最初の将軍と最後の将軍との出会い《鎌倉だけは執権です》
時は、1333年…。
鎌倉はまさに火に包まれようとしていた。
「ついに鎌倉にまで敵が攻め寄せたか…。
源頼朝公以来、約140年余りにわたり続いてきた、鎌倉幕府も灰塵に帰するか…。」
1192【いい国】造ろう、鎌倉幕府、その一番最後の語呂合わせが、
1333【一味散々】鎌倉幕府滅亡という、これは歴史の教訓、このようにして滅びていった歴代の大帝国は数知れず。
歴史上の大帝国のみならず、学校なら廃校、会社なら倒産、廃業、といった具合に。
時代を代表する某アイドルグループなども、また然りか。これに当てはまるか。
その様子を目の当たりにし、今まさに自害しようとしていたのは、鎌倉幕府第14代執権、北条高時。
こんな鎌倉末期という時代に生まれついたばかりに、執権としての力量を発揮できないまま、
足利尊氏や新田義貞、楠木正成らの軍勢に攻められ、打ち続く敗戦、そして鎌倉もついに陥落の時を迎えようとしていた。
「介錯を、頼む。」
側にいた兵士に介錯を依頼した高時。
そして、高時は腹を切り、自害して果てた。
まもなく、家来の兵たちや、城内にいた者たちも次々と後を追って自害する。
まもなく、鎌倉幕府は火に包まれる。
こうして、源頼朝以来続いた鎌倉幕府はついに滅亡する。
「ここは、どこだ…?
ここは死の国か…。」
高時は見たことのない場所をさまよっていた。
見たところ、やはりここは死の国なのか、頭の中によぎる。
高時はあてもなくさまよう。歩いても、歩いても、どこまでもえんえんと同じような場所が続くだけ。
そこに、人影が見えた。
「誰じゃ!?拙者は鎌倉幕府14代執権、北条高時なるぞ!」
どこかで見たことあるような、無いような…。
「我は、源頼朝なり。」
「頼朝公じゃと!?そなたはまこと、頼朝公なのか!?」
「さよう、頼朝じゃ。」
人影は頼朝と名乗り、高時のもとへと歩み寄る。
「おおおおお…!その神々しいお姿は、間違いなく、源頼朝公!」
これが、鎌倉幕府の開祖、源頼朝と、14代執権の北条高時との、この世では実現不可能な両者の出会いの時だった。
「申し訳ございません!
頼朝公が平家を滅ぼした後に築き上げた鎌倉幕府を、
この高時の代にて、みすみす滅ぼしてしまうなどとは、
全てはこの高時の力量不足によるもの…。」
これに対して頼朝は、
「いやいや、そなたはこれまで、よくやってくれた。
最初のうちは本当に、いい国をつくろうと考えていたのじゃ。
それがな、いつの間にやら北条得宗家の独断専行になってしまった。
そして、打ち続く権力争いと殺し合い。
5代執権の時頼以降、まともに長生きしたのは7代執権の政村だけ。
あとは軒並み、30代から40代という薄命で命を落としている。
こうした歴代の執権たちの寿命の短さが、ひいては幕府そのものの寿命を縮めてしまったともいえる。」
頼朝の話をえんえんと聞いていた高時だったが、高時は頼朝とこのような形で出会えたということに感激していた。
「頼朝公に、このような形で出会えるとは。
今度は、平家との戦いに打ち勝った時のことや、鎌倉幕府成立の頃の話などを、聞きたいものですな。」