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性分ではありません  作者: 紫音
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第46話

ラティート様以外にも学園に通うご子息、ご令嬢にご当主様へと言伝をお願いしたわけですが3日ほど過ぎましたが各家からの反応は良くありません。

本来ならばアリシア様の命を受けて私が動いているのですから、アリシア様の覚えを良くするためにもすぐにでも協力していただけそうなのですがそう上手くはいかないようです。


「……簡単にはいかないものですね」

「お嬢様ほど、単純ではないのですよ」


それでも悠長に返事を待っている余裕もないかため、自室で出来る事から始めようとするのですが上手く行かない事への不満が口から漏れてしまいます。

そして、いつの間にか部屋の中に入ってきていたイルムからため息を浴びせられます。


まったく、もう少し言い方はないのでしょうか?


彼女の様子にため息が漏れてしまいますがイルムに言っても無駄のため、何も言いません。

怒っているわけではありません。


「イルム、どうしたのですか? 考え事があるから1人にしていて欲しいと言ったはずです」

「お嬢様にお客様です」


彼女の事ですからしっかりと入室までの手続きをしているに違いない。

何か言っても私が気づかなかったからで押し切られてしまうでしょう。ですから、入室について言及する事無く、用件を聞きます。

イルムは深々と頭を下げるとお客様が来たと告げるのです。

来客と言われてすぐにヴィンセント様のお顔が浮かび、眉間にしわが寄ってしまいます。


「お嬢様、ヴィンセント様ではありません」

「そうですか。それならどなたでしょう?」


私の表情を見たイルムはすぐにお客様がヴィンセント様ではないと教えてくれます。

ヴィンセント様ではないと聞いた事でお客様に心当たりが無くなってしまいます。

首を傾げて見せるのですがイルムはすでに目的を達したと言いたいようで私を置いて歩き出すのです。

私へ対する彼女の態度に何か言うのは無駄と割り切り、彼女の後に続きます。


「……ルディア、お前は何をしているのだ?」

「ラティート様に兄様?」


イルムに先導されて中庭に移動するとお客様はラティート様だったようです。

ただ、なぜか兄様も同席されており、私の顔を見た兄様は眉間に深いしわを寄せられているのです。

見るからに機嫌は悪そうですが私には関係ないでしょうから、無視してラティート様とお話をした方が良いですね。


「ルディア、私も同席させて貰うぞ」

「……わかりました」


兄様を無視して用件を聞こうと思ったのですが兄様はなぜか同席をすると言うのです。

意味がわからないため、首を傾げるのですが兄様は動く気はまったくなさそうです。

ため息が漏れそうにはなりますがラティート様の手前、そう言うわけにもいきません。

その辺は後で聞けば良いと判断し、ラティート様と向かい合うように座りますが相変わらず、彼女は目を合わせてくださいません。


「先日の件でよろしいでしょうか?」


こちらから話しかけなければ会話が成り立たないと思い、話しかけて見るのですがラティート様は視線をそらしたまま頷くだけです。


……サーシャ様はラティート様と良く会話ができますね。


会話すらしていただけない事に頭が痛くなってくるのですが彼女を取り巻きの1人にしているサーシャ様の顔が頭に浮かびます。

彼女は彼女で苦労しているのでしょうが私の知る彼女の性質であればラティート様のようなはっきりとしない人間はイジメ倒す気もするのですが、私にはわからない何かがあるのでしょう。


「……ルディア、あまりラティート嬢を睨み付けるな」

「そのような事はしていませんが、ラティート様、先日の事をお話に足を運んでくれたのでしょう。ユミール伯爵様はなんと」


兄様の目には私がラティート様を威圧しているように見えたようで態度を改めろと言いたいのか大きなため息を漏らします。

ただ、私はそのような事をまったくしていませんが、小さく肩を落とした後に笑顔を作ってもう1度、聞いてみます……ですが、ラティート様は私の笑顔を見て身体をびくっと震わせるのです。


……な、泣いても良いですか?


彼女の反応に眉間にしわが寄りそうになるのですがここで眉間にしわを寄せるとさらに怖がられる可能性があるため、何とか我慢します。


「お嬢様、お顔が怖いです」

「そんな事はありません」


我慢している事はイルムには気づかれていたようで彼女は背後から表情を戻すように注意してきます。

兄様やラティート様は気が付いていないようなので改めて、彼女との付き合いの長さを実感するのですが兄様もこのままでは話にならないと思ったのかこほんと1つ咳をします。


「……先日、お前がラティート嬢に協力を仰いだ事で面倒になった」

「面倒な事? それは何でしょうか?」


面倒な事と言われても内容がわからなければ対応は出来ません。

兄様に聞き返すとなぜかラティート様は頬を染めてうつむいてしまうのです。

彼女の反応がさらに状況をわからなくするのですが詳しい話を聞かない事には何も対処できません。


「……なぜか、ユミール伯爵から私の婚約者にラティート嬢はどうかと言ってきた」

「どうして、そのような話になっているのですか?」


兄様の口から出た言葉が予想外過ぎて我慢していた眉間のしわが一気に寄ってしまいます。

ですが、私の背後にいるイルムはおめでたい事だと言いたいようで控えめに手を叩いているのです。

彼女に手を叩くのを止めるように咳ばらいで合図を送ると拍手は鳴りやみますが状況はまったく理解できません。


私はあくまでもアリシア様からの命令を遂行するために動いており、それを円滑に進めるためにラティート様へ協力を仰いだのです。


それがなぜ、兄様とラティート様の婚約話になるのでしょうか? それにもし兄様とラティート様が本当に婚約されたら……サーシャ様がうるさそうですわね。


「……お嬢様、1番最初にサーシャ様を思い浮かべるのはお止めください」

「私は別にサーシャ様の事など考えていません」


……そして、なぜ、イルムはすぐに私の考えている事がわかるのでしょうか?


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