短時間のうちに、ごめん
「あれ?」
玄関を開けて、オレは声を発した。
玄関前には下河原亮が立っていた。
初めて会った時も背が高そうだと感じてたが、(あの時は二人ともしゃがんでいた)改めて立った状態で向き合うと目が合わないぐらい背が高い。やや上を向く。
「退院したって聞いたから、これお見舞い」
と言って、何やらフルーツの入っているような袋を渡してくる。
「わざわざ良かったのに、ここの住所は? 千奈美に聞いたの?」
「う、うん。まぁ、そんなとこ」
「ふーん? ちょっと上がってく?」
玄関前に立つ下河原がすぐに立ち去る様子も無かったので、声をかけてみる。
「ん。お邪魔していーの?」
「いいよ。とっちらかってるけど、どーぞ」
ポテタが「だレ?」と聞いてくるので、「学校の友達」と答える。
「お邪魔しまーす」
と玄関で靴を脱ぎかけた下河原が
「うわ!」
と小さく声を上げる。
見ると、下河原の前を小さな魔物が三匹横切るところだった。
あ、こいつ<見える>ヤツだった。
寒川大福とたぶん同じタイプで、だから種場美月の背後の魔物にも最初から気付いていたし、今も魔物が見えてしまうのか。
「ごめん、言い忘れてたけど、今、オレんちの中魔物でいっぱいなんだよね。でも、種場美月に憑いてるみたいなヤバイ系はいないから安心(?)して」
「そうなんだ……。じゃ、おじゃましまーす」
下河原が改めて周囲を見ながら声をかける。
「えっと、魔物でいっぱいってことはもしかしてこの家に魔王がいたりするの?」
「あ、いるいる。よくわかったね。でも見ても全然チビのコドモだから魔王に見えないんじゃないかな」
「あ、でも興味あるかも。ちょっと紹介してもらってもいい?」
「いいよ」
居間にはまだハンスや真帆先生、ドールデザイナーやソウがいる。
その奥に魔王がいた。
居間のドアを開けて奥を指さす。
「あの一番奥で床に座って遊んでる子がいるっしょ。ちょっと肌の色が普通と違う子。あれが魔王だよ」
「へえ、そうなんだ」
言いつつ、さりげなく下河原が居間に歩を進める。
でかくて目立つので全員が下河原に目を向けた。
しかし下河原は魔王から目を離さず進んでいく。
「変だ」
オレに抱かれたプカチューことリンクが言う。
「なぜあやつはリンクが見えているのに、リンクについて何も言わないんだ? まるでリンクのことを最初から知っているかのように」
「まさか」
プカチューのことは日本に住む十代で知らないヤツはいないと思うけど、リンクのことを知る人間はごくわずかだ。
「センセーもアキラがリンクと手錠でつながっているのは変だって言っていたのに」
下河原の背中を注視していると、彼がポケットから金色のナイフを出したのが見えた。
「アキラ!」
言われる前に走っていた。
数歩で下河原の背中に追いつく。右手でナイフをつかもうとした。それを振り払われる。
ソウとドールデザイナーもこちらに飛んでくる。真帆先生はただ目を丸くしていた。こんな短時間でまたも魔王が狙われるとは考えてもみなかったのだろう。
リンクが魔王の前に立って両手を広げた。
その体を突き抜けて、金色のナイフが魔王に突き刺さった。




