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すべてを包み込むかのような闇だった。優しく眠れと囁くような、夜だった。
星が瞬いている。自らの輝きを誇りに思っているようで、自信に溢れた美しい光だった 東の空を見上げていた。
「真ん中のかわいらしい星は、あの子ね。四つの星が守るように囲んでいる。
……ああ、でもひとつだけ、近づこうとしているわね。焦がれている色をしているわ。あの子が恋しいのね」
くすくす、と、ミリオンが小さく笑う。
コルバルトは複雑な顔で、空を見上げた。
「みてごらんなさいな、コルバルト。あの五つの星は、まるで東の空を守っているかのようだわ。いいえ、事実、そうね」
ミリオンは微笑み、眼を閉じる。
彼らの勇姿が鮮明に思い出される。なによりも、あの美しい桜の乱舞が強く浮かぶ。
「国に帰りましょうか」
しっかりとした口調でコルバルトが言うとミリオンは眼をつむったまま頷いた。
足下でまるまっていた、ヴェスタとイシュタルが、小さく鳴いた。
コルバルトは星を見上げたまま、眼を閉じる。
そしてそっと、四つの星に囲まれた小さな星に、口づけした。
マタ、オイデ。
精霊の声が、聞こえた気がした。




