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先生ごめん

 弟のポテタの部屋に向かう廊下からすでに魔物があふれて足の踏み場もない状態だった。

「きゅう。アキラさん、踏まないでくださいよぉ」

「うっさい」

 急いでる俺はそれらを蹴散らしながらポテタの部屋に踏み込む。

「おーい、ポテタぁ……。うん?」

 オレの足元で魔物たちとは明らかに異なる「うぐ」という声がした。

「うわっ、先生すいません。すっかり存在を忘れていました」

 オレの足元にいたのはポテタの小学校の特別支援学級の鈴木真帆先生だ。

「いえ、わたしの方こそすっかり魔物さんたちになじんで溶け込んでしまっていたので、それが悪かったんですよ。わたしは学校でも存在感が薄いようで……」

「いえ、大丈夫っす。先生の個性はばっちり生きてますよ。たぶん」

 その時代遅れのピタTとか、膝の出たジャージとかという言葉は言わない方がいいかと飲みこんだ。

 真帆先生は

「えへ」

と乱れた髪とメガネを直すと、

「それにしてもすごい数ですねぇ。お家をリフォームしないと」

「いやいやいや、そんな金はありませんし、それより先にこいつらを追いだす方法を考えないと」

「そうですねぇ。でも、ポテタくんが彼を離すかどうか……」

「先生も協力してくれるんですよね?」

「協力したいとは思っておりますが」

「そうですか」

 まずは自分でやってみるか、とポテタを探す。いた。かろうじてその存在が見えるベッドの上で我が家が魔界になる元凶となった魔物を膝にのせている。

「ポテタ、そいつを離せ」

「イヤダ」

 ポテタは独特の曖昧な発音で、しかししっかりと拒絶の意志をしめした。

 自分の意思をうまく伝えられなかったポテタがはっきり意思表示をしたということにやや感動しつつ、

「ちょっとおにいちゃんに貸してください」

とやや強引にポテタから魔物を取りあげる。

 周りの形態不明な魔物たちに比べると、人間に近い姿をしている。身長は五〇センチぐらいか。ポテタの誕生時よりも小さいぐらいだが、固太りの体型なのでずっしりしている。肌の色は紫色に近い。質感は固そうだ。洋服らしきものも見につけていて、背中にはマントのようなものも付いている。

 目の色は鳶色。

「――あれ?」

 思わず声が出ていた。遠くから見ていても一人(匹?)だけやけに挙動不審というか、他の魔物たちが我がもの顔で振る舞っているのに、一人おどおどと視線をさまよわせている印象だったが。

「目線が合わない」

 独り言よりやや大きな声が出ていた。それに真帆先生が応じる。

「はい」

 真帆先生が我が意を得たりの顔をしてにじり寄って来た。いやだな、知識のある人間たちはこういうタイミングで通じあってしまうのだ。オレは決して魔物に興味や関心など抱きたくないのに、先生のせいで無視できなくなってしまった。

「音の過敏もあるようで、耳塞ぎも何回かしていました」

 真帆先生が言ったタイミングで、魔物が身じろぎをして嫌がったのでオレはそいつを床に下ろした。そいつが嫌そうにうつむいて両手で耳を塞ぐ。室内は集まってきた魔物たちのせいでさきほどよりもうるさくなってきていた。

「たぶん、抱っこも苦手なんだと思います。ポテタくんも同じですよね。だから、離したくないけれど抱きたくもないというポテタくんの微妙な力加減だったら大丈夫だったんじゃないかと」

 そのとき、ポテタが

「マオーをカエシテヨ」

といった。

「マオー? へ? 魔王?」

「はい、どうやらこの子が魔王のようです」

 真帆先生が真剣な顔で応じる。

 気が付くと、この部屋に集まってきていたすべての魔物の視線がオレに集まっていた。見ていないのはポテタと問題の魔王だけだ。彼らだけがてんで好き勝手な方向を見ていた。

「ちょっと待ってよ。じゃあ、こいつは自閉症の魔王、なのか?」

 マジで?

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