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   7

「くそっ」


 両手を拘束されている涼には身動きが取れない。


「止めろ! そいつを美夜に近づけるなっ」


 涼の命を受けた池の水はしなやかな鞭のように炎へと向かっていく。


「涼様。医師が参りました。涼様、どちらにいらっしゃるんですか?」


「波、下がっていろ!」


 怒鳴り返し、水に手首を拘束する草を切らせる。そんなことをしていたために、前方への注意が散漫になっていた。


「こーのくそガキがぁ!」


 弓月の操る風に乗りながら、観咲が降ってきた。その手には剣が握られている。


「涼様」


 波に飛びつかれ、涼は剣より逃れた。


「小僧…女を盾にするたぁいい度胸じゃねーか」


 波を避けたために地面へ突き刺さった剣を抜き取り、観咲は一振りする。


「観念しやがれ」


 天より振ってきた閃光を剣で受け止め艶やかに笑う。観咲はその身に雷光を纏っていた


「まるっきり悪役ですよ、観咲」


 観咲と背中合わせになるように舞い降りつつ弓月は呆れた声で言った。


「どけ。用があるのはその小僧だけだ」


 弓月の言葉を無視して、涼を庇う波に言い放つ。


「嫌よ!」


「どけろ波っ」


 無理矢理波を池の方へ突き飛ばし、観咲を睨む。


「誰にも渡さない! 美夜は僕の物だ」


「ぼぉくのものだとぉ…」


 ぴしぃ! と、観咲と弓月の額に青筋が立つ。


「こ・のぉ…クソガキがぁ!」


 振り下ろされた剣を、涼の張った水の壁が受け止める。

 一方その背後では、弓月が襲いかかる水の蛇をかまいたちで切り裂きながら、美夜の周囲に結界を張っていた。


「美夜さん、美夜さん! どうなさったんですか」


 水の蛇に邪魔されて近づくことのできない弓月はようやく美夜の異変に気づく。

 なにかを握り締めて、俯いているとしかわからない。


「一体なにを…?」


 握り締めているものに目を向けるが、そのほっそりとした手に包まれているのでわからない。と、その手に何かが落ちた。


 涙。


 かまいたちを放ちつつ、息を呑む。

 フラッシュのように脳裏に浮かんだのは、観咲を襲った不可解な水。


 まさか…指輪を奪ったのか? そして美夜さんに指輪を渡したのか? あの手の中には指輪があるのか…?


 もしそうならば、美夜さんが泣いている理由もわかる。


「なんてことを…!」


「そんな女なんか、いなくなればいい」


 波の叫びと同時に池の水が膨れ上がり美夜に襲いかかる。


「姉さんだけではなく涼様も奪うだなんて、桜屋敷一族なんか滅びればいい!」


「やめろなみ! お前の姉を殺したのは僕だ」


「いいえ。桜屋敷の女さえ、あなた様を攫おうとしなければ、姉は死ぬことなどなかったのです」


 美枝と涼が水と土の力をもって殺した女は波の姉だったのだ。


「結界が、破れるっ」


 弓月が呷いた途端、美夜の周囲に張られていた結界が崩壊した。だが波の操る水が美夜を襲う寸前に、赤い光が美夜に飛びついた。


「まずい! 炎が美夜に触れるっ」


 今、美夜の中には桜屋敷一族の力が完全に継承されている。そこへ異種の力が生まれれば二つは反発しあう。目覚めた炎の力と、継承されようとした土の力が同時に働いた為、美枝の死の際には両方とも弾け飛びあった。 だが今回はちがう。

 継承された力と、血の持つ力とがぶつかり合うのだ。

 観咲は叫ぶのと同時に弓月を抱えて炎の結界を張る。涼もまた波を抱き寄せ水の結界を張る。

 爆音と共に炎が辺りに燃え広がった。その中心にいるのはひとりの少女。


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