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性分ではありません  作者: 紫音
33/53

第33話

ルーニィ様からお茶会の招待状が来てから数日、ヴィンセント様の協力を得てお茶会当日までに皇帝様やお妃様の情報を集めようとしていたわけですが……学園へ登校するといつも以上に周囲から奇異の視線で見られているような気がします。

基本的にあまり人目は気にしていないのですがだからとしても異常です。


……少し様子を探りましょうか?


何が有ったか情報を得る必要がありますがどうも距離を取られている気がします。

元々、あまり友人知人が多いわけでもありませんから話しかけてくれる方はいませんし、アメリア様なら何かつかんでいるでしょうし、彼女を待ちましょう。


周囲の反応から私が話題の中心だと言う事は理解できます。私から声をかけると侯爵家令嬢として話を聞かせてくれるかも知れませんが圧力をかけられたと思う方もいる可能性がありますので少しはしたないですが聞き耳を立てる事にしましょう。


方針を決め、教室の席に座る。

噂話になど興味なさそうな表情をしている物の実際は気が治まりません。


「ルディア様」

「サーシャ様、おはようございます。どうかなさいましたか?」

「ずいぶんと上手くやったようですね」

「何の事をおっしゃっていられるのですか?」


席に座り、しばらく経つとアメリア様ではなく、サーシャ様が私の前に立ちます。

それもずいぶんと機嫌が悪いようで額には青筋が浮かんでいます。

彼女の様子からすでに面倒な事に巻き込まれている事は容易に察しが付きます。彼女の相手は面倒だとも思いながら表情に出す事無く笑顔で挨拶を交わす。

しかし、サーシャ様はまるで親の仇でも見るかのように私の顔を睨み付けました。

何を言いたいのかわからないため、首を傾げてみせるとサーシャ様の青筋が深くなります。


「……皇帝様がルディア様をヴィンセント様の婚約者にしたいとおっしゃっているそうではないですか?」

「申し訳ありません。そんな話、1度も聞いた事がございません」

「本当でしょうね」


怒鳴りつけたいようですが彼女は何とかこらえたようでゆっくりと話し始めます。

お茶会へ招待された話はすでに広まっているようで、サーシャ様はその件について追及するために足を運んだようですが現状では噂に上がっているような事実はありません。

念を押すように聞いてくる彼女に向かい頷いて見せますが疑いが晴れる事はなさそうです。


「なぜ、そのような噂が出ているのですか?」

「……あなたの取り巻きの令嬢達が噂していましたわ。自慢でもしていたのではないのですか?」

「初耳なのですから自慢のしようがありません。それに取り巻きのご令嬢とは?」


あまり相手をしたくない方ですがせっかく噂話を運んできてくれたのです。どんな噂話が流れているのか確認しておきましょう。

そう考えてサーシャ様へと質問をしてみると彼女は吐き捨てるように言いますが彼女の言葉には首を傾げるばかりです。


私はサーシャ様と違って取り巻きを連れて歩く趣味などないのですが……親衛隊の方々でしょうか?


サーシャ様の耳に噂話を入れたのは誰なのか見当もつかないと思っていたのですがアメリア様がおっしゃっていた私の親衛隊を語る方々の事を思い出します。

思いだした瞬間に顔が引きつりそうになりますが侯爵家令嬢としてそのようなはしたない事が出来るはずもありません。

何とか平静を保ちつつ、サーシャ様に確認するように聞くと彼女は嘘を吐いていないか確認するように私の顔を覗き込みます。

元々、お綺麗な顔立ちをしているのですから欲など出さずにいれば良い縁談もあると思うのですがそれが出来ないから悪手を打つのでしょう。


「……サーシャ様、近いです」

「……」


表情から読み取られるような事をする気はありませんがこのままではお話が聞けません。

侯爵家令嬢としてその行動は良くないと彼女をいさめると彼女はとりあえず、引いてくれましたが私への疑いは晴れていないようでその視線は鋭いままです。


「サーシャ様、私は取り巻きのご令嬢など居りませんよ」

「あのうるさい伯爵家の令嬢がいるでしょう」

「伯爵家の令嬢? ……アメリア様ですか?」

「他に誰が居るのですか?」


親衛隊を語る方々とまったく面識がないため、名前だけでも聞けないかと思い探りを入れます。

サーシャ様はため息を吐きながら話をしてくれた方に心当たりがあり、名前を出してみるとため息を吐かれてしまいました。

アメリア様ですか……彼女はルーニィ様とご友人ですし、私がお茶会の招待状を受け取った事を知っているとは思いますがだからと言って余計な噂を広めないで欲しいです。


「……噂話は初耳だと言いましたがヴィンセント様とは顔見知りなのですか?」


アメリア様の名前に漏れそうになったため息を飲み込んだ時、サーシャ様は表舞台に出てこないヴィンセント様と私との関係性を聞いてくるのです。

彼女の目はヴィンセント様を狙っているようでその瞳の輝きは猛禽類を彷彿させる物のように見えます。

サーシャ様がヴィンセント様に近づけば私の前に現れる機会も減るのではないでしょうか? と言う考えが頭をよぎります。


「私だけではなく、サーシャ様もお会いした事がありますよ」

「……」


ヴィンセント様のせいでおかしな事に巻き込まれていると言う考えもあるため、嫌がらせのためにサーシャ様にヴィンセント様の事をお教えしようと決める。

しかし、彼女はまったく身に覚えがないようで小さく首を傾げるのですが全然、思いつかないようです。


「サーシャ様?」

「……申し訳ありません。私はどこでヴィンセント様とお会いしたのですか? ヴィンセント様は夜会や舞踏会には来られませんし」

「夜会や舞踏会ではありません。それにそのような場には私もあまり足を運びませんし」

「確かにそうですね……そう考えるとどこで?」


サーシャ様はヴィンセント様について忘れてしまっている事をうかつだと考えているようで険しい表情をしているのですがまったく思い当たらないようです。


……そうでしょうね。普通は皇太子様が護衛も連れずに歩き回っているなど考えないでしょうし。


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