探偵部誕生 その2
入学式の次の日の朝、ヒダたち三人はもめていた。
「おい、おれはヒダの部活に入るとは言ってねえぞ。」
「てゆ~か、あたしなんてヒダが新しい部活作ることもよく知らなかったんだけどっ!」
「だってお前らだって入りたい部活なんて特にないだろ。鉄道部だってねェし、被服部だってねェし…」
「そういう問題じゃねえ!なんでおれらに探偵部のこと確認しなかったんだって言ってんだ!」
「メンディかったから。」
「も~うっ!ヒダ~~~!」
「じゃあそのかわり、お前らの気になること調べるの手伝ってやるってェのはどうだ?」
「う~ん。」
カイジとコマチは顔を見合わせた。
「しょうがない。入っていいけど夏の18きっぷの旅は協力してくれよ。」
「わかったわ。そのかわり今度うちで服の改造手伝ってね。」
「よし、交渉成立ッ!」
早速その日の放課後に顧問の上野が部室の案内をした。
「ここが君たちの部室だ。前は茶道部が使っていた。」
「すげェ。畳敷きじゃあねェか!」
「さすが元茶道部の部室ね。茶道具がそろってるわ。」
「先生、茶道部が置いてったもの使いまわしていいですか?」
「いいと思う。」
「これで依頼しに来た人にお茶を出すことができるわね。」
「本物の探偵事務所みたいじゃんか。なあ、ヒダ。」
「…ムッ!」
「どうした?ヒダ?」
「こりゃあなんだ?」
ヒダの視線の先には雑貨屋のロゴがついた段ボール箱がある。
「ただの段ボール箱だぜ?」
「いや、この段ボールだけ妙に新しい気がしねェか?しかもガムテープで留められてるぞ。」
「あたしこの雑貨屋さん知ってるわ。今年のお正月にできたばっかりのお店よ。」
「コマチ、やけに詳しいなァ。」
「だってあたしその店で服のアクセサリー買ってるもん。」
「茶道部の連中がコマチ御用達のうさんくせェ店で何かを箱買いするなんておかしいと思わないか?」
「それどういうことよっ!でも確かにまともな商品は売ってないとこよ。」
(一回コマチのショッピングに付き合ってみたいな)
とカイジは思った。
「先生、茶道部っていつまで活動してたんですか?」
「確か去年は三年生しかいなかったから、去年の夏休みまでかな。」
「じゃあ茶道部のものじゃないのかしら。」
「う~ん。怪しい。思い切って開けてみるか。」
ヒダはガムテープをビリリッと破った。意外と軽く破けた。
「これ、何回か開けられているのか?」
そして段ボールのふたを開けた。中には大量のタバコらしきものがあった。
「これはタバコか?」
「違うわ。これマジック用の火を使わないタバコよ。あの雑貨屋さんで売ってるの見たことあるわ。」
「何十回マジックするつもりだったんだ?ヒダじゃなくても飽きちゃうぜ。」
「先生、これ不要物ですよねェ。」
「ああ、だから回収する。よし、じゃあ先生がこのエセタバコの謎を解くことを依頼しよう。」
「初仕事だ。行くぞ二人とも。探偵部、出動ッ!」
「…ヒダ張り切ってるな。」
「そうね、メンディーわ。あ、ヒダ語うつった。」
部室が和室っていいですよね。
い草のにおいが年中漂っていてさわやかだろうなと思います。