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性分ではありません  作者: 紫音
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第1話

……バカな男。

貴族や有力商家の者達が友好を深めるためや自分の権力を誇示するために行われる舞踏会。

目の前には端正な顔立ちでありながら、考えが足りないバカな元婚約者、そして、私から婚約者を奪った事に満足げに笑っている少女。

多くの人達が集まるその中心で私は婚約者だった男性に別れを切り出されました。ふるふると身体が小さく震えます。ただ、傷心などと言った物ではありません。

笑いをこらえるのに必死なだけです。

元々、婚約者に愛情などを持った事もありません……始めは努力しようとしましたが人格が信用するに値しなかったからです。

そんな男性とどうして婚約をする事になったかと言うと父親同士が古くからの友人だった事やエルグラード帝国(この国)に仕える侯爵家同士と言う事で両家の繋がりを強くしようとした結果です。

性格の不一致とは言え、両家の繋がりの事を考えれば割り切らなければいかなかったのですが、この少女が私の都合の良いようにしゃしゃり出てくれました。

「……婚約を解消すると言う事で間違いありませんね。アルフ様」

「お前のような女に名前を呼ばれると虫唾が走る」

「そうですか。それは失礼しました。アルフレッド様」

考えを変えられても困るため、確認するように聞く。元婚約者である『アルフレッド=バルフォード』はよほど私『ルディア=マージナル』の事がお嫌いのようで忌々しそうな表情をしています。

そんな彼を挑発するように真剣な面持ちをすると私からバカな婚約者を奪えた事に満足をしている少女『サーシャ=ラグレット』は見せつけるように元婚約者の腕に腕をからめて笑う。

ただ、この頭の悪い2人は状況をまったく理解しておりません。

周りから修羅場に見えるこの3人は幼馴染でもあるわけで家禄も同じ侯爵家となっています。

ただ、実質的な領地運営での収入には大きな差があります。

ラグレット家の現当主はバルフォード家の領地に興味を持っていたため、バカな娘をバルフォード家の長子であるアルフレッド様に近づけ、アルフレッド様は簡単にその色香に惑わされてしまった。

……バルフォード家の現状を理解せずに。

エルグラード帝国はここ数年、あまり、天候が良くない。そのために領内から集められる収入が減っている領主達も多い。バルフォード家やラグレット家も領地運営が上手く行っていないのです。

バルフォード家の現当主であり、アルフレッド様のお父上のラグリア小父様は信頼できる方で私のお父様とご友人の事で領地運営の上手く行っているマージナル家から多くの融資を受けています。

いくら現当主同士が友人だとは言え、婚約者を無視して不貞を働いた長子がいる家に融資を続けて行けると思っているのでしょうか。

「わかりました。婚約を解消するように私からもお父様にお話ししておきます。アルフレッド様が不貞を働いたのですから、そのような方とは添い遂げられません」

笑うのを必死にこらえながら、この修羅場を眺めている者達に婚約解消の原因はアルフレッド様にある事を宣伝する。

本来ならば、バルフォード家の名誉のためにも私の宣言に何か言わなければいけないのにこのバカな2人は私を見下ろして薄ら笑いを浮かべているのだ。

……小父様のような方からどうしてこのような頭の悪い方が生まれたのでしょうか? まあ、仕方ありませんね。

小父様の奥方様、つまりはアルフレッド様の母親はラグレット家現当主の実妹であり、この2人は従兄妹になる。小母様もこの2人と同様に他者を見下す事や自分を着飾る事に重きを置く人だ。

当然、ラグレット家の現当主を同じ、血脈と言う物で判断したくはないのだけど、ここまで頭の悪い事をされてしまえばため息しか出てこない。

「それでは失礼します。アルフレッド様」

この2人を前に笑いをこらえているのも限界が近い。この2人の前でさすがに笑い出してしまっては周囲への心象は悪い。あくまでも私は婚約者が不敬を働いて捨てられた令嬢を演じなければいけないのだ。

傷ついていると言うのを周囲に見せるように声量を落として頭を下げてうつむいたまま、舞踏会を後にする。

本当に婚約者がバカな男で良かったと思いました。


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