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性分ではありません  作者: 紫音
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第15話

「誤魔化すですか?」


もう少し時間が経てば先生が現れて授業が始まるはずと考えてとぼける事にしてみました。

ですが、それを挑発ととらえてしまったようでサーシャ様の額の青筋はぴくぴくと動いています。

その様子に失敗したような気がするのですがフォノスがサーシャ様の相手をしないのは彼女に原因があるためであって私とはまったく関係がありません。


「私とフォノス様の事を邪魔しているのでしょう? ある事、ない事を吹き込んでフォノス様が私に会わないようにするのは止めてください」

「……意味がわかりません。私はフォノスにサーシャ様の事は何も言っていません。だいたい、アルフレッド様が後継者から外されてすぐにフォノスに乗り換えるのはどうかと思いますよ」


反応に困っている私にサーシャ様は敵意を剥きだして言ってくるのですが私は完全に部外者なため、そんな事を言われても困ります。

実際問題、フォノスからサーシャ様を遠ざけたいとは思っているわけですが、ヴィンセント様の件ですっかり忘れていた手前、現状では何も言えないのです。

ただ、フォノスが困っているでしょうから、少しはサーシャ様から距離を取るようにしたい。

そのため、彼女の行動を少しいさめておこうと考えたのですが失敗してしまったようです。

私の言葉で彼女の顔は真っ赤に染まって行くのです。どうやら、私がサーシャ様をバカにしていると思ったようです。

実際、言葉の通り、恥知らずな行動だとは思うのですが彼女もラグレット家の考えで動いているとすれば仕方ないのかも知れません。

ただ、ラグレット侯爵家当主の命令と言うよりは妙な敵対心を感じます。


「ルディア様は私の事を侮辱にしているのですか?」

「侮辱するつもりはありませんが、常識的に考えてはいかがでしょうか?」


失敗したと思っても、もう後には引けない感じです。

突き刺さるサーシャ様からの敵意にため息が漏れそうにはなるのですが顔には出さずに恥知らずだと突きつける。

若干、もうどうにでもなってしまえと言う考えもない事はありません。フォノスを守ると考えればこの場でサーシャ様を叩き潰しておいた方が良いとも思えます。


「常識? 私はラグレット侯爵家の娘、条件の良い方を婚約者に選ぶのは当然の事でしょう? あなただって、そうやって婚約者を探しているのでしょう? 多くの婚約の申し入れが来ていると私の耳にも届いていますわ」


……どうやら、話が伝わりそうにありません。確かに貴族としては間違っていない考えなのかも知れません。ですが、私は別に婚約者を選別しているつもりはないのです。

むしろ、個人的にはどこにも嫁ぐ事なく、マージナル家の領内で引きこもって領民達と好きな事だけをやっていたいです。

自分で言うのもなんですが価値観が違いすぎるため、彼女の言いたい事が理解できません。

それにわかってはいましたが、これではあまりにアルフレッド様がみじめです。別に彼の事を大切になど思っているような事はありません。当然、男性としての魅力はまったく感じませんが幼なじみとしての情くらいはあります。

……あれでしょうか? バカな子ほどかわいいと言う事でしょうか?

自分の中に母性的な何かを感じてしまい、まだ、そんな物を出すには早いと考えて首を大きく横に振ります。

そんな私の姿にサーシャ様からは変な人を見るような目で見られてしまいました。


「婚約者を選んでいないとでも言うつもりですか?」


どうやら、サーシャ様は私が首を横に振った事を婚約者の事だと思ったようです。

私的にはその勘違いの方が都合は良いため、小さく頷いて見せると侯爵家令嬢として間違っていると言いたいのか、彼女は私の事を鼻で笑いました。

この様子を他の貴族や有名商家の子息達も見ているのにその態度はどうかと思うのですが彼女の目には侯爵家令嬢として格下の貴族や商家の子息は問題外と考えているようで、この場にいる者達の事など完全に見下しているようです。


……もう少し、人々の噂と言う物に耳を傾ける事ができないのでしょうか?


多くの方達に変わり者と言われている私は言える立場にあるかはわずかに疑問が残りますが、淑女としての良い噂が広がればこの学園に通っていない他の侯爵家の子息や公爵家の方達からも婚約の申し入れだってあるかも知れないのです。それにこの国にはヴィンセント様と言う皇太子様だっておられるのです。

条件の良い婚約者を探したいのならもう少し努力をして見せるべきです。ただ、それを私が彼女に話してもきっと耳を傾けてなどくれないでしょう。


「私は婚約者を選んでいるつもりはありません。私の婚約者を選ぶのはお父様とお兄様に任せてありますので」

「本当にそんな事を思っているのですか? そうやって、フォノス様をだましているのですね」


自分で気が付いてくれる事を祈って、婚約者の決定権は自分になどない事を伝える。

ですが、私の言葉をサーシャ様はまったく信じてくれていないようで睨まれてしまいました。


「いえ、私はフォノスをだましてなどいません」


だめです。話が通じそうにありません。だいたい、フォノスはサーシャ様がアルフレッド様に近づくために何をしていたかを見てきたのです。

良く恋は盲目だと言う話は聞いた事がありますがそれは本人同士の問題であって、それを周りの人間がどのように見ているかなど考えないのでしょうか? ……考えられていたらこのような状況にはなっていませんね。

ため息が漏れそうになるのですが、ここでため息を漏らしてしまえばさらに面倒な事になります。


「嘘を吐かないでいただけますか?」

「嘘を吐く理由がありませんわ。私はフォノスの事を実の弟のように思っていますが、彼がどのような女性を伴侶に選ぶかは彼自身が決めるべきだと思っています。それより、席に戻ってはどうですか? このままでは授業が始まりませんよ」


すでに私がフォノスに何かを吹き込んでいると思い込んでいる彼女は聞く耳など持っていない。

この状態での説得は無理だと判断した時、先生が教室の中に入ってきてくれました。それを盾に席に戻るように提案してみるとサーシャ様は不機嫌だと身体で表すように大股で自分の席に向かって歩いて行きます。

令嬢としてその態度はどうなのかとは思いますが一先ず、切り抜けられた事に胸をなで下ろすのですが帰りに捕まらないようにしなければいけないとも思いました。


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