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性分ではありません  作者: 紫音
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第13話

「……ヴィンは悪巧みが好きそうですね」

「それに関して言えば否定はしない。ただ、俺だって場所は弁えているさ」

「それでしたら、ここでも気を付けて欲しいです」


彼の表情は皇太子様と言う立場的に問題があるのではないかと思います。

人前でそのように笑うのは控えていただきたいため、注意を促すのですが普段はもっと気を使っていると言われます。

公の場ではないとは言え、曲がりなりにも私をお茶に誘ったわけですから男性としてエスコートをしていただきたい。

このような場でのお茶会と言う事でヴィンセント様から婚約の申し入れはないでしょうが皇太子として恥ずかしくない行動をして欲しい物です。


店員が運んでくださった紅茶へと手を伸ばします。

一口、紅茶を飲むとそれなりに緊張していたようで小さく息が漏れました。

はしたない事をしてしまったかと顔を上げると私の顔を見て、ヴィンセント様はニヤニヤと笑っていられます。


……失礼な方だと思いますが怒るわけには行きません。

女性の顔を覗き込んでニヤニヤと笑うのはどうなのかと思いますが彼は皇太子様、私が何か失礼な事を言ってお父様やお兄様にバツが及んではいけません。


「それでヴィンはなぜ、私をこのような場所に誘ったのでしょうか?」

「なぜか? 噂に聞いていたマージナル家のご令嬢に興味が湧いたからだな」


彼も知る通り、私は変わり者と言われている身です。そんな私をなぜ、ヴィンセント様はこのような場所に誘ったのでしょう。

どうも、ヴィンセント様の考えがわからないため、聞いてみるとため息を吐かれてしまいました。私は何かおかしな事を聞いたのでしょうか?


「興味ですか? それは珍獣的な何かでしょうか?」

「……ルディア嬢は鈍いとは言われないか?」

「特に言われた事はありませんね」


興味と言われても何か企んだように笑うヴィンセント様の事ですからおかしな事を企んでいるとしか思えません。

疑いの視線を向けて聞いてみるともう1度、ため息を吐かれてしまいました。

鈍いなどと言われた事はフォノスがため息を吐いていたのを見ていたくらいです。ただ、私はフォノスの想いを知っていて気が付かないふりをしていたのですから鈍いわけがありません。


「婚約者がいたわけだから仕方はないか」

「何か?」

「いや、別に珍獣的な考えでお茶に誘ったわけではない」


とりあえず、珍獣的な興味で私をお茶に誘ったようです。それなら、何でしょうか?

お父様とお兄様の事を聞いていましたし、領地運営の事で聞きたい事があるのでしょうか?

……それなら納得ができる部分もあります。ですが、国政には多くの方が関わっているのですから、領地を立て直すために多くの考えが出てくるはずです。


「領地運営などのお話なら、私に聞かずにお父様とお兄様に直接、聞かれてはどうですか? 私を介する必要などありませんよ」

「……鈍い」

「鈍くなどありません……申し訳ありません」


この国の皇太子様なのですから望めば簡単に面会は出来るはずです。

公の場に出てこないためか、そのような知識がないと言う可能性も否定はできません。私達はヴィンセント様の臣下なのです。

城に呼びつけてみてはどうかと言ってみるとまたもため息を吐かれてしまいました。私はバカにされているのでしょうか?

彼の笑顔には悪意が見えるためかどうしてもバカにされている気しかしない。

我慢していたのですがどうやら限界が来てしまったようで不満を漏らしてしまいました。

不味い事をしてしまったと思い、すぐに頭を下げます。


「別に気にする必要はない。今の私はただのヴィンだからな。むしろ、侯爵家令嬢様にこのようにお話をできる立場ではございませんから」

「……良く言いますね」


ヴィンセント様はこの場では私の方が立場は上だと言われるのですが、その口元はまたも何かを企んだように緩んでいます。

その姿にため息が漏れてしまいました。ヴィンセント様はまったく気にもされていないようで楽しそうに笑われます。


「ただのヴィンだと言われますが、どうして、ただのヴィンでいようとしているのですか?」

「どういう事だ?」

「なぜ、病弱だと言う噂があるのですか?」

「気になるか?」


お茶をすると言っても私から話すような内容は特になく、ヴィンセント様が公の場に出てこない事に理由があるのかと聞きます。

その様子にヴィンセント様は口元を緩ませました。気になるかと言われてしまえば気になります。

小さく頷いて見せるとヴィンセント様はそうかと小さく頷いた後、表情を引き締めました。


「国を継ぐためには多くの物を見て学ばないといけないからな。姿を隠していろいろと見ていたわけだ。久しぶりに戻ってきた時にあの騒ぎを見てな」

「そうなんですか。ずいぶんと危ない事をされていますね。素性がばれてしまったらどうするんですか? それで国はどうでしたか?」

「……そこに食いつくのか? まあ、噂通りなら仕方はないか。さすがは変わり者のマージナル侯爵家のルディア嬢だ」


病弱と言う形にして国の中を見て回っていたと言うヴィンセント様におかしな人だなと思いました。

ただ、国の様子を見てきたと言うのには興味がひかれました。マージナル家領地以外でどれだけの領地の運営が上手く行っているのでしょうか?

領地運営が上手く行っているのがわずかであればこの国の良く末が不安です。それに領地運営が上手く行っている領地があるのでしたら、マージナル家の領地運営の参考になるかも知れません。

そう思い、他の領主が治める領地の話を聞こうとするのですがまたため息を吐かれてしまいました。


「何かおかしいですか? ここ数年の冷害被害などを考えれば当然の事ではありませんか? マージナル家も領地運営は上手く行っているとは言え、冷害被害は受けていますので気になるに決まっているでしょう」

「確かにそうかも知れないが他に気にする事はないのか? ……いや、良い。それでは俺が見てきた領地の話をしようか」


お父様やお兄様の助けになる事は少しでも学んで起きたいのです。

そう思い他の領地の話を聞こうとするとヴィンセント様はため息を吐いた後、見てきた多くの話を私に教えてくださいました。


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