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「ここで核を見つけるのは一苦労だぞ」


 忌々しげに呟く観咲に、危なげな足取りで近づく。


「ちょっと、少しは説明しなさいよね」


「結界にもいろいろある。護身用のものからこういった特定の場所の空間を歪ませるようなやつまで、様々だ」


 この結界は、先へ進まぬよう空間を歪ませているものだ。

 例え観咲達が今きた道を戻ったとしても、この場所に出ることになる。

 先を急ぎたくともできないので、観咲はミリオンに説明してやる。急いでいれば、こんな質問など無視していただろうが。


「こういった結界には核になるものがある。大抵鏡や玉…宝石などを使う。それを破壊すれば、内側からでも結界を破れる」


「核を見つけられなければ?」


 そんな魔法陣は聞いた事がない。やはりこの国は妙だ。


「…外側からでも破壊されない限り、永遠にこの空間を彷徨い続けることになる」


「ケッカイをつくったモノを消せばいいじゃない!」


 ふぅ、と観咲は疲れたため息をついた。

 なんで俺がこんな素人な質問に答えなくちゃならないんだ…?


「結界を張った者は自在に出入りできるから眼の前にでも現れてくれれば、退治することも可能だ。だがこういった結界は、張った者が成仏しても結界を構成する力は消えない。消せるのは張った本人だけだ」


「なによそれ! 冗談じゃないわっ さっさとその核とやらを探さないとっ」


 お前が質問しなければもっと早く探し始めていた。と内心呟き、涼を振り返った。


「水で探すことはできないか?」


「やってみたが、見つからないと言うんだ」


 苛立たしげに応えた。

 本当に水の預かり知らぬ場所に核があるのか、それとも見つけていても答えないだけなのか、水を全面的に信用できないこの状態が涼には苛立たしいのだ。


「そうか…。さて、どうするかな。普通に探してわかるようなところにあるとも思えんしな」


 気楽な口調だが、放つ気配と一致しない。 表情には明らかな焦りが浮かんでいた。

 それまで黙って俯いていた弓月が涼を見た


「水で移動することはできませんか」


 睨みや軽蔑の視線しか向けた事がなかった涼が、初めてそれ以外の目を向けた。


 驚き。


 水の道を使うことの危険さは、さきほど言った。それでもあえてそう言うのは、危険を承知しているということだろう。

 観咲もまた弓月にならって涼を見た。

 二人共、覚悟ができているらしい。

 どこにあるかもわからぬ核を探すより、危険を冒してでも早く、美夜のもとへ行こうとしている。

 涼は頷いた。


「水の道に結界など効かぬ」


「ならそれでいこう」


 なんでもないことのように、観咲は言う。

 表情から焦りは消えた。

 打つ手もなく立ち往生するより、自分が多少傷ついてでも早くたどり着けるほうがいい


「ちょっとっ なんなのよそれは!」


「別にあなたも着て欲しいとは言っていませんよ。むしろ邪魔ですから、そこで大人しく待っていてください」


 ミリオンのかん高い声にいい加減我慢しきれなくなり、弓月が冷たく言い放つ。


「あたしも行くに決まっているでしょ! なによっ 性格ブス」


 ぴしっ、と弓月のこめかみに青筋が立つ。


「おまえは駄目だ」


 弓月が反論しかけたのを無視して、涼が言い切った。


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