世界に来たら何はともあれ、まずは冒険者になる事から始まるのが王道であると言えるだろう。

 皆が大好きなあの主人公もこの主人公も、大体冒険者ギルドに登録して金を稼いでいる。

 いわば冒険者ギルドとは転生、及び転移系主人公の登竜門なのだ。

 冒険者ギルドのない異世界は異世界に非ずという言葉もある。

 ……ごめん嘘、そんな言葉はない。今俺が作った。

 ギルド内は酒場のようになっており、あちこちにガラの悪い男や武装したチンピラがいて酒を飲んでいる。

 そうそう、こういうのでいいんだよ、こういうので。

 中には、バニースーツを着た髭親父やビキニアーマーを着たマッチョなおっさんの姿も見えるが、ああいうのは放置しておこう。

 アレぜってー受け狙いの転生者か何かだよ……関わりたくねえ。

 何かめっちゃこっち見てるけど、マジで何なの。

 同類(ネタキャラ)を見付けたような目でガン見してくるのやめてくれないかな。


「さて、改めて自己紹介しようか。俺は久地梨 士仁(くちなし しにん)

一応、お前さんと同じ転生者だ。まあ随分と立場は違うがな。

あのアホ女神からお前さんをサポートするように言われている。よろしく頼むぜ」

「あ、ど、どうも。俺は鳥江梨(とりえなし) 兵本(へいぼん)といいます」

「私はフレン・F(ファイア)・ドリーです……そ、その、前は殺しちゃってごめんなさい」


 殺しちゃってごめんなさいとか、ちょっと聞かない言葉だな。

 まあ俺に限って言えば間違えて殺されるなんて、間違えてぶつかりました、程度の扱いなんだが。

 とにかく、まず俺達はゴブリンの巣を駆除しなきゃならんわけだが、ゴブリンが思いのほか強かった。

 武器を持った集団を舐めちゃいけねえって事だな。

 普通ならゴブリンの巣なんぞ一足飛びで無視して大物を狩って、それで職員とかに『新人がこんな大物を倒したの!?』とか驚かれてそのままギルドマスターとかが出て来るのがお約束なのだが、現実はとても厳しい。


「さて、まずゴブリンをどうするかだな。

地の利はあっちにあるし、洞窟内には罠とかもあるだろう。

正面から行きゃあ数で圧殺されるだけだ」

「罠を外すなら、やっぱ盗賊とかですよね……あるいはレンジャーとかかな。

今のままだと絶対罠に引っかかりますよね俺達」


 俺達は頭を突き合わせて考える。

 坊主のチート能力は強力だが、相手が魔法を使わないのではそもそも意味がない。

 現状では嬢ちゃんの魔法くらいしか強力な武器がないのでこの娘頼りになってしまう。

 男が二人いて女の子頼りって情けねえなオイ。


「てーか、装備が致命的に駄目なんだよな、俺ら。異世界来てんのに剣も鎧もねえし」

「買う為にはお金が必要だけど、そのお金を稼ぐ為に武器が必要で……」


 俺も坊主も服装は元の世界にいた時のままである。

 というか俺は最初全裸転生だったので、これでもマシになった方だ。

 しかし武器……武器か。何か忘れてるような……。


「あ」


 そうだ、俺武器持ってたよ。

 確か何人目の俺かは忘れたが、兵士からパクった剣を持っていたはずだ。

 やべえな、剣を持ってた俺ってどこで死んだっけ。

 芋喰って死んだ時までは持ってたはずだから、あの時積み上げた死体の山のどれかが持ってるとは思うんだが、あの中から探すのもなあ……。


「とりあえずゴブリンは後回しにして、先に採取系の依頼からやって稼がねえか?

薬草採取とか、迷子探しとか、そういう地味なのもあるだろ」

「いえ、それが、もうゴブリン退治を引き受けちゃったので今やめると違約金が……」

「マジか。何でいきなりそんな依頼受けちまったんだよ」

「久地梨さんが食い逃げしたので俺達、今借金があって……多く稼げる依頼を受ける必要が……」

「すんませんっしたあァァァ!」


 どうやら坊主がいきなりゴブリン退治とかをやろうとしたのは、俺のせいだったらしい。

 そりゃそうだ。俺が兵士に連れて行かれたら、同行者である坊主に支払い請求が行くに決まっている。

 何てこった、手伝うどころか邪魔してるじゃねえか俺。

 

「とりあえず、もう一度行きませんか? 俺もフレンから魔法を分けて貰えましたし、武器がなくても何とか戦えます」

「わかった、じゃあ俺は盾と囮だ。俺が何回死んででも守ってやるから二人は攻撃に専念してくれ」

「はい!」


 こうなったらやるしかない。

 やらなければ、俺のせいで出来た借金が消えないのだ。

 これは流石に俺でも責任を感じる。

 だから、今回ばかりは死んででも二人をサポートすると心に誓った。


*


 ――大勢の俺がゴブリンの巣を蹂躙していた。


 もう一度言う。大勢の俺がゴブリンの巣を蹂躙していた。

 何を言ってるのかわからねーと思うが俺も分からない。

 催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあなく、とかいうテンプレはともかくとしてマジで意味が分からない。

 俺がここにいるのに、先程死んだ俺が何故か動いて数に任せてゴブリンを襲っているのだ。

 中には飛び出した内臓(モザイク)を引きずってる俺とかとかもいて、自分ではあるが非常にキモイ。

 どういう事だおい……ゾンビ化してるじゃねーか!?


「残念! 俺の冒険は終わってしまった!」

「残念!」

「残念!」

「残念!」


 大勢の俺は妙な鳴き声を発しながら、ダメージなど気にせず暴れまわる。

 てゆーかそれ、鳴き声なの?

 俺なのにそれしか言えないの?

 そんな地獄絵図の中、黒いローブの少女が高笑いをあげていた。


「おーっほっほっほ! さあやりなさい、私の軍勢!

落ちこぼれのフィリアと呼ばれた私はもういない! 今日から私は軍勢のフィリアよ!」


 見た目は、まあそこそこ整った少女だ。

 金色の髪は頭の左右で纏められ、ツインドリルとなって回転している。

 服装は地味な黒いローブだが、ローブを盛り上げている二つの果実の自己主張が激しい。

 ああ、ハーレム要員の中に必ず一人はいるおっぱい枠ですね、わかります。

 で、後になって更にでかい超乳枠が登場して影が薄くなるんですね、わかります。

 そんな少女の下では数人の俺が四つん這いになり、タワーを作っていた。

 何してんだ俺ええええ!?


「あっ! フィリア! フィリアじゃないの! 『オンリーワンのフィリア』!」

「む……そう言う貴方は『誤射のフレン』!」


 唖然とする俺と坊主を放置し、最初に再起動したのは嬢ちゃんだった。

 どうやら嬢ちゃんはツインドリルと面識があるらしく、妙な渾名で呼び合っている。


「オンリーワン?」

「はい。彼女、ネクロマンサーなんですけど、一度に一体の死体しか操れない事で魔法学園では落ちこぼれの烙印を押されていたんです」

「違いますー! 同じ死体じゃなくて同じ人物しか操れないんですー!

同じ人物が沢山いれば100体でも1000体でも操れるだけの凄い魔力があるんですー!」

「同じ人物なんてこの世にいるわけないでしょ! そんなのただの無駄魔力よ!」


 坊主の疑問に嬢ちゃんが答えるが、その内容は酷いものであった。

 要するにあのツインドリルは魔力は凄いあるが、何故か同じ人物の死体しか操れないという残念な特性持ちらしい。

 なるほど、それでオンリーワンか。

 しかしいくら魔力があって、大量の死体を操れるにしても同じ人間なんてこの世にいるわけがない。

 ならばそれは一度に一体しか操れないわけで、ほとんど魔力を無駄にしている欠陥ネクロマンサーになるってわけだ。

 まあこの世界のネクロマンサーの基準知らねえけど俺。

 ……しかし同じ人物の死体、ねえ……。

 ああ、それで俺なわけか。


「む! そこの下僕、何故フレンの所にいるのですか!

貴方も早く働きなさい!」

「いや、俺死体じゃねえし」

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!?」


 俺が普通に話したことにフィリアという女は驚いているが、そんな驚く事か。

 ふと、暴れている大勢の俺を見れば『残念! 俺の冒険は(ry』としか言っていない。

 お前等、もうちょっと何か言えよ。俺が馬鹿みたいに見えるじゃねえか。


「てーか、そこのツインドリル。勝手に俺の死体を使うな。

マジで俺がモンスター扱いされちまうだろうが。

土に還せ土に。内臓引きずって歩く俺とかイメージ最悪だろ」

「え? え? どういうこと? 貴方…………え?」

「俺はそれのオリジナルだよ! お前が使ってるのは全部俺の死体だ!」


 いやほんと、これ俺のイメージ悪化するからマジでやめてほしい。

 一般人からのイメージが同じグラフィックの使いまわしゾンビになっちまうだろ。

 俺はまだラノベ主人公のように異世界で恰好よく活躍する夢を諦めたわけではないのだ。

 そう思っているとツインドリルは俺タワーから飛び降り、頭のドリルが下に向けて射出された反動で二段ジャンプをして俺の前まで跳んできた。

 切り離されたドリルは逆噴射で彼女の頭に戻り、『ブッピガン!』と再接合している。

 そして彼女は俺の手を握り、言う。


「やっと見付けましたわ……貴方こそ、私の運命の道具(ひと)!」


 何かルビがおかしい気がした。






『あ、ちょっと待ってください! まだ話、終わらないで!』


 突然、どこからかアホ女神の声が響いた。

 他の皆には聞こえてなさそうなので俺だけに送っているらしい。

 こいつ……脳内に直接……!?

 彼女の声は珍しく焦りを含んでおり、何があったのかと少しだけ不安になる。


『まだ今回は一度も恒例のアレをやってません。ちゃんとやってから終わってください』

「え?」


 恒例のアレ? 何だそりゃ。

 そう思っていると、空が光ったかと思った次の瞬間に雷光が迸って俺を焼き尽くした。


「ウェェェェェェイ!!?」


 あまりに突然の事なので、俺は何も出来ぬまま変な声を出して雷光に焼かれてしまった。

 薄れていく意識の中俺は悟る。

 ああ……恒例のアレってそれの事か。

 確かに今回は俺の死体がやっていたが、俺自身が一度もやってねえ。

 だからってわざわざ殺す事あるか……?


 ああわかったよ、やってやるよ。

 それが俺のやるべき事だというなら、やってやるさ!

 黒焦げになった俺は地面に崩れ、お決まりの台詞を脳内で再生させた。


 残念! 俺の冒険はここで終わってしまった!


 ――死因その613・一度も死ななかったので女神に殺された。

(;´∀`)ぼーっと盆休みを過ごしていたら一週間が空いていました。

まあ元々気が向いた時に書くようなSSですし、こんなものだと思って下さい。

それと最近書籍化作業が入りましたので、しばらくのんびり更新が続くかもしれません。


あ、勿論『野生のラスボスが現れた!』の方ですよ。こっちじゃないです。

というかこれが書籍化したら私自身が驚きます。

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