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五元素一族1

 黄金の国、ジパング。

 悠久ゆうきゅう仙境せんきょう蓬莱ほうらい

 それらはいずれも東の果てにあるという。


「確かに、妙な国よね。日本は」


 ミニスカートから惜し気もなく形のいい脚を出した女は、奇麗にカールされた黒髪を風になびかせながら数歩前に出た。

 カツカツ、と高いヒールが硬い音をたてる 後をついていく毛の長い白猫が、ひとなつこい鳴き声をあげて同意する。


「ミ・ミリオン、あまり前へ出ると危ないですよ」


 女の後方にある壁に背を張りつけながら、背の低い男は言う。その腕には生意気そうなシャム猫が抱かれていた。

 そんな二人を、男の頭上にあるネオンが照らしていた。

 そこは六階建てのビル屋上だった。

 ミリオンはさして怖がる様子もなく縁に立ち、眼前に広がる景色を眺める。

 男の注意など聞こえていないようだ。


「こんなクソ小さな国の中に透き間なく人が溢れ、欲望が大きな渦をまいている。…コルバルト、お前には見えない?」


 問われた男は恐る恐る前に歩を進めた。

 彼の銀色の髪が排気ガス臭い風になびく。


「物・金・異性…それらに対するこれほど強い欲望が、この島国を経済大国とさせるているのでしょうか」


 暗に見えると言いながら、コルバルトは鮮やかな青い目を細める。腕に抱くシャム猫がそっと眼を開いた。


「土地が原因か、それともこの多くの人間が原因か…。本当に妙な国だこと。とにかくずっと誰も踏み込むことのなかった東を任されたんだもの、念入りに見回りましょう」


 艶やかに笑むと、ミリオンは身を投げ出す 一瞬ほど遅れて白猫が後を追う。

 屋上から飛び降りた女にさして動揺するでもなく、コルバルトはため息をつく。


「高いところは苦手なんですが…」


 シャム猫を肩に乗せかえてからため息をつき、コルバルトも飛び降りた。


 遠く、低く、都会の喧騒は止む事はない。


 だがその日、この六階建てのビル付近では自殺があったと騒がれることはなかった。

 二人と二匹の死体など、見つからなかったのである。

 飛び降りたはずの者達はどこへ消えたのか 


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