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性分ではありません  作者: 紫音
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第32話

「やはり、ヴィンセント様がはっきりとなさるのが1番ではないでしょうか?」


しばらく考えてみるのですが1番の返事はヴィンセント様が婚約者を見つける事としか思えません。

だいたい、私は完全に巻き込まれているのですから、ヴィンセント様が腹をくくってくれるしか解決策がありません。

そのため、巻き込むなと言う意志を込めてにっこりと笑って見せます。


「……ルディア嬢、さすがにそれは冷たくないか?」

「冷たいと言われましても、私が解決に協力できる事はありませんので」

「お嬢様がヴィンセント様の婚約者になられるのが1番の協力だと思いますが」


ヴィンセント様も困ってはいるようでため息を吐かれるのですが、彼の婚約者探しに私が協力できる事はありません。

引いてしまえば厄介な事になると思い、私に取っては他人事だと念を押すのですがイルムが私を裏切ります。


「……イルム」

「婚約ですから破棄する事も出来ますよね。お嬢様」


イルムを非難するように視線を向けるのですが彼女はにっこりと笑います。

彼女の言い方は1度、婚約破棄を経験しているのなら、2度目も変わらないと言いたげです。

確かに婚約破棄は私的には歓迎です。2度も婚約破棄をされる令嬢。そんな娘を望んで家に迎え入れようと考える者は少ないはず、今回のお茶会を乗り切り、私の領地引きこもり生活を続けるつもりなら、それも手段なのですが今回の相手は簡単にはいかない相手だと思うのです。


「イルム、事はそんなに単純なものではありません」

「そうでしょうか?」


ルーニィ様だけでも厄介な気がするのですが今回は現皇帝様とその妃様が相手なのです。

反対されるような非礼な態度を取る事もできますが侯爵家令嬢としてする事はできません。

自分で言うのもおこがましいかもしれませんが私は侯爵家令嬢として淑女としての礼節はすべて修めています。


「マージナル侯爵家の者として恥ずかしいマネはできませんし……何より、ルーニィ様が私の事をなんと報告しているかわかりません」

「ルーニィはルディア嬢を気に入っているからな。嘘でも婚約すれば簡単に話が進んで行きそうだ」


先日、お会いしたルーニィ様から推測するに私の事を彼女の都合が良いようにお話されているはずです。下手をすれば私への評価は最高です。

ヴィンセント様も同じ事を考えていられるようで困ったように笑われます。


「ヴィンセント様が20才にもなられているのにふらふらとなさっているからではないですか?」

「……その件に関しては反論のしようがない」


だいたい、私が頭を悩ませているのに年上であるヴィンセント様から良案がまったく示されていません。

今まで何をやっていたのですかと非難の意味を込めて視線を向けてみると彼は気まずそうに視線をそらします。


「ヴィンセント様、本当に良い方はおられないのですか? 忘れられない方がおられるとか? 身分が違い過ぎて諦めてしまったとか」


イルムが今までのヴィンセント様の恋の歴史に付いて尋ねます。

そんな事を聞いても良いのかと思うのですがヴィンセント様が好きになられた方がいるのでしたら問題が解けるかも知れません。

そのため、彼女を止める事はしません。ヴィンセント様は少し私が助け舟を出してくれる事を期待していたようですが紅茶を飲んで無視を決め込みます。


「……本当に何もないんだ」

「本当ですか? 本当は男性に興味があるとかは」

「それは絶対にない。俺は女性が好きだ」

「そうですか。ヴィンセント様は女好きですか」

「……イルム、その言い方は誤解を招く」


ヴィンセント様は気まずそうに視線をそらしながら話されるとイルムがおかしな方向の話をします。

確かに男性が好きな男性もいるとは聞きますがヴィンセントは力強く否定されます。

その言葉にイルムは更なる口撃を仕掛け、ヴィンセント様は完全にイルムに遊ばれている状態です。


「……イルム、その辺にしなさい。ヴィンセント様も遊んでいないで何か考えてください」

「そうだな……」


私からの助け舟にイルムは小さく頷きます。ヴィンセント様は小さく頷き、考え始めるが何も言葉が続いては来ません。


「ヴィンセント様は今まで自由にしていたため、これ以上はご両親に何も言えないようです」

「……その通りなのだが、はっきりと言われてしまうとな」

「……ヴィンセント様」

「お嬢様、差し出がましいようですが、お嬢様もヴィンセント様の事を言えません」


ヴィンセント様の言葉が待ちきれなかったようでイルムが私に彼の現状を推測してくれます。

そんな事はさすがにないと言いかけた時、当の本人は肯定するようにため息を吐く始末なのです。

あまりの状況にため息が漏れてしまうのですが、イルムの口撃の矛先は私にも向けられます。


「私が?」

「お嬢様は領内で引きこもっていたいと宣言されていますが、いつまでもどこかに嫁がない令嬢がいると噂になればマージナル家の評判を下げる事になります」

「……」


ですが、私はイルムの口撃を受ける理由がありません。

意味がわからないとため息を吐いて見せるのですが……口撃を受ける理由は充分にありました。

ヴィンセント様と同様に視線が泳いでしまったところに彼と目が合います。


「私としてはここで悩まれているよりは、お嬢様がお茶会に出席される事が1番だと思います。実際、ルーニィ様がお嬢様をヴィンセント様の婚約者に推薦しているとは言え、お嬢様が本当に婚約者になるとは限りません」

「その可能性も確かにありますが」

「お嬢様は相手を長らく観察して戦い方を考える方が得意ではありませんか。まずは情報収集からではないですか?」

「それもそうですね。ヴィンセント様、一先ずは皇帝様とお妃様、ルーニィ様に付いて詳しくお教えください」


気まずくなって視線を外した時、イルムはお茶会に参加する事で情報収集をしてくるべきだと言う。

確かに彼女の言い分ももっともではあるのですがルーニィ様の入れ込みようやヴィンセント様のご様子から簡単にはいかない気はします。

それにお城でのお茶会に非礼が有ってはいけないため、ヴィンセント様からお茶会に顔を出しそうな方の情報を集める事にしました。


……ただ、あまり良い方向に進んでいない気がするのは気のせいでしょうか?


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