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性分ではありません  作者: 紫音
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第48話

サーシャ様に間に入っていただいてラティート様と打ち合わせをして数日、お兄様とラティート様の婚約話は一先ず、放置してユミール伯爵家の協力は仰げる事となりました。

ユミール伯爵家が協力している事やマージナル侯爵家と関係が悪いと有名なラグレット侯爵家のご令嬢であるサーシャ様まで私のお手伝いをしていると言う話は一気に広がり、そのせいか今まで状況を遠目から眺めていた者達まで途端に協力的になったのです。

おこぼれに預かろうと言う考えを持った多くの貴族や有名商家から接触が増えてきているのです。考えている事はわかりますけどね。私達も忙しいのです。無駄な時間は極力避けたいのです。

そう思っていたはずですのに更なる問題を持ってくる方が1人。


「……ヴィンセント様、何かご用ですか?」

「進捗状況を確認しにきただけだ」


ヴィンセント様の訪問に眉間にしわが寄ってしまいます。

私の表情を見て、ヴィンセント様は苦笑いを浮かべると当たり前のようにイスに腰を下ろし、ふうと息を吐きました。

進捗状況の確認とは言っていますが、きっと、アリシア様から逃げてきたのでしょう。

ただ、逃げだすために私を使わないで欲しい。


「……進捗状況の確認と言われましたが、報告書は定期的にアリシア様とヴィンセント様に提出しているはずですが」

「確かにそうだが、報告書ではわからない事もあるだろうからな」


笑顔を作ってさっさと帰ってくださいと嫌味を込めて伝えてみます。

しかし、ヴィンセント様は私に嫌味を言われる事は元々、わかっていたためか気にした様子はまったくありません。


「それでは報告書以外で何が知りたいのですか?」

「そうだな……一先ずはレグルス殿とラティート嬢の婚約話についてかな?」


無駄とは解っていても、もう1度、嫌味を込めてため息を吐いて見せます。

王城の中庭整備の報告に対して、ヴィンセント様の口から出てきた言葉がお兄様とラティート様のご婚約についての話です。

その言葉に眉間に深いしわが寄ってしまいます。ヴィンセント様もさすがにこれは無いと思ったようで苦笑いを浮かべています。


「……ヴィンセント様、ふざけるのも大概にしていただけますか?」

「別にふざけているわけではないのだがな……母上からぜひ聞いてくるように言われたんだ」


自分でもおかしな事を言っているとわかっていて婚約話を持ちだしてくるヴィンセント様に向かって言います。

たぶん、額には青筋が浮かんでいると思います。ヴィンセント様は怒りを抑えて欲しいと言いたいのか右手を私の前に出すとため息交じりでアリシア様の指示だと言うのです。


……アリシア様は何をしたいのでしょうか?


眉間のしわがかなり深い物になっていると思います。

ヴィンセント様も私の気持ちを理解しているようで困ったような表情で笑っている。


「……いったい、どういう事でしょうか?」

「俺に言われても困る。ただ、あまり娯楽もないらしくて、そこで耳に入ってきたのがルディア嬢の兄のレグルス殿に婚約話だからな。それも兄妹そろって結婚や婚約に興味なさそうにしているマージナル侯爵家次期当主。王城内でもいろいろと話題に上がっているようだぞ」


……女性はいくつになっても他人の恋愛話が気になると言う事でしょうか?

ヴィンセント様はため息を吐きながら、王城内でお兄様とラティート様の関係が話題になっている事を教えてくださいます。

私はあまりその手の話に興味がないせいか頭が痛くなってしまいます。


「……アリシア様、そんな事に力を注ぐのでしたら、ご自分で中庭の手入れに動いて下さらないかしら。アリシア様なら問題なく出来るでしょうに」

「それは無理だろう。ルディア嬢の実力を測ろうとしているわけだからな」


面倒事に巻き込まれているためか、原因であるアリシア様への不満が漏れてしまいます。

ヴィンセント様もアリシア様はそれくらいできると考えているようだが目的は他にあるため、文句があっても無駄だと言われます。

その目的は私にとってはあまり歓迎できる物では無いため、眉間にしわが寄ってしまいます。

アリシア様の目的が私とヴィンセント様の事をまとめようとしている事である事はわかり切っているため、ヴィンセント様も苦虫をかみつぶしたような表情をされます。


……そう思うなら、アリシア様の指示で私のところに来ないで欲しいのですけど。アリシア様は私とヴィンセント様の距離を縮めようと考えてもいるんですから。


「……報告書ではご不満ですか?」

「俺は報告書には別に不満などはない……ただ、なぜ、協力者にサーシャ=ラグレットがいるかが気になるところだな」


改めての説明など必要がない報告書を作成したと伝えるとヴィンセント様はため息を吐きながら、サーシャ様の名前を挙げます。

ため息を吐いてはいるがその目つきには鋭い物があり、ヴィンセント様が私の人選に不満を抱いている事がわかります。


「アリシア様はなんとおっしゃられていますか?」

「面白いと笑っているだけだ……ルディア嬢、ずいぶんと楽しそうだな?」


サーシャ様が協力している事にアリシア様が嫌悪感を抱いているかと確認する。

ヴィンセント様はあまり面白くないと言いたいようで眉間にしわを寄せられているせいか、若干、気が晴れたような気がしますね。

それは表情にも出ていたようでヴィンセント様の額には青筋が浮かび上がってきます。


「そんな事はございませんよ。ラティート様は人見知りが激しいので私ではまともにお話が出来ませんのでサーシャ様にお手伝いをお願いしたまでです。それが上手く行ったようで多くの皆様からご協力を得られたようですけど」

「……それを自分の人望ちからだと勘違いしなければ良いがな」


必要な人選ですと笑って見せます。

しかし、ヴィンセント様はサーシャ様の協力には何か裏があると思っているようで不機嫌そうに眉間にしわを寄せます。

それに関して言えば、私も同じ事を考えていますが、ヴィンセント様の様子を見ればサーシャ様の性格を考えてだけではなさそうです。


……サーシャ様も嫌われたものですね。


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