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性分ではありません  作者: 紫音
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第51話

ヴィンセント視点となります。

ルディア嬢の計画書を精査し、皇帝陛下の命令が下された。

彼女が選んだ中庭を彩る花々が集まる間、彼女にはしばしの休憩が与えられる事となった。

無理を聞いて貰った事もあり、労って来いと言う裏にいろいろと思惑がありそうな母の言葉に難色を示していたのだが……城で公務を行っていると自分の娘を婚約者にと近づいてくる者達が思いのほか多く、それならば、静かなマージナル侯爵家領地に避難をした方が良いと判断したのだ。

そう判断してマージナル侯爵家を訪れると俺に付いているはずの護衛達は俺を置いてマージナル侯爵に挨拶をするために俺を置いて屋敷に行ってしまう。扱いの悪さが気になるところだが護衛達の行動もいつも通りである。ため息が漏れたのだが余計な事を言うと俺自ら侯爵と会わないといけなくなってしまう。マージナル侯爵が俺とルディア嬢の事をどのように思っているかわからないが母の思惑がいろいろと伝わっているためか直接会うとどうしてもその話になりそうなため、遠慮したい。

どうやら、それはマージナル侯爵も同様のようですぐにルディア嬢の下へと案内してくれる者が用意されるわけだが案内された先で目に映ったのは……マージナル侯爵家令嬢でもあるルディア嬢はいつもの動きやすさを優先した簡素なドレスすら脱いで領民達と同じ格好をして土塗れになりながら領民達とともに畑仕事をして汗を流している姿なのだ。


「……イルム、ルディア嬢はどうしたんだ?」

「いつもの事ですのでお気になさらないようにお願いいたします」


今までも何度か領民達の仕事を手伝っている姿を見てはいたがここまで本格的な格好をしている事はなく、眉間にしわが寄ってしまう。

目の前の状況が間違いではない事を確認するために側に控えていた彼女の侍女であるイルムの表情は変わる事はない。


「そうか。いつもの事か……」

「最近はゆっくりとする時間がありませんでしたので爆発したと思ってください」

「そうか。いろいろとすまないな。母が迷惑をかけている」

「迷惑をかけているのはアリシア様だけではないようですが」


彼女の言葉にため息を吐いて見せるとイルムは深々と頭を下げて補足説明をしてくれる。

ただ彼女の言葉や態度は丁寧ではあるのだが時々、胸に刺さる物があるように聞こえる。

実際、余計な事に巻き込んでしまったため、何も言う事が出来ず、苦笑いを浮かべる事しかできない。

イルムは私の考えている事が理解できているようで小さく頬を緩ませている。


……まったく、ルディア嬢と長い時間を過ごしてきたせいか考え方が似すぎているようだな。いや、どちらかと言えばルディア嬢の考えがイルムに似てしまったと言う事だろうか? これでもこの国の次期皇帝なのだがな。


「そう思うのでしたら、もう少し、お嬢様の負担もお考えください。久しぶりに時間が取れたのですから好きな事をさせてください」

「……それはすまなかった。これはお詫びだと思ってくれ。まあ、今回のルディア嬢の働きに釣り合うとは思えないが」


イルムは俺の考えている事が手に取るようにわかるようでルディア嬢に負荷をかけないようにと釘を刺してくる。

彼女の態度にため息が漏れそうになるがため息を吐いても何も状況は変わらない事や彼女の言い分ももっともであり、言える立場にない事は理解できている。

ため息を何とか押し止めるとお土産に持ってきた焼き菓子を彼女へと渡す。

イルムは焼き菓子を受け取った後、頭を下げると休憩の準備を始め出すわけだが、それはある意味、俺の事は完全に放置と言う事にもなる。

ただ、自分を次期皇帝としておかしな気を使ってこない事に居心地の良さを感じるため、何か罰を与えると言う事はしない。元々、そんな事をするつもりもない。


「……どうするかな?」


ルディア嬢は侍女をイルムしか連れて歩かないため、彼女が相手をしてくれなければ自らの護衛達から扱いの悪い俺は自然と1人になるわけだが、元々、城から逃げてきた事もあるためか、ルディア嬢と話をしないと特別、何かやる事があるわけではない。

準備ができればルディア嬢も休憩に入ると思うのだがそれまで彼女が領民とともに作業をしているのを眺めているのは何か違う気もする。と言うか、ルディア嬢はまったく気が付いていないが領民達は俺の存在に気が付いている者もいるため、何もしていないで年下の令嬢を眺めているのは何か気まずい気がする。


「ルディア嬢、何か手伝う事はあるか?」

「……ヴィンセント様? なぜ、ここに?」


しばし考えた後、手伝いくらい出来る事はないかと思ってルディア嬢に近づく。

彼女はゆっくりと振り返ると状況が整理できていないのか小さく首を傾げた後、俺の顔を見てしばし考えると眉間に深いしわを寄せた。

彼女の頬や鼻先が土で汚れているのだが、ルディア嬢の表情からはまったくその事を気にしている様子はなく、その様子に笑みがこぼれてしまう。


「何を笑っているのですか? こちらに来てください」

「何かあったのか? ……一先ず、俺が不味い事をやった事は理解したから落ち着いてくれ。これでは話も出来ない」


ルディア嬢は俺が笑ったのを見て、不快に思ったのか眉間のしわを深くすると俺の手を引き畑の外に移動する。

彼女は見るからに怒っているのだがなぜ彼女が怒っているかは理解が出来ない。

ただ、このままでは話にならないため、謝罪をして彼女をなだめるとルディア嬢は言っても仕方ないと思ったのか大きく肩を落とした。


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