こわくてゴメン
「くそっ、くそっ」
金属を打つ鈍い音が洞窟に響いている。
足音を聞きつけて、音を発していた主はとっさに石を背後に隠す。
「ヘアデザイナー」
こっち来んなよっていう思いも込めて相手の名前を呼ぶ。
だがヘアデザイナーは素知らぬ顔でゆうゆうとこちらの警戒圏内に入り込み、リンクが背後に隠したものを見て、「はは」と笑った。
「石じゃそれは取れないデショ」
それ、と指さしたのはリンクの首に付けられた金属製の首輪のことだ。
「リンクも運が悪いよねぇ。ちがうか、ああいうのを自業自得っていうんだっけか。魔王をかばって自分が魔王のふりをするなんて、さすが弟思いのいいおねえちゃんだねぇ」
「バカにしてんのか」
「バカにはしてないよ。金属製の首輪を石で壊そうとしている姿を見たときにはバカがバカなことをしていると思ったけどさ。あのときはバカが勇気ある行動をしたってちょっと感動しちゃったよ」
よいせ、と言いながらリンクの隣に腰掛けながらヘアデザイナーは小声で「半分ウソだけど」とつぶやく。
「おまえは心の声がだだ漏れなんだよ」
「うん。ボクって魔族にしては正直すぎるところが難点なんだよね。でもさ」
ヘアデザイナーの視線があからさまにリンクの胸元を見て、さらに露骨に指さす。
「その盛りっぷりすごいよね」
ヘアデザイナーが言っているのはリンクの胸のことだ。あいつに首輪を付けられてから体型の変化が著しい。
「好きでこんな体になったんじゃないやい」
「全部、魔人のせいだよね。わかってる」
あ、ごめん。とヘアデザイナーがリンクの強張った顔を見てあやまった。あやまったのは「マジン」という言葉を出したことについてだ。
「大丈夫だよ。さすがのあいつでもこんなに離れた場所の会話は聞こえないデショ」
たぶん、と追加する。
しばしの沈黙。
なにかを待つように、なにかが来ないことを確認するように沈黙を保ったあとリンクは息を吐いた。
「あ、あいつは――」
我ながら、話しはじめの声がかすれてしまったのがくやしい。
「うん」
ヘアデザイナーが静かに頷く。
「あいつは澄ました顔をしてても頭ん中はこんなロリ巨乳体型の女で満たされってるってことだ」
「うん」
ビビリながらでは悪口に覇気が出ない。話題を変える。
「クロスは無事に逃げれたと思うよ。魔王のこと守ってってあの子に言っておいたから、たぶん魔王から離れてないと思うし、魔王はこういうときに無事に逃げられる運を持っているお方だから」
「うん、そうだね」
また沈黙が洞窟を満たした。




