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第三話 未だに最初の村から出る事が出来ない主人公がいるらしい

とりあえず、全20話前後を目安に書いていこうと思います。

あんまり長く続けても飽きられるだけでしょうし。

そしてこれが終わったら、次はちゃんとマトモなSSを書きます……多分。

「さて、この死体の山マジでどうしよう」


 女神様に土下座をして何とか転生特典として衣服を恵んで貰った俺は、256回目となる転生を果たしていた。

 そんな俺の目下の悩みは、この世界に適応するまでに積み上げた俺自身の死体の山だ。

 改めて見るとキモイ、超キモイ。

 全裸の俺が255人、あちこちで死んでいる。

 潰れて死んでいる俺や黒焦げになっている俺、全身が変な方向へと曲がっている俺など、無意味にバリエーションに富んでいる。

 村の皆様、変な物をばら撒いて本当すいません。

 てかリスポーンするなら、せめて前の死体消えてくれよ。何でそのまま残留してるんだよ。

  

「兵士さん! こちらです!」

「ここか、同じ顔の死体が増えているというのは……うお! 面妖な!?」


 俺があれこれ考えていると、村人に連れられてその場に兵士が数人やってきた。

 無論俺は即座に身を隠す。

 そりゃまあ、こんなの積み重ねたら兵士くらい来るよな。そして俺が発見されたら間違いなく捕まる。

 しかしこれで、とりあえず俺の死体は兵士さんが処理してくれる事だろう。

 出来ればすぐにでも燃やしてやって欲しい。

 兵士達は俺の死体を不気味がりながらも、一つ一つ調べている。


「本当に同じ顔だ……新手のモンスターか?」

「何故服を着ていないのだ」

「顔だけでなく髪型や目の色まで同じだな」

「チ〇コのサイズも全て同じだ」


 やめろおおおおおおお!?

 お前等、何詳しく観察してるんだよ!

 頼むからさっさと燃やしてくれ! 俺のチン〇の大きさなんてどうでもいいから!

 しかし、そんな俺の羞恥と内心の叫びは彼等に届かず、兵士達は更に検査を進める。


「それにしても……プッ。こいつ小さすぎるだろ」

「皮被ってるしな」

「こりゃ間違いなくDTだな」


 やめろおおおおおお!!

 頼む、やめてくれ……やめてくれ……。

 俺はもう、羞恥で256回目の死を迎えてしまいそうだ。


「あああああ゛あ゛あ゛あ゛!!」

「うおっ、何だ!?」

「男が飛び出して来たぞ!」

「まて、こいつあの死体と同じ顔だ!」


 俺は気付けば、奇声をあげながら飛び出していた。あまりの恥ずかしさに耐えきれなかったのだ。

 殺せ、いっそ殺せ。殺してくれ。

 そんな想いが俺の身体を突き動かしたのかもしれない。

 ともかく、もうこの場にいたくなかったのだ。

 結果として俺は、兵士の剣にあっさりと斬られて死んでしまった。

 残念! 俺の冒険はこれで終わってしまった!


 ――死因その256・兵士に斬られて死亡。




 ――リスポーンをしたら、兵士と目があった。

 その横には先程斬られた俺の死体が転がっている。

 あ、うん。そうだよね。リスポーン地点ここなんだから、そりゃ兵士まだいるよね。


「ま、また出たあ!?」

「き、斬れ! 斬れ!」


 結果、俺はまたも兵士の刃の前に命を散らす事となった。

 しかし兵士さんは何も悪くない。全ては前の死体を消去しない女神が悪いのだ。

 誰だってこんなの前にしたらビビるに決まっている。俺だって逆の立場ならビビる。

 だから俺は兵士を恨まず、彼の刃に素直に倒れる事にした。

 残念! 俺の冒険はこれで終わってしまった!


 ――死因その257・兵士に斬られて死亡(2回目)。


*


「あの、女神様。今回ちょっと復活遅くしてもらっていいすかね。

あるいはリスポーン地点変えて下さい」

「え? どうしてですか?」

「同じ場所で死に過ぎて兵士が集まってきました。これじゃ復活と同時に殺されてしまいます」


 転生の間へと戻った俺は女神様に頼み込んでリスポーンを遅らせてもらっていた。

 今は駄目だ、今復活してもまだ兵士がいるから斬られてしまう。

 せめて後一日……いや、二日か一週間くらい待ってからじゃないと。

 女神様はしばらく考え、やがて「仕方ないですね」と呟いた。


「わかりました。では復活を一週間後にしましょう」

「あざっす!」


 俺は女神に感謝した。これでもう兵士さんに無駄な殺生をさせずに済む。

 しかし結論から言えば、これは無駄であった。

 何故なら次に俺が転生した時、そこには何やら急ごしらえ感溢れる建物があり、兵士達が待機していたからだ。

 ……嘘やろ……詰所できとるやんけ……。


「出たぞ! 例の魔物だ!」

「殺せ!」


 あ、俺完全に魔物認定っすか。そうっすか。

 俺は煌く刃が首に当たるのを感じ、視界がグルグルと回転するのを他人事のように見ながら死亡した。

 残念! 俺の冒険はこれで終わってしまった!


 ――死因その258・兵士に斬られて死亡(3回目)。



「あの、女神様。もうリスポーン地点変えて下さい。

あそこもう駄目っす。詰め所出来てて兵士が交代で見張ってました」

「ええー? 258回も死んでおいて、まだ最初の村から出れないんですか?」

「死体が消えないのが悪いんだろ! もう兵士集まりすぎて無理だって、これ!」

「大丈夫です、貴方は死ねば死ぬほど、前の死因を記憶して強くなります。

そのうち兵士が何人いても逃げ切れるようになりますよ! がんば!」


 俺はリスポーン地点を変えるように女神に懇願したが、残念ながら聞き入れて貰えなかった。

 自分で何とかしろという事らしい。ゴッデスシット!


「わかったよ! やってやるよ…やりゃあいいんだろ、やりゃあ!」

「はい、頑張って下さいね」


 もうこうなりゃヤケクソだ。

 俺は乱暴に叫びながら、再びあの世界へと舞い戻った。

 当然、俺が戻ると同時に兵士達がこちらを振り向き、一斉に向かってくる。


「うおおおおおおおおおお!!」


 俺は吠えた。

 吠え、兵士達に背を向けて逃げ出した。

 その後を兵士達が追ってくるが……やばい、向こうの方が速い!

 そりゃそうだ、俺はつい先程ようやく普通に歩けるようになったばかりで、その前は歩く事すら出来ずに死にまくっていた。

 だが兵士達は、俺が散々死んでいたこの星の環境下でずっと生き、そして鍛えてきたのだ。

 ならば鎧というハンデがあろうと俺より速いのは必然。

 俺はあっという間に追いつかれ、切り殺されてしまった。

 残念! 俺の冒険はこれで終わってしまった!


 ――死因その259・兵士に斬られて死亡(4回目)。




「俺は滅びん! 何度でも蘇るさ!」

「うわ、また出たぞ!」

「あいつ本当に不死身か!?」


 転生と同時に再び俺と兵士達の追いかけっこが始まった。

 俺の足は前よりも少し早くなり、兵士達にも負けてはいない。

 だが相手は多数、俺は一人。

 加えて俺はこの村の地理を全然知らない。

 曲がり角に差し掛かったところで、先回りしていたらしい兵士と遭遇して慌てて引き返すも、最早詰み。

 俺は完全に道を塞がれてしまい、兵士の剣に切り殺されてしまった。

 残念! 俺の冒険はこれで終わってしまった!


 ――死因その260・兵士に斬られて死亡(5回目)。




「死ぬ度に5セント貰っていれば、今頃大金持ちだぜ!」


 再び転生(リスポーン)

 しかし転生と同時に俺は絶望した。

 完全に転生地点を読まれてしまっているらしく、何と目の前に兵士がいたのだ。

 それだけではない。俺の逃げ場を塞ぐように兵士達が立っているではないか。

 前後左右を完全に塞がれ、逃げ場がどこにもない。

 お前等……そこまでやるか。よくわかったよ、お前達の本気具合が。

 ならば俺も、それに敬意を評して絶対に逃げ切ってやろう。

 そう思いながら、俺は兵士の剣に倒れた。

 残念! 俺の冒険はこれで終わってしまった!


 ――死因その261・兵士に斬られて死亡(6回目)。




「まだだ! まだ終わらねえ!

数の差が戦力の決定的な違いでない事を教えてやる!」


 懲りずにまたも転生。

 俺は転生と同時に振るわれた剣を避け、兵士の頭を踏み台にして跳躍した。


「俺を踏み台にした!?」

「見える……俺にも敵の動きが見えるぞ!」


 次々と俺に殺到する兵士。振るわれる刃、刃、刃の嵐。

 だがいくら数を揃えようと、一度に飛び掛かれる数などたかが知れている。

 要は自分に向かってくる剣だけを避ければいいのだ。数に惑わされるな。


「なんとおお!」


 俺は叫んだ。叫んで、剣を避け続けた。

 前、横、後ろ、斜め前! 縦斬り、横斬り、切り上げ、切り降ろし、突き!

 俺はその全てを避けながら、思った。

 ……兵士がいすぎて、避ける事は出来ても突破が出来ねえ。

 俺の前に立ち塞がる兵士達はいわば、人の壁。どこまで続くかも分からない絶壁だ。

 俺はそれを抜ける方法が分からぬままに体力を使い果たし、兵士の刃に倒れてしまった。

 残念! 俺の冒険はこれで終わってしまった!


 ――死因その262・兵士に斬られて死亡(7回目)。




「諦めた時が本当の敗北だ! 諦めねえ限り、俺は終わらねえ!」


 俺が転生した時、そこには完全な包囲網が完成していた。

 前後左右を最初から塞がれてしまっている。

 前には俺の前進を阻む盾を持った兵。そして左右背後には槍兵。

 完膚無きまでに俺を叩きのめす気だ。

 戦力差は不明。一対百? 一対千?

 いや、千は言いすぎた。流石にそんなにはいないと思う。

 だがどのみち、一人でどうにかなる数ではない。


「野郎……上等だ!」


 俺は跳んだ。

 兵士達の頭を足場にして次々と跳躍し、振るわれる刃を避ける。

 一人、二人、三人……十人、二十人、三十人。

 最初にこの世界で死にまくっていた頃から考えれば飛躍的な成長と言えるだろう。262回も死んでようやくこれって時点で飛躍的と言えるかは微妙だが。

 だがいける、突破出来る……!

 そう思ったのがいけなかった。遠くから飛来した何かが俺に突き刺さり、体勢を崩してしまったのだ。

 倒れる間際に見えたのは、こちらに弓を向ける兵士の姿。

 飛び道具……だと……!?

 残念! 俺の冒険はこれで終わってしまった!

 

 ――死因その263・兵士に撃たれて死亡。




 次に転生したら、包囲が更に完成されていた。

 屋根の上に兵士が陣取り、何人もこちらに弓を向けている。

 野郎……そこまでやるか。


「タ、タイム! 質問タイム!」

「許す! 何だ!」

「お前等、俺一人に本気出し過ぎじゃね!? 俺なんかにそこまで本気出すくらい暇なのか!?

てーか、こんな小さな村にこんなゾロゾロと押しかけんな!」

「何を言う! たとえどんなに小さな事だとしても、民の平和を脅かす者を排除し、彼等が安眠出来るために戦うのが我等の職務! 村の大小も脅威の大小も関係ない! そこに脅威があれば命を賭けて戦う……それが我等、王国騎士団!」


 ファンタジーの騎士団にあるまじき有能!?

 お前等、そうじゃないだろ。ファンタジーの騎士団っていうのはもっとこう、出動が遅くて肝心な時に間に合わない無能でなきゃ駄目だろ!

 そんで、騎士団とかが頼りにならないから主人公が無双したり活躍したりするんだ。

 やる気のないやれやれ系主人公とかも『はー、やれやれ。本当は目立ちたくないんだけど、やれやれ。騎士団が頼りないから、やれやれ、介入してやるか、やれやれ。はー、本当は嫌なんだけどなー、目立ちたくないんだけどなー、チラッチラッ』って感じで戦うのに、騎士団が有能じゃ主人公が活躍出来ないだろ。


「もういいな!? 撃てい!」

「ちょ、待っ……」


 残念! 俺の冒険はこれで終わってしまった!

 

 ――死因その264・兵士に撃たれて死亡(2回目)。




「大切なのは『ゴールに向かおうとする意志』だ! 向かおうとする意志さえあれば、いつかはたどり着く!」


 俺は何度でも蘇る!

 転生と同時に全方位から放たれた矢を前に俺は跳躍。

 空中で腕を組んで足を閉じ、回転。

 放たれる弓の僅かな隙間を抜け、兵士の頭を足場に再跳躍。

 目を逸らすな、集中力を切らすな。前を見ろ。そこにしか活路はない。

 俺に向かう無数の矢……一見逃げ場なしに見えるが、違う。人間が撃つ以上、どうしてもそこには不規則が混ざる。俺一人くらいならかろうじて通り抜けられる安全空域が生まれる。

 俺はそこに飛び込み続ける事で矢を避ける、避ける、避ける!

 見えるぞ……弓がどこに向かうのか。その『軌跡』が!


「こ、こいつ! さっきから動きが速くなっていくぞ!」

「怯むな! 斬れ!」


 動揺する兵士達の頭を跳び、振るわれる刃すらも足場として俺は走り続ける。

 更に兵士のうちの一人から剣を強奪。飛んでくる矢を斬り払いながら前へ、前へと進む。

 俺は諦めねえ。

 絶対に――絶対に、この村から出てやる!

 そう決意した直後、俺の身体は炎に包まれた。

 何事かと見れば、こちらに手を向けるいかにも魔法使いという感じのローブ姿の男がいた。

 魔法……だと……!?

 残念! 俺の冒険はこれで終わってしまった!

 

 ――死因その265・兵士に焼かれて死亡。





「女神様。これ詰んでませんかね……」


 諦めねえと言ってから僅か12行でこんな事を言うのはあれだが……これ、無理なんじゃないかな……。

 俺は割と本気でそう思い始めていた。

チュートリアルステージはとりあえず次回まで続きます。

尚、チュートリアルで既に詰みかけている模様。

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