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ハルノオト  作者: なた
5/5

「ト」

もうすぐ1年ですね。

これからはもっとサクサクかけるようにしたいです。

 放課後の校庭は部活に励む声が響き渡っている。

美術部からは決して放たれることのないその声に、ひとり「青春だな」と感じる。

 ふと上を見上げると、頭上の桜の木とすじ雲のかかった青空がキレイに絵になっていた。

肩にかけていたスクバから、スケッチブックと水彩ペンを取り出す。

常に持ち歩いているおかげで、こういうときにいい風景を記録していける。

有意義な時間。


「ホントに絵、好きなんだな」


 突然の声に、上げっぱなしの頭を下げる。

手が止まりペンの進みがなくなる。

「春くん」

声の主に思わず笑みが出る。

 ……きっと、これが私の気持ち、なんだろうなって。

「早いね、部活は?」

「今日は休み。……七海は?」

「私は、コンクールに出す用のスケッチがしたくて」

 七海、って下の名前で呼ばれるのは、なんだかこそばゆい。


「……春くん」


桜に目を奪われていた彼の視線をこちらへ戻す。

 聞くんだ。

 ちゃんと、言うんだ。

「昨日の続き、聞かせて……ください」

「昨日?」

「……なんで誘ってくれたのって、やつ」

少しずつ、彼の顔が見れなくなっていく。

春くんは「あー」と言って、黙り込んでしまった。

 ああ、嫌だな、この沈黙。

肩が震える。

抱えていたスケッチブックが、腕の締め付ける力で体に密着してくる。

「……俺は、」

ぽつ、と春くんが口を開いた。


「七海が、好きだ」


「…………え?」

思わぬセリフに、顔を上げる。

いや、『思わぬ』なんかじゃないか。

 ……だって、期待、してたんだから。

 昨日も……さっきだって。

なにも返せない私に対して、彼は淡々と続けた。



「……覚えてないかもだけど、小学生の時会ってんだよ、俺、七海と。」


「絵の展示会みたいなので俺の絵が入賞して、飾られてんの見に行ったんだ。」


「そしたら奥の方に綺麗な花の絵が飾られてて……綺麗だなって、同い年が書いてるようには全然見えなくて」


「でも、そのあと突然、自分の絵が恥ずかしくなって、その場にいるのも嫌になって……もう帰ろうかと思ったらさ、」


「俺の絵を見て綺麗、って、かっこいいって、言ってくれてる子がいて」


「周りから呼ばれてるその子の名前はさ、その、花の絵の子と同じ名前で」


「……なんだかそれだけで、すげー嬉しくなって」



いつもとは違う、どんどんと言葉を紡いでいく彼に対し、私はただ黙ってそれを聞いていた。

次第に彼の頬が赤く染めあがっていっているような気がして。

それに合わせて、鼓動がバクバクと音を立てていて。

それでも彼は、私を真っ直ぐに見つめて、話を続けた。


「中学入ってさ、美術室の前に貼られてる受賞作品みたいなのの中に、その子の名前が、あって」


「たまたま同じ名前かも、なんて思ってたけど、部活の時に美術室の前通って、中覗いてみたら、さ」


「いたんだよ、その子が」



「七海が」



「2年なって、クラス同じなって、すっげー嬉しかった」


「…………」



「……?」

突然何も言わなくなった彼にに、視線を向ける。

すると、ずっとこちらを見つめていた眼は、少しだけ逸れ、赤く染まる顔を隠すように腕が出ていた。

「七海」

「……はい」

「好き、だ」

「……うん」


「私、も、好きです、春くん」


「……!?」

私の返答に、春くんの顔が硬直したのがわかった。


ああ、なんでだろう。

告白されるより、する方がこんなに緊張するんだな。

想いを口にしただけなのに。

ただ返事をしただけなのに。

こんなにも震えが止まらないのはなんでだろう。


「え、と、つまり……」

付き合ってください、なんて簡単な言葉もうまく出てこない。

頭の中が真っ白になっていく。

「えと、あの、…………………っ!」

「俺と、付き合ってください」

あたふたとする私の頭に、ぽん、と優しく手が置かれた。

見上げると、彼がやさしい笑顔をこちらを見ていた。


「……はい」


思わずこみあげてくる涙を抑え込み、精一杯の声で答えた。



春にであった男の子は


時に冷たく


時に優しく


綺麗な音を奏で


私の世界を明るくした

見てくださった方、ありがとうございました!

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