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性分ではありません  作者: 紫音
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第41話

……いつもながら、面倒な方に捕まりました。


ヴィンセント様に婚約者を早急に見つけるようにと忠告して数日が過ぎた時、アリシア様のお願いを聞いて王城の中庭の手入れを行うと言う噂が広がり始めました。

ルーニィ様がアリシア様の味方のため、私の自称親衛隊でヴィンセント様と私の中を応援しようと考えているご令嬢達を使って既成事実を作ろうと噂を広める事はわかり切っていましたがもう少し面倒な事になる事を考えて欲しいです。


面倒事に巻き込まれるのは遠慮したかったため、登校時間を遅らせるなど他にもいろいろと策を打ったのですが彼女の執念が勝ってしまったようです。

逃げていた事もあり、すでに怒りが限界点に達していそうなサーシャ様のお顔にため息が漏れそうになります。ただ、ここでため息などを聞かせてしまえば、面倒事が増えるのは確実です。


「サーシャ様、何かご用ですか? 私は少し調べ物をしたいので急いでいるのですが」

「それはアリシア様に気に入られるために忙しいと言う事でしょうか?」


立ちふさがる彼女に向かい、多忙であると告げるのですが……どうやら、逆効果だったようです。

すでに限界点に思えていたサーシャ様は何とか耐えきったようで口調は落ち着いていますがその言葉からは怒りの感情が溢れているように聞こえます。


「気に入られるつもりなど、まったくありませんけど」

「その態度は何ですか? すでに勝ったとお思いなのですか?」


何とか穏便に済ませたかったんですがそう言うわけには行かなくなったため、無駄と判断してため息を吐いて見せます。

ヴィンセント様に狙いを定めている彼女は勝手に私をライバル扱いしているため、忌々しそうな表情をしているのですが反対に彼女の取り巻きをしているご令嬢達は顔が真っ青です。

仮にヴィンセント様と結ばれては今までの嫌がらせが返ってくるのではないかと考えているようにも見えますが私はそのような事をする気はありません。


「そんな事は思っていませんよ。それに……私がアリシア様にお願いされた事はお庭の手入れです。ヴィンセント様の事は関係ありません」

「そんな嘘でだまされると思うのですか?」


……で、ですよね。


自分で言って置いて言うのもなんですがアリシア様はどう考えても私をヴィンセント様の伴侶として迎え入れようとしています。

私が何を言ってもそれは確定です。それこそ、ヴィンセント様が彼女でも連れてこなければ覆らない……いや、連れてきても覆らない可能性もありますが今は考えないようにしましょう。


「それでは聞きますが、サーシャ様は私がそのような事をしてアリシア様に取り入ろうとする様な人間に見えますか?」

「……」


あまり自分では言いたくはありませんがサーシャ様は幼なじみです。

私が今までどのように生きていたかご存知のはずです。

サーシャ様は私の言葉に少し考えるような素振りをして見せます。

きらびやかなドレスや宝飾品などよりも領民達とともに土いじりをするのを好む変わり者の侯爵令嬢。

それが気に入らなくて何度も何度も嫌味を言ってきたのですから。むしろ、ここで見えると言われれば私が怒っても良いはずです。


「現状で言えば、私の下にヴィンセント様との婚約のお話はありませんし、私もヴィンセント様もそのつもりは一切ありません。そのため、ヴィンセント様には早く良い人を見つけてくださいと言わせていただきました」


噂は噂だと否定させていただきます。ヴィンセント様に後ほど文句を言われそうですが彼に婚約者を探せと伝えた事を話します。

私の言葉にサーシャ様だけではなく、彼女の取り巻きのご令嬢達も反応を見せました。


「……なぜ、そのような事を私に伝えるのですか?」

「何をおっしゃっているかわかりません。私は最初から婚約はしていないと言っています。それに私はヴィンセント様の婚約者にはルーニィ様が良いと考えています」

「……ルーニィ=ウィーグラード公爵令嬢をですか? ウィーグラード公爵家に取り入るつもりなのですか?」


サーシャ様は何か裏があると思っているようで疑いの視線で私を見ます。

ですが、以前にヴィンセント様の正体が彼女に知れた時にも私は婚約者になるつもりはないと言った旨を話している。

それにくわえて私は裏と言うには姿が見えすぎているルーニィ様の事をヴィンセント様の婚約者に推している事を公言して見せる。

実際に考えればアメリア様とも仲良くしているようですし、ヴィンセント様もルーニィ様も嫌がってはいるようですが血筋や家名的には1番のはずです。

ルーニィ様の名前に少し考えて口から出たサーシャ様のお言葉に眉間にしわが寄ります。


「……取り入るつもりなどありませんわ。私は貴族同士の関わり合いを煩わしいとまで思っているのですから」


自分だけの価値観を押し付けないで欲しいと言う嫌悪の感情を込めて言う。

私は確かに侯爵家令嬢として生を受けましたが華やかな場所は苦手ですし、情報交換など必要な事もあるため、無駄だとは思いませんがあまり関わり合いたくはないとすら考えています。

それにあのような場所は本人が否定している噂でさえ、面白おかしく伝わってしまう。人が噂をすればそれに悪意や羨望など多くの物が混じりあい意図せぬものになってしまう可能性が高い。


……そうやって、私をヴィンセント様の婚約者にしてしまおうと考えている方達も多いわけですが。


「そのような華やかな場所で着飾るのは私の性分ではありませんし、お兄様に任せたいと思っています……そうでしたね。お兄様もあまり悪意ある噂はお嫌いのようでしたが」


マージナル侯爵家の次期当主であるお兄様も噂話をあまり好きではないと伝えてみます。

私の言葉にサーシャ様の取り巻きのご令嬢が1人、小さく反応をしました……お兄様も隅に置けないですね。


「話は終わりのようですね。私は図書館で調べ物があるのでこれで失礼します」


アリシア様からのお願い事を達成するために時間を有効に使いたいため、笑顔を作って話を強制的に終わらせます。

サーシャ様は何か言いたげですが見ないふりをしておきます。


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