炎弾
現場に到着するとすぐに見つかった。ゴブリンは少数だと結構こそこそしてる。それに較べて堂々とした連中だ。良かった依頼通りだ。
(ネリー、倒せそうかの判断は君に任せる。僕は取りあえず剣のネリーで戦うから)
『了解』
初めての相手、格上、様々条件から緊張していた。しかし結果あっけなかった。ずっとこのために剣技を磨いてきたゴブリン集団の方が強いと思う。
ギルドへの帰還時に
「ネリーなんか拍子抜けだよ」
「私は今回の敵がどれほどか?分からなかっただけでケンジはかなり強くなったと思うよ」
「たださウェアウルフはゴブリンより強いけど、それでも人型との戦闘しまくったから剣の攻撃の仕方がかなり応用できてる。ただヘルハウンドは難しい。剣術って基本人型向きに創られてるよな」
「私が特に基礎的汎用的な指導しか出来ないのもあると思う。実際戦えばケンジにいろいろモンスターにあった指導できる。でも今回の様な戦った事が無い相手だとね」
「4つ足と上手く戦うコツみたいのをどうにかして得ないとな。正直今回はネリーの規格外の性能で押し切っただけ」
「どうみても噛み付かれていたよね。ただ防御の性能実験になったね。ヘルハウンドだと余裕だね」
「後何か炎吐いてたよ。僕としてはウェアウルフの方がやっかいだと最初は思ってたけど、終わって見るとヘルハウンドの方が圧倒的に苦手だった。初めての4つ足、離れたところからの炎攻撃とか。全部ノーダメージだったから超ぐらい楽勝だったけど、新しい攻撃に対する対応が全く出来てないよね」
「まあ任せて。まだまだケンジの先生続けるから」
戦えば戦うほど強くなると言う感じだろうか?自分でも上手く行き過ぎてる事に疑問を感じていた。
「あのさ最近の急成長ちょっと異常じゃない?」
「そうかな?」
「前の説明だとさ、僕の成長が1.0から1.1でも、剣と組み合わさって10倍成長とかあったけど、今そんなレベルじゃないよ」
「間違っていたわけじゃないけど、一部適当だったかな…。10倍が、ケンジの成長に合わせて20倍、30倍になっていくから」
「うわーそれすげー大事な事だよ」
「敢えて知ってるけど言わないとか以前話したよね?今適切だと思う事を話すようにしてるから」
「どうも納得できないな」
「最初にやたらと詰め込むのを避けてるのと、モチベーションの管理ー」
「僕ネリーに操られてるのか…」
「でも結果として以前より前向きになってるでしょ?」
「うん、なんとなく最近日本での事を思い出してて、僕は多分こういう事をしたかったんだろうなと今は思ってる。こういうってのは、剣の戦いとかじゃない。何事でも自分が優れていると感じられる事かな」
「優越感?」
「もっと自己満足的なものだと思う。結局さ今が楽しいって事なんだよね」
ネリーが対策を打ってきた。
「見ててよ」
そういってネリーは手から炎弾を発射した。
「何それ?」
「今の覚えておいて、後は剣で指示を出すから」
ネリーは剣に戻った。
「どうするの?」
『いつも思うんだけどさ別に口に出さなくても良いよ?』
「こっちの方が伝えやすいんだよ。頭の中で伝えるとさ、ネリー可愛いなとかふと浮かんでしまって伝わってしまうからさ」
『もうケンジ何言ってるのさ』
(ちょっと照れてて可愛い)
『聞こえてるよ…』
「だからこういうの伝わってしまうからーー、話すと不思議と他の事浮かびにくいんだよ」
『じゃ始めるよ』
(スルーされた…)
『ああもう取りあえずはね、剣先から炎を飛ばすようにイメージすれば良いから。どーせ私が人の姿で飛ばすようにケンジ無しでも出来ない事は無いから』
「うわじゃ僕の練習する意味は…」
『まあいざとなったらね。基本的にはケンジの拙いイメージでも私が翻訳して協力にするので良いから』
叱咤激励を受けて取りあえずやってみた。あ、簡単に出来た。
「ちょっとちょっと何これ簡単すぎる」
「そもそもこれ単独の私が出来るんだから対した事無い。前も話したけど人化した私は初心者のケンジを守るためにあるだけで、今のレベルなら多分そろそろ単独の私抜いてくると思うよ」
「じゃ何故もっと早く教えてくれないのさ」
「私の役目ケンジの剣の師匠だよ。あれ教えたらあれに頼りきりで接近戦による剣術が上達し無いでしょ。私が後からしか話さないのはこれも大きい。順番を間違えると悪い癖がつくからね。毎回毎回命がけの戦闘をするような剣士は私から言わせると見込みが無い。常に余裕が無いと言うのはそこで限界を迎えるって事だから、ゴブリン程度に必死に逃げ回って炎弾ばかり打ってる剣士なんて見込みが無いよ」
次回の戦闘から僕は炎弾を多発した。この程度で必死になるなといわれたけど、ネリーは犬系モンスターの集団を選んで依頼を受けていたから。ただ無茶だとは僕思わなかった。前回の戦闘で過度に警戒しすぎたから。すげー効果的に使えた。集団戦でこれはものすごく使える。僕がわざと偏るようにモンスターの1匹に近づいて攻撃する。こうなると集団の中の僕との距離に偏りが出る。この差をすぐに炎弾で埋めていく。今までこの差で逆に僕が攻撃される側だったから180度ぐらい有利に働いた。戦いが終って思ったのはひょっとして今回前回より楽なんじゃないか?という事。数が増えてるのに。なおかつ僕特有の戦えば戦うほど強くなるあれもあるかな?と感じていた。