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性分ではありません  作者: 紫音
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第29話

「私は何もおかしな事は言っておりません。それにルーニィ様が私のどのような噂を聞いて、慕ってくださっているかはわかりませんが私はこのような人間です」

「お姉様、凛々しくて美しいです」


ルーニィ様は私に何を夢見ておられるかはわかりませんが、アメリア様や私の親衛隊を語っている方達からおかしな事を吹き込まれて脳内で都合の良いように変換した事に違いありません。

期待しているような人間ではない事を告げるのですがルーニィ様はそんな事はないと言いたいのか、味方だと考えているアメリア様へと視線を向けます。

ルーニィ様の視線に追いかけるようにアメリア様へと視線を向けるのと彼女は目を輝かせています。


……見なければ良かった。


アメリア様の様子に後悔するのですが優先事項としては低いため、一先ずは無視しておきます。


「……」

「ルーニィ、俺が調べた限り、ルディア嬢はこれでも国のためを思って行動できる珍しいご令嬢だ」


ルーニィ様は私に抱いている幻想を歪めているのはヴィンセント様だとお思いになられたようでヴィンセント様を睨み付けるのですが彼は苦笑いを浮かべながら首を横に振るだけです。


……ヴィンセント様の言葉に何か悪意のような物を感じますが一先ずは無視しておきましょう。


実際、私は国をどうにかしようなどとは思ってはいませんし、ヴィンセント様の性格の悪さには一先ず、目をつぶれば良き皇帝になられると評価もしています。

彼の言葉にルーニィ様が態度を改めてくだされば良いのですがルーニィ様は不満そうに頬を膨らませてしまわれます。


「ルーニィ」

「……お姉様はお兄様に騙されているのです」


……聞き間違いでしょうか? 良くわからない言葉がルーニィ様の口から発せられました。

どうして良いかわからずに眉間にしわが寄ってしまいますが、ルーニィ様は勢いよく立ち上がるとヴィンセント様を指差します。


「お姉様、絶対に私がお兄様の呪縛から解放してします。お兄様、覚悟していてください」

「……ルーニィ様、話がどんどん、おかしな方向に進んでいませんか?」

「おかしな方向になど進んでおりません。お姉様がお兄様の味方をするなどあり得ません。お姉様は権力を盾にする者達から弱い者達を守る正義のお方、それが悪の権化であるお兄様の味方をするわけがありません」


ルーニィ様のヴィンセント様への宣戦布告にどう反応して良いかわかりません。

だいたい、ヴィンセント様を悪の権化と言うのでしたら、私をヴィンセント様のお相手に薦めないで欲しいです。


「アメリア様、行きましょう」

「は、はい。お姉様、失礼いたします」


私がどうして良いか戸惑っている間にルーニィ様はアメリア様を引っ張って歩き出します。

アメリア様は正気に戻ったようで引きずられながらも私に頭を下げてくれるのですがヴィンセント様は無視です。

この件については後でお説教しておきましょう。ただ、問題は他にあります。


「……悪の権化、ヴィンセント様は何をしてきたのですか?」

「俺もここまで言われるような事をした覚えはないな。それにルディア嬢は正義の味方だったのか?」

「私もそのような事を言われるまでの事をした記憶はありません」


完全におかしな方向にやる気を出しているルーニィ様の背中を見送りながら反応に困ってしまったため、残されたヴィンセント様に話しかけます。

どうやら、ヴィンセント様も困り顔です……しかし、私の親衛隊を語る方達はどこまで私を神聖視してくださっているのでしょうか?

私はどちらかと言えば、自分勝手な人間です。自分の楽しい事だけをやって生きていたいと思っています。


「……ラグレット侯爵家の令嬢との対比と言ったところか?」

「サーシャ様と比較されるのはあまり嬉しくはありません。それに侯爵家の娘としては当然の事でしょう」

「そう言える者達がこの国にどれだけいるかだな。ルーニィの言いたい事もわからなくもない」


ヴィンセント様はサーシャ様の事を思いだされたようで小さく肩を落とします。

彼女の名前で何度か彼女や彼女の取り巻きに因縁を付けられていた方達を助けた事はありますがそこまで神聖視される事ではありません。

ゆっくりと首を横に振って見せるとヴィンセント様は深いため息を吐かれます。

その様子から、ヴィンセント様が身分を隠して国内を見て回った時に苦労をしたのだと言う事がわかりますが、その後に理解のできない言葉が続きます。


「ヴィンセント様、それはどういう事でしょうか?」

「ルディア嬢を神聖視している者達の気持ちも少しわかると言う事だ。ルディア嬢を神聖視している者達がルディア嬢と同じように民の事を思ってくれれば、この国は良くなる」

「……それは過大評価でしょう」


私の親衛隊に私のようになって欲しいと言うヴィンセント様ですが……それはそれでおかしな方向に進むのではないでしょうか?

私は自他共に認める変わり者の侯爵令嬢なのです。親衛隊を語る者達が私と同じように畑仕事や農業に従事したら少しは民のためになるのでしょうか?

ですが、イルムの言葉を信じればそのような事をする令嬢は出てこないでしょう。現に以前、アメリア様に1度、一緒にお花の世話をしてみませんかとお誘いしましたが断られています。


「……ルディア嬢、悪いが考えている事が違う。俺は他の令嬢にも農業をやって欲しいとは考えていない」

「そうですか……あの、ヴィンセント様」

「言いたい事はわかるが、しばらく、ルーニィの話し相手をしてくれないか? あまり年の近い友人がいないみたいだから」

「話し相手ですか? それは構いませんが……」


ヴィンセント様は私の考えを否定した後、ルーニィ様の話し相手になって欲しいと頭を下げられます。

皇太子様であるヴィンセント様の頼み事であれば頷かないわけには行きません。ただ、引っかかっているところがあります。


「婚約者にはなりませんからね」

「その件に関してはルーニィの妄言だ。俺も現状、そのつもりはない」

「その言葉を信じます。それでは時間なので失礼します」


ルーニィ様がおかしな方向にやる気を出しそうなため、ヴィンセント様に釘を刺します。

ヴィンセント様は頷いてくださった時、午後の授業を知らせる予鈴が鳴りました。


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