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性分ではありません  作者: 紫音
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第5話

「勘違いされても困ります。アルフレッド様が後継者から落とされた事は私には一切関係がありません」

面倒な人間に捕まった。授業が終わり、馬車を待っていた時、元婚約者(アルフレッド)様が私の前に姿を現しました。元々、そのうち、私の前に姿を現すと思っていたため、それほど驚きはしません。

この時間を選んだと言う事はそれなりに考えたと言う事でしょうか? それとも、自分の立場を理解するのにこれまで時間がかかったと言う事でしょうか?

アルフレッド様は侯爵家の長子であり、私をあの舞踏会で婚約者から追い落とすまでは多くの取り巻きを連れて歩いていました。

私と言う婚約者がいながらもバルフォード家と縁を結ぼうとした貴族達の子息子女達、ただ、すでに後継者から追い落とされたアルフレッド様に世間の目はかなり冷たかったようです。

小父様に自分を後継者に戻すように頼むようにとアルフレッド様は高圧的に詰め寄ってくるのですが私にはそのような権限は何もありません。

私に言われても困るとため息を吐いて見せるのですがアルフレッド様は引く気は無いようです。

自分が誰に守られてきたかも知らずにそれが自分の力だと勘違いしたバカな男。元婚約者の私の評価はその程度の物です。


しかし、サーシャ様は今朝、取り巻きを引きつれてでしたが、アルフレッド様はお1人、サーシャ様にもバルフォード家の後継者から追い落とされては価値がないと判断されたのでしょうか? ……それでしたら、アルフレッド様はずいぶんと惨めですね。

多少の同情はしますがそれだけです。こんな男の相手をしているよりは早くお屋敷に戻ってお花の世話をしていたいと思い、会釈をしてから彼の横をすり抜けようとしますが彼は私を逃がすつもりは無いようで私の手をつかみます。


「……勝手な事を言うな」

「勝手なのはアルフレッド様でしょう。不貞を働いたのはあなた様とサーシャ様です。私に非など一切ありませんわ。あの時もそう言いました。覚えておられますか?」

身長差があるため、完全に見下ろされているのですが高圧的な態度をしていれば誰もが自分の言う事を聞くとでも思っているのでしょうか?

彼の態度に今回の婚約が破談になった原因はアルフレッド様とサーシャ様にあるとその原因を叩きつけて見る。もちろん、笑顔を作ってです。

言いがかりをつけるのは筋違いだと悪いのは他の誰でもないあなた様だと。

見下していたはずの私に挑発される事が腹立たしいのかアルフレッド様は手を振りあげます。

……1発なら安いものですね。アルフレッド様の気性を考えればこれくらいの事は予想できていました。むしろ、ナイフや剣が出てこなかった事にほっとしたくらいです。

ただ、頬を赤くして帰るとフォノスに伝わった場合が面倒ですし、何より、これ以上の迷惑を小父様やフォノスにかけるわけにはいきません。


「私をぶちたいのでしたらどうぞ。右の頬で飽き足らないのでしたら、左の頬も差し出しましょうか?」

怖くなどないと言いたげに笑って見せる。実際はぶたれて悦ぶような性癖は持ち合わせていないため、完全な強がりです。痛い思いなどしたいはずがない。

しかし、舞踏会の後で私が何か画策して自分を陥れたと勘違いしているアルフレッド様には充分な効果があったようで彼は振り上げた手を止めました。

手が止まった事に正直、ほっとするのですが顔に出すような事はしません。


「アルフレッド様はここで私に手を上げた場合にどうなるか考えておられるのでしょうか?」

「……」

内心ドキドキしていますが笑顔を作ったまま問います。私の質問に何か裏があるのではないかと考えているのかアルフレッド様は私の腕をつかんだまま、考え込みます。

……正直、あまり付き合ってもいたくないのですが、ここで決着をつけないとこれからも同じように時間を無駄に使われても困ります。


「アルフレッド様、考えがまとまらないのであれば場所を移動しませんか? 往来でこのような事をしていて、良からぬ噂が立てられても困りますから」

「……良からぬ噂?」

「安心なさってください。私は婚約者がいながらも不貞を働く殿方とよりを戻す気はありませんから、そこのカフェで紅茶でも飲みながらお話でもしませんか? 私がアルフレッド様を後継者から追い落とせと言ったわけではないと言う事をご説明させていただきますわ」

貴族や有名商家の子息子女が通う学園であり、私と同じように迎えの馬車を待っていた者達も多いのです。

そんな中で元婚約者との修羅場を繰り広げていては修羅場を見て下さいと言っているような物です。お兄様やフォノスは期待するだけ無駄だと言われるでしょうがアルフレッド様の考えの足りない行動でこれ以上、バルフォード家に迷惑をかけるわけにはいきません。

アルフレッド様の心が折れる(考えが代わる)ようにお話をしないといけないと思い、彼を学園の敷地内のカフェへと誘います。

もちろん、婚約者と言う立場に戻る気は一切ないと言う事も忘れません。

考えを改めて求婚などされては私が困りますから。


「手を放したからと言って逃げるような事はしませんわ。私はマージナル侯爵家の名を辱める事をする気はございませんので」

私から誘ったのです。当然、逃げる気は無い。逃げて何度も同じように捕まるよりは1度で終わらせた方が効率は良いに決まっている。

逃げないと宣言しながらも自分が侯爵家の令嬢であり、今のアルフレッド様とは立場が違うと言う事を強調して見せる。

これでも元婚約者様です。私の性格もそれなりに理解しているのでしょう。悔しそうに顔を歪めながらも手を放してくれました。


「それでは参りましょうか?」

暴力で解決するのを思いとどまった事に多少は評価してあげようとは思います。それでも、このような愚かな行動をしてきた時点で評価はかなり底まで堕ちているのですけどね。

それにさえ気が付いていないのであれば、再起も何もないでしょうね。まあ、元婚約者様がどうなろうと今の私には全く関係ありませんね。


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