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「悲しいことはありませんでしたか?」


 耳元で低い声が尋ねてきた。

 ぴく、と美夜は反応し身体を硬くする。


「…なぜ?」


 弓月ゆみづきは深い瞳で美夜を見返す。


「目が充血していますよ。それに寝不足のようだ」


 赤いと指摘された目を伏せる。


「母が…死んでしまったものですから…」


 無意識のうちに胸を押さえる。

 手当てを終えた弓月は薬箱をしまう手を止めた。


「…すみません」


 静かな声に、首を振って応えた。


「あれ、桜屋敷…アクセサリーなんかつけてるのか」


 暗くなりかけた雰囲気のためか、観咲みさきは話をかえた。


「あ…これ…」


 鎖を引きベビーリングを取り出す。


「お、ベビーリングか。それ誕生石なんだよな。えっと…トパーズは何月だったっけ」


 母さんの誕生日は七月二十日。だから七月の誕生石なんだろう。


「十一月ですよ。十一月生まれなんですか」


 弓月がやわらかに言った。このベビーリングを美夜のものだと思っているらしい。


「え…え。私は十一月生まれですけど…けどこれは…」


 母のもの。

 美夜は北の地で両親と兄が心中し取り残された。身元を証明するものをなにひとつ持っていなく、なぜか名すら言えなかったらしい 名前を母さんはつけてくれた。誕生日も母さんが決めた。


「私のものであるはずが」


 指輪を凝視した。その裏に何か刻まれていたのだ。


「11/2 …」」


 誕生日を示すその数字は、美夜の誕生日と一致した。母が定めた誕生日…身元を証明するものはないはずなのに何を根拠に定めたのか。

 そしてその横に刻まれているローマ字。


 misaya H



 名前、であった。


「そんな・・!」


 あの日、なぜ名を言えなかったのか。なぜ目が痛かったのか。なぜ髪の色が違うのか。 指輪は鍵。

 封じられた記憶を呼び起こすためのもの。


「嫌!」


 鎖をつかみ激しい勢いで取る。そして外へ投げ捨てた。


「おい」


 眩暈がした。観咲の声が遠い。

 ネックレスに引っかけたのか、髪のゴムが外れ髪がほどける。

 弓月が腕を伸ばすのと同時に、美夜は意識を闇に覆われた。

 


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