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性分ではありません  作者: 紫音
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第24話

……目的がわかりませんね。


授業が終わってからヴィンセント様が現れる事はありませんでした。

そのため、何事もなく領地内に戻る事が出来、私は領内の花畑でいそいそと趣味である畑いじりを楽しんでいたのですがヴィンセント様の言葉が引っかかってしまい、集中ができません。

現状、婚約を申し込む事はないと言う事でしたが、私もヴィンセント様をそのような目で見た事はないため、一向に構わないのですがそれならば何のために私に近づいているのでしょうか?


なぜ、ヴィンセント様が私に近づいてくるかが想像も付きません。やはり、マージナル家の事を疑っているのでしょうか?

しかし、私は領地運営については口を出すような事はしていませんし、お父様とお兄様が不正をしている可能性は……家族だと言うひいき目で見てもあり得ませんね。


「……わかりませんね」

「お嬢様、芋虫を手に何をお考えですか? 新種でも発見されたのですか?」


ヴィンセント様の目的がわからずにため息を吐いてしまった時、イルムに声をかけられました。

彼女は私の手のひらに載っている芋虫さんを見て、イルムは少し腰が引けています。こんなに可愛いのになぜ……確かに葉を食べられるのは困りますが成長する事で花粉を運んでくれますし、植物を育てるのには必要な事です。


「どうして、腰が引けているのですか? こんなに可愛いですのに」

「……お嬢様、世間一般的な女性は虫全般を苦手としているのです」


……まるで、私がおかしいとでも言いたいようです。

確かにお花を育てる事を趣味としていますがこのお花畑を手伝ってくれている方には女性も多く居ますが誰も芋虫さんを怖がってなどいません。

私だけがおかしいわけではないと思うのですがイルムは私が考えている事をまた読んでいるようで首を横に振ります。


「……納得ができません」

「お嬢様が芋虫を可愛いと言う事に私は納得ができません」

「そんな事を言って、芋虫が蝶になれば可愛いとかキレイとか言うんでしょう」

「それはそれ、これはこれです」


まったく、芋虫さんは成長すればキレイな蝶になるのに幼虫の時には見向きもしないだけではなく、毛嫌いするのはどうなんでしょうか?

非難するように言ってみるとイルムはそんな事は知らないと言いたいのか視線をそらします。

その様子にため息が漏れるのですがイルムの言う通りなのか、一緒にいる領民の女性達は彼女の言葉に頷いています。


「それでお嬢様は何をお考えになっているのですか? 私の目には集中できていないようにも見えますが」

「……ヴィンセント様が何をしたいのかがわかりません」

「何をおっしゃられているのかわかりません」


芋虫さんをお花畑より離れたところに逃がして戻ると休憩の準備を終えたイルムに問いただされます。

付き合いの長い彼女相手に嘘は付けない物だとため息が漏れてしまうのですが、彼女は鋭いところもあるため、意見を求めようとする。

ヴィンセント様の名前にイルムは何を言っているのかわからないと言うようなため息を吐きます。

彼女の様子は私がヴィンセント様の気持ちがわからないと言いたげにも見えるのです。ですが、当の本人から現状ではそのような気はまったくないと言われているのです。


「……ヴィンセント様が今日も学園に現れて、私におっしゃって行ったのです。私を婚約者にする気は無いと」

「そうですか……それでお嬢様は言葉通りに受け取ったのですか?」

「そうですね。私は知っての通り、芋虫さんを可愛がる変わり者の令嬢ですから、興味などないと言う事でしょう」


はっきりと言われたと告げるのですがイルムからは呆れたとため息を吐かれてしまいました。

その態度は侍女としてどうかとも思うのですが、彼女に居なくなられては面倒なため、糾弾するような事はありません。

ただ、そのままにしているのは悔しいため、嫌味の1つは吐いておきます。ですが、彼女も私と付き合いが長いため、気にした様子はない。


「くだらない事を言わないでください。それで、お嬢様はヴィンセント様に婚約者にするつもりはないと言われてどう思ったのですか?」


……どう思ったか? どう思ったかと言われると胡散臭いとしか思えませんでしたよ。

それを口に出そうとするのですが私の表情を見たイルムは大きく肩を落とします。

私の考えている事が間違っているのでしょうか?


「……どう思ったと言われると胡散臭いとしか」

「がっかりしたとかはないんですか? 恋の駆け引きだとは思わないのですか?」

「……恋の駆け引き? それは何ですか。ヴィンセント様は嘘を吐いておられなければ皇太子様ですよ。私はしがない侯爵令嬢。皇太子である彼が婚約者になれとおっしゃられるのでしたら拒否権などないでしょう」

「ヴィンセント様はそれではイヤだと考えているのでしょう。ヴィンセント様は婚約と言う形より、お嬢様に皇太子である自分ではなく、ヴィンセント様ご自身を好きになっていただきたいと思ったのではないでしょうか?」


彼女が何を言いたいのかわからないため、素直に思った事を口に出します。

イルムはまるで私の事が鈍いと言いたいのか、わざとらしいくらいに大袈裟なため息を吐いて見せます。完全にイルムの目線から言えば私は恋愛弱者です。

ただ……付き合いが長いため、彼女が恋愛巧者と言える部類の人間でもない事は知っています。ですから、イルムに言われるのは納得がいかなかったりもします。


「そんな事を考えて居られますかね。だいたい、恋愛感情を抱けと言われましても……好きになる要素が見当たらないのですが、何より、胡散臭いですし」

「お嬢様、皇太子様に向かって胡散臭いと言うのはマージナル侯爵家令嬢としてどうかと思いますが」

「……確かに言われてみればそうですね。気を付けましょう」


ヴィンセント様の口ぶりからは私が彼に好意を抱くようになる事を待っている素振りがまったく見えません。

それに彼の場合は何かを企んでいるようにしか思えずにイルムの考えは間違っているのではないかと否定して見せるのですがマージナル家令嬢として問題があると言われてしまいました。






……少し気を付けてみましょう。


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