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寒さ嫌いの氷魔術師  作者: カフェイン
第二章 任務編
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任務完了? 忍び寄る影

気が付けば咲の戦いは終わっていた。

結果は言うまでもなく咲の圧勝である。

蔵斬はあっちでピクリとも動かず倒れている。

死んでないよな、あれ。


「おい1班、無事か」


外から海斗たちの声がきこえてきた。

2班も襲われていたのだが、無事だったようだ。

この様子じゃ他の班も大した被害は出てないだろう。


「こちらは全員大丈夫です。2班のみんなは怪我してないですか」


「一人が軽傷・・・・・・。それ以外は全員無事・・・・・・・。」


「そうか、私たちは問題ないから先生たちに報告を。あと、まだ戦ってる班があれば助けてやってくれ」


2班のメンバーはみな「了解」といい去っていった。

だんだん足音が遠ざかっていく。

海斗たちが行ったのを確認すると、咲は地面に座り込んだ。


「咲さん、大丈夫かい」


俊介が心配そうに話しかける。

咲の顔は疲労の色が色濃く出ていた。


「少し魔力を使いすぎたな。あれも多発して風鎚エアーシュートも使ったから当然だな」


「あれって瞬間移動のこと。そういえばどうやって移動してるの」


光は首をかしげた。


「瞬間移動ではなく、正確には高速移動なんだけどな・・・・・」


咲が言うには風で自分の体を押して移動しているだけらしい。

しかし、それでは自分の体がもたないため、やや多めのオーラを身体全体に纏い強化しながらい高速で移動しているということだ。

なので、普段より多くの魔力を消費するのだ。

加えて、最後の大技の風鎚エアーシュートでさらに多くの魔力を使ったのである。



「無理しすぎじゃないですか。少しは自分の体の心配もしてください」


「いや、普段は武器だけで戦っているのだがな。今回の相手はなかなかやり手だったから少し魔力を使いすぎただけだ」


「それでもです。今度からはこんな無茶しないでくださいね」


咲は星姫に苦笑しながら謝っている。

星姫の説教は普段の穏やかな性格とは裏腹にとても怖いものだった。

それは、委員長の咲がたじろぐほどに。

これじゃあどちらが委員長かわからないな。










「よし、そろそろこの部屋の捜索に取り掛かろうぜ」


10分ほど休憩した後、正人は立ち上がりみんなの方を向き言った。

正人の言葉に4人も立ち上がり、少し体を曲げたりして固まった体をほぐしたりして、すぐに調子を整える。


「でもさ、犯人は咲が倒しちゃったんだし、別にしなくてもいいんじゃない」


「それでも一応、工場内の確認が今回の任務だからね。こっちも最後まで仕上げておかなきゃ」


光は一応俊介の言葉に納得したが、それでも面倒くさそうにしている。

任務だから仕方ないさ、と正人はつぶやき、光の頭をぽんぽん、と2度撫でた。

「わかってるよ」と光は顔を少し赤く染めながらうつむく。

顔赤いぞ、熱でもあるのかと聞いたら、溜息とともに「なんでもないよ」とややしょんぼりした様子で先頭に立ち奥の方へ進んでいった。

なんで溜息なんだろうと俊介たちに聞いてみると、「自分で気付くのが一番だと思うよ(な)(います)」3人揃えて謎の言葉をのこし光の後について行った。

俺が悪いのか、という正人のつぶやきはしっかり光の耳に入っており、もう一度ため息をついたそうな。



奥には1枚のドアがあった。

おそらく、蔵斬とその手下たちが出てきた場所だろう。

それに、この部屋の入口の扉に張られた魔法陣もこの部屋から操作していたものなんじゃないかと俺は疑っている。


「この部屋を見たら私たちも戻るか」


咲はそう言い、4人に警戒を厳にするように促した。

この部屋が一番何かありそうだからである。


「私が開けるから4人は後ろを頼む」


正人たちは小声で「了解」と言い、全員咲の後ろについた。

咲は片手はドアノブに手をかけ、もう片方にはダガーを持つ。

正人は氷の刀を出現させ構える。

光も銃を構え、何時でも撃てるようにドアの方へ向けている

俊介は全神経を集中させ、ドアの方を凝視している。

星姫は両手に雷を纏わせている。

5人全員が油断せず構えていたのに、






「その部屋には入らないでくれるかい」



背後からの長身の男の接近に全く気が付かなかった。

正人たちは一斉に振り向きそれぞれの武器を男に向けるが、男は全く動こうとはせず笑みを浮かべるだけだ。

男に比べ、正人たちは全く動揺を隠しきれない。

いくらドアの方しか見ていなくたって、この距離で気配に気が付かないというのは男が相当な手練れという証拠である。


「そんなもの向けないでよ、その部屋に入らないでさえくれたら殺さないからさ」


両手を上げて降参のポーズをしながら男は言う。

なんとなく嘘くさかったが、今は何もしてこなさそうなので一旦距離を取った。


「あんたは何者だ。蔵斬ってやつがあんたらのボスじゃないのか」


「それを君たちに言う必要が僕にあるのかい」


こちらの方も向かずにそう言う。

どうやら、答える気はなさそうだ。

正人はわかる範囲で現在の状況を整理してみる。




まず、こいつは蔵斬より間違いなく強いだろうな。

俺ら5人を前に余裕な顔で立ってやがる。

こっちは咲がほとんど戦えない状態だ。

逃げるか?

それじゃあこいつも逃げられてしまうし、ほんとに逃がしてくれるかわからないな。

先生たちが来るのを待つのが一番か。

戦うのは危険だし、適当に話して時間を稼ぐか。



「答えるまで何度でも聞くぜ、お前は何者だ」


「・・・・・・はあ、仕方ないね、特別だよ」


男は一度ため息をつき、やれやれといった顔でこちらを向いた。



「・・・・・・・・なんて、言うと思ったかい。凍えろ」


男は手を大きく横に振ると、全員に向かって冷気の魔法を放っってきた。

やっぱり殺す気じゃないかと思うも、正人たちは何とかその攻撃を防ぐ。


「くそっ、力が入らない・・・・」


正人は火炎の魔力を使い何とか防ぐも、もともと火炎魔法が苦手なうえに弱点の水氷魔法の「氷」の方の魔法なため、体力、魔力を多めに削られた。

何とか防ぎ切った後、光が正人のもとに駆け付けた。


「(なんだ、こいつの魔法は他の人の魔法より多くの体力と魔力を持って行かれる)光、大丈夫か」


「正人の方がダメージ受けてるでしょ。いつもより辛そうだけど大丈夫?」


「心配ないさ、まだいける」


内心、光の観察力に驚きながらも正人は何とか答えた。

男の方を見てみると、なぜか不気味な笑みを浮かべてこちらの方を見ている。


「君はいつも水氷魔法を受けるとそうなるのかい」


正人はその質問に驚いたが顔には出さず相手にしないことにした。

この男は俺のことを知っているのかと思ったが、自分は会った記憶がない。

とりあえず、油断しないように一層気を引き締めることにした。


「答える気はないか、じゃあ質問を変えよう。君は水氷系の魔法が得意で光陽の魔力が多いが相手から受ける水氷の魔法は苦手で、それは日常生活にも支障をきたしてるだろ」


「どういうことだ、お前は俺の何を知っている!」


9割がた自分の体質のことを知られていることに流石に動揺を隠せず、正人はつい叫んでしまった。

男はその声を聞き、満足したように笑みを浮かべ一歩前に踏み出す。

それだけの、たったそれだけの行為で場の空気が変わった。

正人たちの背中に冷たいものが流れる。



(まだ自分のことに気が付いてないか、なら何も知らない今のうちに殺っちゃおうか)



「僕の名前は白井光平しらいこうへいだ。少し事情が変わった。君たち全員殺させてもらうよ」

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