誰も出なくてごめん
「ぴんぽ~ん」
と二度目のチャイムがことさらのん気な音を立てて、
「もオ、ダレも出ないナラぼクが出るヨ」
とポテタが玄関に向かった。
「隠れるぞ」
身長三〇センチ弱のリンクがオレの腕に飛び乗ってくる。
「どこに?」
「二階だ」
とりあえず携帯で話すフリをしながらリンクを抱いて階段を上る。
「おまえの予言は緊急地震速報か」
オヤジの言葉に
「通信速度が落ちてる~」
とヘアデザイナーが嘆く声が聞こえる。
ガチャリと玄関が開かれた。
間に合った。
階段の上から下を窺っていると、
「寒川大福でございますー」
と朝から明るさを張り込んだ声が聞こえた。
「あれ、寒川だ」
オレは首をかしげた。
「もしかして、予言外れた?」
「いや、アタリだ。あの男がヘアデザイナーの予言のアイツだよ」
「え、でも、あいつってただのインチキマジシャン……。いや、違うか。もともと魔物を殺す動画をアップしていたんだから、あいつはあっち側の人間なのか」
黄色いプカチューのリンクが重々しく頷く。
「あいつは魔界にいる魔人とつながっている。というか、魔人を魔界に連れてきたのがヤツだ」
「なんのために?」
「知るか」
リンクが愛らしいキャラクターのコンセプトを裏切る「ケッ」という表情を見せた。
「魔人やサムカワの考えなど知らん」
「……、あのえっとさ。オレも一応魔人らしいんだけど」
「ああ、そうらしいな。クロスから聞いた」
クロスという単語を言う時に少し声にためらいがあった。
「でも、おまえは現在弟を庇護してくれているし、クロスに弟――魔王の自閉症のことを詳しく説明してくれたらしいし、最後までクロスを何とか助けようとしてくれた」
小さなぬいぐるみ的な手でなんとか指を三本折って見せた。
「少々キレやすい所はあるが」
と手錠を示し、
「人を信じるには理由が三つもあれば充分だろ。おまえは信頼できるやつだ」
不意に目頭が熱くなって、オレはあわてて顔をそむけた。




