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性分ではありません  作者: 紫音
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第6話

カフェに到着して向かい合ってアルフレッド様と座るわけですが……妙な視線を感じます。

これがアメリア様のおっしゃっていた私の親衛隊と言う方達の視線なのでしょうか?

……違いますね。きっと、人目に付く状況だから誰かに見られているような気がするのでしょう。そう思っておきましょう。

店員を呼び寄せて紅茶とケーキを頼みます。アルフレッド様は甘い物は好みでないためコーヒーだけを選びました。

注文を取りに来た店員はここ数日の噂の中心である私とアルフレッド様が向かい合って座った事に興味津々のようですがお仕事をそのままにできないようで名残惜しそうに行ってしまいました。

……確実にお客さんが増えていますね。

帰宅時間だった事もあり、先ほどのアルフレッド様とのやり取りは多くの生徒達に見られていました。どうやら、みなさん、おヒマなようで後を付いてきて私達の話に耳を傾けているようです。

それは立場のある家の子息子女としてどうなのでしょうかと思うのですが好奇心を満たしたいと思うのは人として当然の行為だと誰かが言っていたような気がしますから仕方ないのでしょう。


「……それで」

「注文した物がそろうまで待とうとはしないのですか? アルフレッド様も小父様から正式に子爵領を引き継いだのですから、余裕を見せなくてはいけないのではないですか?」


アルフレッド様も私と同様に私達に向けられている好奇の視線に気が付かれているようです。そのせいか、急かすように本題に移ろうとするのですが私も早くお屋敷に帰りたいのですがあまり慌てるのも侯爵家令嬢としてみっともないため、平静を努めます。

そんな私の表情にアルフレッド様は忌々しそうに表情を歪ませるわけですが侯爵家子息として今までは出来ていた事ができなくなっていると言う事はよほど跡が無くなっていると言う事なのでしょう。

私の言葉にアルフレッド様は苛立っているようですが口をつぐみます。

……だいたい、私はアルフレッド様の勘違いに巻き込まれている身なのですからご自分の状況を冷静に考え直してくれないとお話のしようがありません。


お兄様やフォノスにバカ呼ばわりされてはいるけど、アルフレッド様の頭の回転はさほど悪くはない。

ただ、傲慢で見栄っ張り、他者を見下す事が好きなだけだ……やはり、人として終わっている気がしますね。

仕方ないと思う部分は確かにあるのですが、なんと言ってもアルフレッド様の母親はあれな人なのですから、仕方ありません。


「それで、バルフォード家の跡取りがフォノスになった理由を教えて貰おうか?」

「何度も言いますが、私に言われても困ります。小父様が決めた事でしょう」


注文した品が並ぶとアルフレッド様は店員を睨み付けて追い払うなり、後継者から追い落とされた理由を聞いてくる。

何度、聞かれても私が決めたわけではないため、優雅に紅茶を口に運びながら答えます。私の回答はアルフレッド様には納得のいかない物のようです。

苛立ちを抑えるためにコーヒーを飲むアルフレッド様ですがコーヒーはまだ湯気を上げているため、かなり熱かったようでむせておられます。


……格好がつきませんね。

元婚約者の様子にため息が漏れそうになるのですが、自尊心の高い彼の事です。おかしな事を言うとこの無駄な時間が長くなってしまいます。

むせているアルフレッド様にハンカチを差し出すと素直に受け取られました。


「だいたい、アルフレッド様も知っているでしょう。私は他の家の後継者問題に口を出すような恥知らずな行動はしませんわ」

「……恥知らずか」

「侯爵令嬢ともてはやそうとする人間も多いですが権力を持っているのはお父様やお兄様です。そして、小父様はお父様と同じ侯爵家です。他家の娘の戯言を聞き入れては問題になります。それはお父様やお兄様、小父様の名誉を傷つける事になるのですから。そのような事をするわけがないでしょう」


口元をハンカチで拭いているアルフレッド様をまっすぐと見て言い放つ。テーブルを挟んで座っているため、捕まるまでに少し時間が取れるため、少し強気です。

私はあくまでも令嬢として前に出る事はない。婚約者の時は彼の事を立てるようにふるまっていましたし、彼をバルフォード家の次期当主として成長を促すように言葉を発していた。

それがアルフレッド様にはうっとうしく思えて、耳触りの良い事を言うサーシャ様の甘言に騙されたわけです。まあ、私もいつまでも成長せず、性格の合わない彼を見限り、彼から婚約を破棄するように動いたわけですがそれに気が付かなかったくらいに彼にはサーシャ様の言葉は甘かったのでしょう。


「そう言えば、サーシャ様はどうしたんですか? 婚約者になったのでしょう? お姿が見えないようですが?」


苦虫をかみつぶしたような表情をしているアルフレッド様に追い打ちをかけるようにこの場にいないサーシャ様の名前を出す。

その名にアルフレッド様の表情はさらに歪みます……推測は立てていましたが本当にアルフレッド様を見捨てられたようですね。

アルフレッド様を見捨ててフォノスに狙いを定めていなければ良いのですが、フォノスの事ですから即座に拒否するでしょうけど。


「……お前が圧力をかけなかった証拠がどこにある?」

「どこにもありませんわ。ただ、アルフレッド様が婚約者としての私に不満があったように私にもアルフレッド様に不満はありました。ですから、私はアルフレッド様から婚約が解消された事を大変喜んでいるのですから、それ以上の事は望みませんよ。それにラグレット家はマージナル家の圧力など聞き入れないでしょう? 聞き入れるような家でしたら、サーシャ様をアルフレッド様に近づけないはずですわ」

「……確かにそうだ」


どうやら、サーシャ様が自分の側に寄り付かなくなったのは私がマージナル家の権力を使ったと思われているようです。

そんな事をする意味がないと答えると認めたくなかったサーシャ様が寄り付かなくなった理由を受け入れられたのかアルフレッド様は肩を落とされました。


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