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依頼してごめん

「依頼人ってだれ?」

 オレが聞くと、ドールデザイナーはキッチンに目を向けた。

「ぬぉ……」

 思わず声が漏れ出る。

 

 頭が二つ。


 小さいのと大きいの。


「ちょチョッと、先生いつカラいたの?」

 ポテタが半分笑いながら言う。どうやらパニックは脱したようだ。ホッとする。

 小さい方の頭は真帆先生だ。

「ドーして、パン食べちゃってンノ?」

 そうだ。

 突っ込みたいのはそこだ。

 いついかなる状況でも相手に的確に突っ込めるポテタの精神力に感心をする。

 真帆先生と大男は、もぎゅもぎゅと口を動かしていた。てめーらパン食ってんだろって動きだ。

「そ、それは――」

 注目を浴びて頬を染めながら、隠れていたカウンターから立ちあがった真帆先生が言う。

「ここに隠れて待っている時に、とてもおいしそうなパンの香りがして、ちょっと食べちゃおうかって」

 ハンスさんが、と隣の大男を指さす。

 突然、悪事の首謀者にされた大男は、

「Oh、ノゥー」

と言いながら立ちあがった。

 頭もでかいが体もでかい。

 くしゃくしゃの髪は赤みの強い金髪で、顔もいかつい赤ら顔だ。なんとなくスイスの山小屋にいそうな感じ。

「あの、大男の履いているズボンの名前ってなんだっけ?」

 たぶん、リンクは人間の洋服には疎そうなので、ドールデザイナーに聞く。

「えっと、ワークパンツじゃなくって……」

 ドールデザイナーが人さし指で頭を突きながら、単語を探す。

「ナンデ、今ズボンの話?」

 ソウが半笑いで聞く。

「なんか、驚きすぎて感情のリミッタが変になってて」

 ドールデザイナーが言う。

「まいうーの人が履いているズボンっすから、うーん……あ、思い出した。オーバーオールっす」

「あ、それだ」

 少しすっきりした。感情も少し落ち着いた。



 結界に囚われたヘアデザイナーは、真帆先生と大男――ハンスをじっと見ている。

「あのお二人は『恨みBOOKER』なんすよ」

 ドールデザイナーが言う。

「うらみブッカー?」

 オレは首をひねった。

 リンクも初耳だったようで、首をかしげている。

「はいっす。詳しいことはおいらも知らないんすけど、ある恨みを持つ人が亡くなるまでにその恨みを晴らすことができなかった場合、その恨みを死後に持ち越す――そのための仕組みであり組織であったはずっす」

「ふぅーん?」

 わかったような、意味不明なような。

「なので、本来の意味での依頼人はあのお二人ではなく、『恨み』を持ったまま亡くなった人たちっすね」

「人たち?」

 複数形だ。

「はいっす。トモダチのことをあまり悪く言いたくないんすけど、この平ちゃんはお酒を飲むと頭がスポンジになっちゃって過去にずいぶん悪いことをし尽くしたらしいんす」

 で、魔界に逃げ込んでいたらしいんす、と言う。

「悪事ってどんな?」

 尋ねると、ドールデザイナーはちらりと魔王とポテタの方を見て、

「お子さんたちには耳の毒っすので小声で」

とオレの耳に口を寄せる。

 一つだけ教えるという話を聞いているうちに胸がむかむかしてきた。

「聞こえてる、聞こえてるー。リンクにも聞こえているぞー」

 リンクがつらそうな声で言う。

 こいつ魔物なのにグロい話が苦手なのか。

 たぶん、耳を塞ぎたいんだろうが、手が短すぎて届いていない。代わりに塞いでやる。

「それ、似たような話アンビリーバボーで見たことあんわ。映像がグロかったからすぐに変えたけど」

 ドールデザイナーに言う。

 結界の中のヘアデザイナーはこちらの話がまるで聞こえていないようだ。片膝を立てて、頬杖をついている。


 と、ハンスが近づいてきた。

 結界に手を置いているソウに言う。

 大男ハンスの膝ぐらいの高さを示しながら、

「この結界のこの辺りに、ワタシの握りこぶしぐらいの穴を開けてほしいですジャ」

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