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性分ではありません  作者: 紫音
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第31話

「ルーニィ様は何をするつもりなのですか?」


ヴィンセント様がマージナル家領内へ足を運んだ理由はお茶会への招待状と確定したため、情報収集のために彼女の動向を探ると決めます。

彼がわざわざ足を運ぶのですから確実に厄介事です。できれば聞きたくはないのですが情報が不足すれば対処が難しい事もあります。厄介事を回避するためにも必要な事です。

覚悟を決めたつもりなのですが、ヴィンセント様に視線をそらされてしまいました。


「……ルーニィがルディア嬢の事を俺の婚約者にしてはどうかと母上に強く推している。それでお茶会に呼んでルディア嬢を品定めしようと言う話だ、それも母上はかなり乗り気だ」


疲れたようにため息を吐きながらヴィンセント様の言葉に正直、聞かなければ良かったと思いました。

イルムは私のカップに紅茶を注ぎながらも肩を震わせています。彼女は絶対に面白がっていると言う事がわかります。

何か仕返しをしなければいけないとも思いますが今は彼女の相手をしている余裕はありません。


「……なぜ、そのようにお話が飛躍するのですか?」

「俺に聞かれても困る」

「皇太子様が婚約者も選ばずにふらふらされていては不安になられるのは当然だと思います」


自分も困っていると言いたげなヴィンセント様の様子にイルムがため息交じりで答える。

確かに彼女の言う通りなのですがそれをマージナル家侯爵家に仕える彼女が言うのはどうなのでしょうか?


「イルム、言葉が過ぎますよ」

「失礼しました」

「いや、イルムの言う通りだからな。しかし、どうした物かな?」


ヴィンセント様がイルムを処罰するとは思えませんが念のため、形式的に彼女に非礼を詫びさせます。

やはり、ヴィンセント様はまったく気にも留めてはいられないようでため息を吐きながらお茶会の事を考えていられます。


「そうですね。ルーニィ様が私を婚約者にと推しているのでしたら、ヴィンセント様が正式な婚約者様を連れて行けば良いのだと思います」

「それは確かにそうなんだけどな」

「何でしたら、私の知り合いのご令嬢を紹介しますよ」

「……ルディア嬢、それはサーシャ嬢ではないだろうな?」


1番、簡単に問題を解決する方法はヴィンセント様が婚約者を見つける事です。

私を巻き込むのは止めて欲しいと言う意味を込めて言う。ヴィンセント様は困り顔ですがその様子から本当に良い人がいないのがわかります。

しかし、彼は皇太子様です。彼に世継ぎが生まれなければ面倒な事が起きます。そのためにもヴィンセント様には婚約者の1人くらいいて貰わなければ困ります。

ただ、私はヴィンセント様の婚約者になどなる気は無いため、ルーニィ様の誘いに乗るわけには行きません。そのためにもヴィンセント様にどこかの家の令嬢を紹介するべきでしょう。

言葉に出すとすぐにヴィンセント様にため息を吐かれてしまいます。どうやら、本当に良い人はいないようです。


「侯爵家のご令嬢ですよ。家柄的にも何の問題もないでしょう」

「家柄的には問題がないが性格的に問題大有りだ。サーシャ嬢を婚約者だと言って紹介してみろ。次期後継者の立場も危うくなる」


サーシャ様ならヴィンセント様が皇太子様だと知れば、手のひらを返すような態度を見せてくれるでしょう。

そのくらいの事、彼女なら平然とやってのけます。ですが、サーシャ様の普段の行いは多くの政を行う者達の耳にも届いているようでヴィンセント様の眉間には深いしわが寄ってしまいます。


「……サーシャ様の情報はどこまで知られているのですか?」

「この間の夜会の話は父上や多くの者の耳にも入っている。むしろ、その程度の情報も集められなくては国を治める事なんてできはしない」


……どうやら、あの夜会の出来事は知れ渡っているようです。

ただ、領内で引きこもっていたい私に取っては悪い事ではないはずです。なぜならば、あの騒ぎは私とアルフレッド様、サーシャ様の揉め事、揉め事を起こすように娘を皇太子様であるヴィンセント様の婚約者などにするはずがない。ルーニィ様がいくら強く薦めようとも私の事をヴィンセント様の婚約者になどしないはずです。


「そうですか」

「……安心しきっているなか、悪いのだがマージナル侯爵家令嬢のルディア嬢の活躍は父上や母上にも届いている。それも割と好印象だ」


夜会での婚約破棄の件が知れ渡っているのならと安心した私に向かい、ヴィンセント様から非情な言葉が伝えられました。

信じられない状況に動揺してしまったのか手に持っていたカップから紅茶が少しこぼれてしまいました。

その動揺を隠すようにイルムへと視線を送ると彼女はすぐに紅茶を拭き取ります。


意味がわかりません。夜会であれだけの事をしでかしたのですから悪印象はあっても好印象などありません。


「ルディア嬢、あの夜会で評判を落としたはずと考えているところ、申し訳ないがあの騒ぎの裏に有ったルディア嬢の思惑くらい、父上達は簡単に調べ上げる」

「そうですか……もう少しいろいろと画策するべきでした」

「反省するべき点はそこなのか?」


私の考えている事を見通しているようでヴィンセント様は苦笑いを浮かべられますが……そうですか。情報操作はもう少し綿密にする必要がありましたね。

あの茶番の思惑に陛下が気が付かれていると言われてしまえば、自分の浅慮を恥じるしかありません。

表舞台に立ちたくない私としてはやり方が少々、雑だったようです。元々、感情で走り出すアルフレッド様とサーシャ様相手でしたから、簡単に行くと思っていたのが間違いだったようです。

まさか、このような話になるとは思っていなかったため、ため息が漏れてしまいます。


「他に何かございますか? 夜会でわざわざ恥を晒したのです。そのような人間に注目する方がいるとは思いません」

「世の中にはいろいろな考えを持つ人間がいるんだ。ルディア嬢も特殊な考えを持つ側の人間だろう?」

「変わり者の侯爵令嬢ですからね」


ヴィンセント様は皮肉交じりで小さく口元を緩ませるのですが言われなれた言葉のため、腹など立ちません。

それより、お誘いを断る事が出来ないお茶会、マージナル家の事を考えればおかしな事をするわけには行きません。

だからと言ってもヴィンセント様の婚約者になどなるつもりはありませんし、どうした物でしょうか?


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