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「火祭朱人……か」
今度は観咲が意外そうに光を見る。
「火祭一族は結構派手に仕事をしているだろう? だから知っていた。だが、水泉寺や桜屋敷は」
「我らは力を他人に見られるのが好きではないからな」
ぼそり、と呟かれた言葉を聞き、皆の視線は知らず美夜に集中した。
だがとうの美夜はなにやら考え込んでいる その横顔が、時々見せる物思いにふけている時の顔と同じだと、弓月は気づいた。
「昔は……桜屋敷の者も、兄さん達のような仕事をしていたんでしょうが……今は……」
その言葉の中に、いつも悩んでいることに関わる何かが含まれていると感じ、弓月は美夜に神経を集中させる。
だが何もわからず、ただもどかしさだけが心に残った。
流れた沈黙を経ち切ったのは涼しげな鳥の鳴き声だった。
「ああ、忘れるとこだった」
はっとして美夜から目を離し、胸元に手を差し入れる。
美夜に見蕩れていたのだと、目聡く観咲は気づき眉をひそめる。
こいつも要注意だな。
即座にチェックを入れ、後で美夜にそれとなく警告しておこうと心に決める。
「これを美夜に」
と言って光が取り出したのは、小さな緑褐色の小鳥だった。
「鳥をそんなところに入れとくな」
「鳥は鳥でも特別製なんだ。えさもいらないし人間並みの知能はある」
観咲の軽口に応え、小鳥を差し出した。
「うぐいす……ですか」
弓月の問いには曖昧に微笑む。
小鳥は光の手を離れ、美夜の肩に乗る。
「それとこれを」
そう言って光は大きな箱をテーブルの上へ置き、蓋を開けた。
皆が息を呑むのを笑いを浮かべて見渡してから、美夜の顔を覗き込む。
「美夜にプレゼントするよ」
「で・でも、これは……」
戸惑いながら、美夜は箱の中のウエディングドレスを見た。
「美夜が祓ってくれたから、もう無害だよ」
「でも…、こんな高価なもの、いただけません」
困惑しながら光を上目に見る。
「ふむ。じゃぁ、これは風車くんの治療費ということにしよう。できれば美夜が着たところが見たかったんだけど」
美夜の反応のひとつひとつを楽しげに見る なぜか皆沈黙したのを不安げに思いつつ、美夜は心底困る。
「いや、それは楽しみにとっておくか」
笑いながら言う言葉は、結婚式には招待しろとも、弓月と涼への宣戦布告とも聞こえた。
このドレスを着た美夜をぼんやりと想像していた三人と光の間に、なにやら険悪な雰囲気が漂うのを、美夜はおろおろと見比べていた。
そこへ来客を知らせるベルが鳴った。




