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性分ではありません  作者: 紫音
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第40話

「……ルディア嬢、君はバカなのか?」


アリシア様とのお茶会はその後、婚約話にまったく触れる事なく終わりました。

ただ、アリシア様の様子から彼女の第1の目的は達したのは誰の目でもわかったようで、お茶会の翌日にヴィンセント様が訪ねてきます。

彼の眉間にはしわが寄っており、私がお城の中庭の手入れを承諾してしまった事への非難の色が見えます。


「……仕方ないじゃないですか。こちらには裏切り者が多数いたようですし」

「多数?」


お城から戻ってから、イルムにアリシア様といつから繋がっていたのかを問いただすと隠す気がまったくないようで彼女は簡単に白状しました。

アリシア様の触手はイルムだけではなくお父様達家族を含めたマージナル家の使用人達すべてや領民にも伸ばされており、推測ではありますがルーニィ様から私の自称親衛隊の方々にまで伸びているはずです。


「後はヴィンセント様がマージナル家にお越しになる時に付いてくる者達もアリシア様のお味方です」

「何だと?」

「まったく、供の者にアリシア様の手が伸びている事にも気が付かないのですか?」


イルムはお客人への紅茶を淹れながら、アリシア様の指示を受けている者達の事を話します。

その言葉にヴィンセント様の眉間のしわはより深くなるのですが私だけ責められていたため、反撃しておきます。


「……そうか。俺の側にも裏切り者がいたわけか」

「むしろ、ヴィンセント様がお嬢様の側にいる間に根回しをしておられましたよ」


真実を知ったヴィンセント様に向かい、イルムは更なる追い打ちをかけます。

……確かに今にして思えば、護衛で付いてきたはずの方達がいくらマージナル家領内は安全だとは言え、ヴィンセント様を1人にしているわけがありませんね。

あまり、供を付けて歩きたくないとヴィンセント様の性格を逆手に取られてしまったためか、ヴィンセント様は黙ってしまいます。


「落ち込むのでしたら、余所でお願いします。私は忙しいのですから」

「忙しい? ……本当にやるつもりなのか?」


正直、アリシア様の手の上で踊らされている感は否めませんがそれでもお城の中庭を好きに手入れできる事は私に取って魅力的な言葉です。

最近はすでにアリシア様の触手が領内に向けられている事を考えると領民達もお城を優先してくださいと言って領内で土いじりをさせてくれない可能性があります。

……土いじりができないのは私に取って死ねと同意です。それは避けなければなりません。

だから全力を尽くさないといけないのですが……問題があります。

私は土いじりや花や作物を育てる事は好きですが……中庭の世話となれば何の花を植え、育てるかを考えなければいけません。それも年間を通してです。


「当然です。皇帝妃であるアリシア様からのお願いなのです。下手な事をすればマージナル侯爵家に悪影響が及びます」

「……だが、それを成功させると母上に気に入られてしまうぞ」

「ヴィンセント様、それに関して言えば、すでに手遅れだと思います」


ヴィンセント様の言葉に断れる立場にないと告げます。

私が断る事が出来ない事はヴィンセント様も当然、理解されているようですがやはり、アリシア様が私をヴィンセント様の婚約者にしようと企んでいるため、良い表情をしません。

彼の表情にイルムは表情を変える事無く、無駄なあがきは止めるように言うわけですがその言葉には私も納得がいきません。


「一先ず、私はアリシア様から頼まれた事を蔑ろにするわけには行きませんので、時間が出来たのですから、ヴィンセント様はヴィンセント様で頑張ってください」


現状、問題なのはアリシア様が婚約者を探さなければいけないのはヴィンセント様に婚約者や恋人の影がないからです。

すでに意中の人がいると言うのであればアリシア様も無茶はしないはず……これは希望的な物も含まれていますね。

嫌味の意味を込めて、ヴィンセント様を応援すると彼の顔は苦虫をかみつぶしたように歪むわけですがこれに関して言えば、私が巻き込まれているわけですから何も言わせません。


「……善処はしよう」

「お願いいたします。後、イルム。ここでの話をアリシア様に伝えないように」

「私が伝えなくてもアリシア様には筒抜けだと思います」


眉間にしわを寄せながらも頷くヴィンセント様の様子にため息を吐いた後、裏切り者のイルムにも釘を刺す。

イルムは小さく頷くわけですが彼女の言葉に眉間にしわが寄ってしまいました。

……確かにアリシア様の情報網は侮れません。私にとってはヴィンセント様もどこかつかみどころのない胡散臭い人間なのですが、そんな彼を手玉にするくらいの方なのですから。


「……確かにすでに俺がここに訪れた事は耳に入っているだろうな。そこから、何について話しているかも推測しているだろう」

「何せ、お供の者達がアリシア様に情報をお渡しになっているのですからね」

「お嬢様、アリシア様にではありません。アリシア様と皇帝様にです」


この場を訪れたのはヴィンセント様だけで護衛の方達はお父様や使用人達とお話をしているのですから、ヴィンセント様が私の下を訪れたのは当然、アリシア様の耳にも届いています。

もう少し、これからは警戒して欲しいと伝えるとヴィンセント様は眉間にしわを寄せながら頷いてくれるわけですが情報が届けられているのはアリシア様だけではなかったようです。


「……父上にも届いているのか?」

「自由にさせていたにも関わらず、婚約者を連れて来ようともしない後継ぎを持っていては不安になるのは当然だと思います。そんな方が足しげく、マージナル侯爵家のお嬢様の下に訪れるのですから、普通は期待されると思いますがどうでしょうか?」

「確かにそうですね」

「……迷惑をかけてすまない」


自分の父親である現皇帝にまで話が届いていると言う事実にヴィンセント様の頬は引きつってしまいます。

イルムはマージナル侯爵家の侍女ではありますがすでに彼女はアリシア様の手先、私やヴィンセント様への口撃を止める事はありません。

ヴィンセント様の今までの事を考えればアリシア様が心配になるのは当然の事でした。イルムの言葉にため息を漏らしながら、非難の視線を彼に送ります。

私の視線にヴィンセント様は眉間にしわを寄せると謝罪の言葉を下さりました。


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