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性分ではありません  作者: 紫音
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第9話

……フォノスは学園に通っていないですし、どうしましょうか?

イルムからラグレット家の魔の手がフォノスに向かっていると聞いた翌日、私は学園の教室の自分の席に座り、これからの対策を考えています。

元々、友人は少ないためか考え事をしている私に話しかけてくる方はいません。考え事をしているのには邪魔をされなくて良いのですがそれはそれで寂しい気もしますね。


ですけど、本当に節操がない。


ラグレット家にご令嬢はサーシャ様しかおりません。どこ遠縁の家から養女を迎え入れてフォノスの下に嫁がせようとしているのならまだ理解できます。

ですが、まさかサーシャ様自らフォノスに近づいているとは思いませんでした。

アルフレッド様が遠方の地に飛ばされたからと言ってすぐに弟のフォノスへと乗り換える神経が信じられません。

普通に考えれば彼女の行動は恥知らずとしか言えません。しかし、小母様がラグレット家の出身のためか強く推薦するようです。


「……早く婚約者でも見つけてくれれば良いのですが」

「お姉様、婚約者を選ばれたのですか?」

「アメリア様、私の事ではありません。後、お願いですからもう少し、お静かにお願いします」


たぶん、フォノスも呆れかえっているでしょうが小母様が薦めてきては強くは言えないのでしょう。

フォノスも正式にバルフォード家の後継者になると発表されるでしょうし、そうなると彼の下にも多くの婚約話が舞い込んできていると考えるのが普通でしょう。

そう考えると1番の解決法はフォノスが正式な婚約者を選ぶ事、ですが……あの子の性格を考えると簡単に婚約者を選ばないでしょう。

あの子が一途な事は誰よりも知っているつもりです。だからこそ、あの子のためを思ってきっぱりと断ったのですがあの子がどのようなご令嬢を伴侶に選ぶかはまったく想像がつきません。

ラグレットの家の魔の手から自分と領地を守るためにもフォノスには良い方を選んで欲しいのですが彼の隣に女性が立っている姿が思い浮かばずにため息を漏らしてしまいました。

私がため息を吐いた時、私の耳元で大きな声がしました。

その声の主はアメリア様であり、耳元で大きな声を上げられてしまったせいか、耳が少し痛いです。

彼女の行動を戒めるために注意をするのですが彼女は注意をされた理由がわからないようで小さく首を傾げています。


「お姉様、お昼を食べに行きませんか?」

「もうそんな時間ですか?」


私の言葉など気にする事無く、アメリア様は私の手を引きます。

お昼と言われるとお腹も空いてきてしまい、小さくお腹の虫が鳴きます。その音に顔が赤くなりそうになるのですがどうやら誰にも聞こえてはいないようです。

恥ずかしさを誤魔化すようにアメリア様は大きく頷き、私は彼女に引っ張られるように教室を後にします。


「お姉様は何を考えていたんですか?」


アメリア様に引きずられて行った場所はいつもカフェでした。

いつも通り、彼女は私の前の席に座ると私の考え事について聞いてきます。

フォノスの事を話しては良い物かと思い、眉間にしわを寄せた時、周囲の空気が変わった気がしました。

……これは私の親衛隊と言われる方達が聞き耳を立て始めたと言う事なのでしょうか?

先日、聞いてしまった親衛隊と言う方達の気配に妙な緊張感を覚えてしまいます。


「あ、あの、アメリア様、その前に1つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」

「何でしょうか?」

「アメリア様は私に親衛隊と言う人達がいると言っていましたが、アメリア様はその方達に睨まれないのですか?」


アメリア様が私の親衛隊から睨まれる可能性は充分にあります。

私に懐いてくれているこの子に何かあっては困ると思い、聞いてみるのですが彼女は私の言葉の意味がわからないようできょとんとしています。


「睨まれませんよ」

「そうですか?」

「あら、ルディア様ではありませんか?」


質問の意味がわからないアメリア様ですがとりあえず、心配はないようです。

彼女の言葉にほっと胸をなで下ろした時、私とアメリア様を見下すような声が聞こえました。

それと同時に周囲の空気がまた変わったような気がしました。


「……サーシャ様、何かご用ですか?」

「別にこれと言った用はありませんわ」


声がした方へと視線を向けるとサーシャ様が相も変わらずに取り巻きを連れて歩いておりました。

問題の種が私の前に現れた事に頭が痛くなってしまいますがなるべく表情に出さないようにします。

サーシャ様はお気づきになられていないようですが、サーシャ様が言葉を発するたびに周囲の空気がピリピリとして行くのがわかります。


……どうして、今まで気が付かなかったんでしょう。

アメリア様からの情報では過激な方達もおられるようですし、この場で魔法を放つ者がいないとは限りません。

周囲の者達を巻き込むわけには行きませんし、彼女を追い払う方法はないでしょうか?

用がないのなら、どこかに行ってくれないでしょうか? そう思っている私の思いなど無視するようにサーシャ様は私とアメリア様が座っている席に近づいてきます。


「……」

「アメリア様」


サーシャ様が近づいてくるとアメリア様は頬を膨らませます。

彼女の事ですからサーシャ様につかみかかるような事はないと思いますが何かあっては困るため、彼女の名前を呼びます。

アメリア様は私の声に何とか我慢しようとしているようで小さく頷かれますがサーシャ様はアメリア様を見下すと邪魔だと言いたげに視線で席を空けなさいと言います。


「アメリア様、行きましょうか?」

「はい」

「……逃げる気ですか?」


サーシャ様の態度からバルフォード家の事で私に言いたい事があるのでしょう。

……アルフレッド様の事も私が裏で手を回したと思い込んでいる彼女の事です。何か手を打たなければいけないのですがそれが今である必要はありません。

この様子を見た方達は私がサーシャ様に負けたと捉える可能性もありますが、私は元々、無益な争いをする人間ではありませんし、アメリア様にイヤな思いをさせる前に撤退と行きましょう。

そう考えてアメリア様に声をかけると2人で席を立とうとするのですがサーシャ様の取り巻きが私の退路を塞ぎました。


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