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ハルノオト  作者: なた
4/5

「オ」

春までに終わらせたかったです。

夏になっちゃいました。

昔から、クラス替えは嫌いだった。


仲の良い友達と離れたり、

大好きな先生が変わったり、

1年がかりで作り上げたクラスが消えてしまったり。


中学2年目の春。

親友の真由と同じクラスになれて、最高だと思った。


教室に入ってきたあきらかに不機嫌そうな男子が隣に座った途端、最悪だと思った。


1日目。

校門の桜を見ている彼と、何気ない会話をした。

会話ともいえないような会話。

2日目。

消しゴムを貸した。

そのお礼に傘に入れてもらい、家まで送ってもらった。

3日目。

怒られた。少し怖かった。

4日目。

謝った。仲直りできた。

11日目。

祭りに来た。

告白された。


初めてだった。

出会ってたった3日で喧嘩したのも、

11日で告白されたのも。


なぜ?なぜ?なぜ?


脳が機能を失い頭が真っ白になる。

そんな頭をよそに、私の顔は熱を纏い真っ赤になっていた。


「春…くん?」

聞き返すように、彼の名を呼ぶ。

「……」

返事がない。

月明かりに照らされて見えた彼の表情は、私のそれとは比べ物にならないくらい焦っていた。

「え、あ、いっ、いや、今のはっ」

慌てて訂正をしようとする彼の顔はさらに赤くなる。

「……忘れて、くれ」

少し落ち着いた口調でうつむきながら言った。

よくわからない。

とりあえず、

「間違いだったってことでいいんだよね」

ぼそ、とつぶやく。

「あ、いや―――」


「あれ?なにやってんの?」


聞き覚えのある声。

なんとなくだが、今は来てほしくなかった。

「七海――と、渡瀬じゃん!?」

「瀬戸?」

遥だ。

「あれ、何で渡瀬…家こっちだっけ?」

「いや、違うけど」

淡々と会話をする遥と春くん。

知り合いだろうか。

「つか、七海何してんの?」

「え、あ、いや」

こちらへ目を向けたかと思うと、何かを理解したかのように「ふ~ん」と言った。

「今日会ってたのって、渡瀬だったんだ」

それがなんだと言い返したくなったが、春くんの手前、口をふさぐ。

「渡瀬、七海と仲良かったんだね、以外」

「同じクラスだし」

「同じクラスでもお前女子としゃべんないじゃん」

「席となりだし」

「席となりだからってお前と仲いい女子知らないけど」

すっかり話し出す二人は、私の思う「友人」ではない、どこか険悪そうな雰囲気を醸し出している。

「……ま、いいや。」

数秒の沈黙の後、痺れを切らした遥が、春くんを軽く睨みつけて、言った。

「七海のこと、送ってくれて、サンキュ。じゃあ」

「ちょ、遥、」

ひとりでスタコラとその場を立ち去る遥。

「あの、春くん、今日ありがとね、気を付けて」

「あ、あぁ…」

申し訳ないと思いつつも、意味不明に不機嫌な幼馴染を放置できるわけもなく、私は春くんに別れを告げた。


「遥、何怒ってんの」

追いついてすぐ、彼にそう声をかける。

「………別に。」

あからさまに目を合わせようとしない彼に、少しずつ怒りがこみ上げる。

「あきらかに不機嫌じゃん。私なんかした?」

「なんでもねーよ。……お前じゃねーし」

ぼそ、とつぶやいて聞こえた声はつぎはぎで、「なに?」と聞き返すと「なんでもねーって」と返されてしまった。



 翌朝、校門の近くで春くんを見つけた。

いつもどうり挨拶をしようと後ろから駆け寄る。

「は~る、おはよー」

 彼に声をかけたのは、私ではなかった。

 声の主に対し、春くんは、「おお」と返す。

「どしたん?随分暗いじゃん」

「…そんなこと、ない」

わずかに聞こえてくる会話に緊張が走る。

やっぱり、昨日のこと、気にしてるんじゃ…。

 あの後、さらに機嫌を損ねさせるのも嫌で遥には何も言えなかった。

ただ、家を出てすぐに見かけたときは、いつもと変わらずに元気だったから、あっちはあまり気にしてないのかも。

 そこでふと、昨日春くんに言われた言葉を思い出す。


『好きだから』


『七海が、好きだから』


 あの言葉の真意は告白なんかじゃなくって。

一瞬でもそれに期待してしまった私は、きっとすごく恥ずかしい。

「ん?」

 そもそも、あれはどういう間違いだったんだろうか。

たしか私は、「どうして誘ってくれたの?」とかなんとか聞いた…はずだ。

 その返事が「好きだから」?

いや、これは間違いなんだっけ。

 じゃあ、本当はなんで?


なんで、私を誘ってくれたんだろう。



「そりゃあ、好きだからに決まってんじゃん」

 まるで当然かのように理沙ちゃんは言った。

「いや、それはないって!」

慌てて彼女の言葉を訂正する。

 昼休みの屋上に人気はなく、少し大きな声を出したくらいじゃなんてことなかった。

「なんでさ。好きって言われたんでしょ?」

「そうだけど、それは間違いって本人も言ってたし」

「そうとはかぎらないよ~」

 やけにニヤニヤとしながら私の顔を覗きこんでくる。

「なんで理沙ちゃんはそう思うの」

 少しムッとして聞き返す。

すると理沙ちゃんは口をあんぐりあけた。

「七海はわかってないな~。そんなに気になるなら本人に聞けばいいんだよ。『どうして誘てくれたの?』ってさ、もう一度。」

「そんなこと言ったって~…」

 もう一回あの緊張感を味あわなければいけないのは嫌だな…。

 少し黙りこむ私に理沙ちゃんが追い打ちをかけるように言った。

「そもそも、七海は渡瀬のことどう思ってんの?」

「ふぇっ?」

驚きがおかしな声とともに口からこぼれる。

「好き?嫌い?」

「ん~と…」

「期待しちゃったんでしょ?好きって言われたとき。」

「…どうかな、わかんない。」

自分で自分の気持ちがわからなくなり、顔を伏せる。

 理沙ちゃんは「う~ん」とうなるち、何かひらめいたように私を見て言った。


「うん、やっぱ本人に聞いてみよう!」

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