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性分ではありません  作者: 紫音
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第27話

「申し訳ありません。なぜ、そのようになるのかお教えいただけませんか?」


笑顔を作り、ルーニィ様にどのような意味があるかを確認します。

彼女の口から出てくる言葉により、対応方法を変えなければいけません。

どこかでヴィンセント様の婚約者になって欲しいと言う言葉が出ない事を祈っているのですがそれを表情に出す事はありません。


「ダメですか? アメリア様には許可を出しているのに」

「アメリア様の場合は……いろいろと諦めました」


目をうるうるとさせてルーニィ様は未だにヴィンセント様とどこで出会ったか思いだそうとしているアメリア様の名前を出します。

彼女の名前にため息が漏れてしまうのですがこの様子から察するにルーニィ様には他意はなさそうです。アメリア様の事もありますから拒否はできないのですがルーニィ様は下位とは言え皇位継承権をお持ちの方です。そのような方が私をお姉様と呼ぶといらぬ噂が立ってしまいます。


「それならば私も」

「ルーニィ様」


アメリア様が良いのならと前のめり気味で言うルーニィ様ですが、アメリア様とは立場が違うと言う事をわかっていただかなければいけません。

名前を呼び、まっすぐと彼女の顔を見据えます。私の視線にルーニィ様は何かを感じ取ってくれたようでイスに座り直してくださいます。


「ルーニィ様とアメリア様ではお立場が違い過ぎます。私はしがない侯爵家の娘です。それに対してルーニィ様は公爵家のご令嬢なのです」

「……」


臣下に名を連ねる者を慕うような真似をしないでくださいと進言させていただくとルーニィ様は不満のようで口を尖らせました。

これは問題があるのではないかと思うのですが理解して貰うにはどうしたら良いのでしょうか?


「ルディア嬢、ルーニィが公爵家の令嬢だからと言って、そのように言うのは変わり者の侯爵令嬢の名が泣くのではないか?」

「……いつもの事ですが、ヴィンは学園で何をされているのですか?」

「些細な事を気にするな。そのように眉間にしわを寄せては美しい顔が台無しだ」


どうにかして彼女を説得する方法を考えていた矢先、背後からヴィンセント様の声が聞こえました。

神出鬼没の彼の登場に眉間にしわが寄ってしまいます。ですが、ヴィンセント様は気にする事はなく、軽口を叩きながらテーブルを囲むように座ってしまいます。


「……お姉様、なぜ、このような方に同席を許すのですか?」


ヴィンセント様の顔を見て、アメリア様は不機嫌そうな表情をします。どうやら、彼女は彼が皇太子様であるヴィンセント様だと気が付いていないようです。

彼女は私の親衛隊を名乗る怪しい方達と懇意にしているためか、私が正体不明の怪しい男性と懇意にしているのは気に入らないようです。


「ルディア嬢、まだ、アメリア嬢に俺の正体を話してないのか?」

「話しても良かったのですか? 私は約束を守っているつもりですけど」


アメリア様に睨まれて苦笑いを浮かべる彼にため息を吐いて見せます。

私は約束を守っているのであって、責められる理由などありませんし、アメリア様はルーニィ様とご友人のようですから私が話すべきではありません。


「ルーニィは?」

「お兄様は神出鬼没過ぎて、友人に紹介する機会がありません」

「……ルディア嬢、アメリア嬢に説明を頼めるか?」


私に否定されて、ルーニィ様に助けを求めるヴィンセント様ですが味方にはなってくれそうにありません。

それもそのはずです。元々、ヴィンセント様は身分を隠して国内を騎士として歩き回っているのですから、お会いする機会がほとんどありません。

完全に自業自得です。私とルーニィ様から助けがない事にヴィンセント様は困ってしまったようで眉間にしわを寄せてしまいます。

眉間にしわを寄せた後、アメリア様への説明を私に押し付けると店員さんを呼び寄せて軽食を頼むのです。


……仕方ありませんね。


ため息を吐いた後、アメリア様に距離を縮めるように手招きをします。

聞き耳を立てられている場合もありますから、念のためです。

アメリア様はヴィンセント様に疑いの視線を向けながらも私の側に近づいてくれます。


「……アメリア様、あの方がヴィンセント様です」


近づいて来た彼女の耳元で真実を伝えてみるのですが、彼女は何があったのかわからないようで眉間にしわを寄せた後、ヴィンセント様を指差します。

その様子から見て、彼女は私が性質の悪い冗談を言ったくらいにしか聞こえていないように思えます。


「お姉様、ご冗談はお止めください」

「それが冗談ではないので困っているのです。正真正銘のヴィンセント様です」


冗談ではないともう1度、説明してみるのですがどうしても信じられないようで疑いの視線でアメリア様はヴィンセント様を見ます。

気持ちはわからないでもありませんがそれは伯爵家ご令嬢として、そして、皇太子様を前にしてすべき態度ではないと思います。

首を横に振って見せるとアメリア様は私の顔を立ててくれたようで姿勢を正してくれました。


「悪いね。俺の都合でルディア嬢には黙っていて貰ったんだ。素性が知れると面倒な事になるんでね」

「そうお思いでしたら、早く身を固めてはいかがですか? お兄様、ここに素晴らしい方がいるんですから」


ヴィンセント様は苦笑いを浮かべながら、自分の都合で口止めをしていたとアメリア様に話して下さります。

アメリア様は疑いながらも頷いてくれた時、ルーニィ様が余計な事を話されました。


……これは不味い流れかも知れません。


視線でヴィンセント様にすぐに否定するように合図を送ります。

私の視線にヴィンセント様はすぐに気が付いたようですが、何か企んでいるようで口元を緩ませました。


……これは選択を間違えましたね。


私とした事がヴィンセント様の性格の悪さをすっかりと忘れていました。

ルーニィ様は私をお姉様と呼びたいと言う良くわからない慕い方をしてくれています。

ヴィンセント様は私の事を何とも思っていないですが、おかしな虫が近づいてこないために利用する事はできます。

まだ、出会って間もないですがルーニィ様の性格を考えれば嬉々として言い広めるはずです。


……何とかしないと。


ヴィンセント様がおかしな事を言い始める前に手を打たないといけない。時間がありません。

そう思い、必死に頭を動かします。


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