高校入学
電車の改札の向こう。
それはチケットを持っていないと立ち入れない場所。
それは……
中学から高校まで中高一貫教育の私立に入った私には片道50分もかかる電車通学だった。
中学入学時というなにかと大変な時期に父は死に、母と弟の3人でなんとか暮らして来た。3年間つまらない中学だった。
私には2人の親友がいて、周りはみーんなクソみたいな性格をしている。友好関係なんかうまくいくはずがない。私にとりえは………
ない。
「おっはよー!」
明るく言う。いつも私って明るいし浮いているイメージしかないかも。きっと誰もが私の事を嫌っている。わかってるけど今更どうしようもないって諦めてる。
「おはよ!愛夢、高校の制服違和感めっちゃあるねー(笑)中学の方が似合ってよ~(笑)」
「うるさいなー」
こんな風にして言い合えるのは舞だけで。こんな冗談、親友の智美にも真由香にも言えない。冗談が通じない親友が私の親友だから。
「ねねね、外部から入ってくる男の子にイケメンがいるんだってー?私噂で聞いたよ~愛夢と同じとこ住んでるって!」
外部というのは、うちは中学から高校に上がる時、別の中学から高校に入学してくる人達のことだ。
「聞いてる~⁉すっごいイケメンで~すっごい賢いって!愛夢は同じ電車なんだからいいよねー羨ましいよー」
「あーそ、ほんっとそーゆーの興味ない。ウザいだけだよ、そんなの」
とかいつも言っちゃうけど、実は私、その人のこと知ってる。幼稚園からの友達がそいつの従兄弟だったりするから中学の時に、イケメンだのどーだの聞いてた。