奇襲 敵との対面
「なにっ!」
「閉じ込められた。それに、魔法陣だと」
慌てて扉を開けようとするが、ピクリとも動かない。
扉を中心に半円の魔法陣が壁に浮かんでいる。
ここの壁だけが妙に丈夫だったのはこの魔法陣を出現させるためだったのだろう。
そしてこんな廃工場に魔法陣が張ってあるということは・・・・・
「わざわざご苦労なこったなあ、紅魔法学校のガキ共よお」
奥の方から一人の男が出てきたのを筆頭に、次々とその手下と思われる男たちが出てきた。
やはり人がいたのか・・・・・
その数はおよそ10人。
その全員が鉄パイプやら木刀などを持っている。
「おい、どうした、何かあったのか」
外の2班も正人たちに何かあったのかと気づき、叫んできた。
「海斗、無線で先生たちに報告を、急いで」
俊介が外の海斗たちに先生を呼ぶように言った。
2班が外にいなかったら不味かった。
正人たち全員心からそう思った。
しかし・・・・・
「もしもし、こちら2班・・・・!もしもし、先生!応答してくれ」
何やら海斗の様子がおかしい。
先生たちと無線がつながらないのか。
「どうした、無線がつながらないのか。そうだろうなあ、魔法陣を出したら一斉に電波妨害装置を起動させるように言っといたからなあ」
「言っといたということは、まだ仲間がいるんですか」
「そういうことだ。今頃お前の仲間も俺の手下に襲われてるだろうよ」
正人たちは初めから罠に引っかかっていたようだ。
ボロボロすぎる内部やこの壁といい疑うべきところはいくつもあったのになぜ気づけなかったのか。
咲は心の内で舌打ちをした。
「うおっ、何だお前ら、」
「新手・・・・・・・・。」
外にもこの男の仲間が来たらしい。
少しずつ外から戦闘音がきこえてきた。
「おっ、外にもいたみてえだな。お前らも早くやっちゃいな」
男の合図で周りの手下たちが一斉に襲いかかってきた。
全員、炎やら水やらを武器に纏わせて突っこんでくる。
できるだけ戦うなと言われているが、この状況では戦うしかない。
「ちっ、俊介行くぞ。中央に突っこむ。女子はサイド任せた」
「仕方ないね、任せてよ」
「わかった(わかりました)(了解した)」
正人の合図で5人は一斉に立ち向かっていった。
相手は魔法を使える人を含め自分たちの倍の人数の10人。
相手の力がどれほどのものかわからないが、もし手練れだとすれば厄介だ。
そんな中、正人と俊介は真っ先に中央に走りこんでいく。
「はああっ!」
「ふっ!」
正人と俊介はそれぞれ氷の魔力で生成した刀と薙刀を持ち、正面に来た男に斬りかかる。
相手は防護服を着ていない状態であるので特殊魔法、(オーラ)を使ってきた。
オーラとは特殊二属性の魔法で、光陽か暗陰の魔力を使い身体全体に纏わせるものだ。
この魔法は特殊二属性の最も基本の魔法であり、疑似的な魔法防護服の役割をする。
「うあっ。」
「クソ、このガキども強えじゃねーか」
しかし、魔法防護服を着ていて、学校である程度の戦闘訓練を積んでいる正人たちの方に分があり、正面に来た4人はすぐに片付いた。
光たちの方も銃を乱舞したり、雷の矢で貫いたり、演奏で作った音塊で打ち抜いたりして、手下の10人はすぐに全滅した。
他の仲間もこいつらと同じぐらいの強さなら1組のメンバーなら全員無事だろうと思う。
「ああ、もう全滅かよ。まあ、期待はしてなかったがな」
男はそう吐き捨てる。
男は、正人たちが戦っている間、部屋の奥の方で座っていた。
正人たち全員の力を測っていたのだろう。
しかし、思ったよりもデータが得られなかったのか、少しいらいらした様子で立ち上がった。
「お前が最近起こっている誘拐事件の犯人なのか」
咲が直球で質問を投げかける。
男は、あまりにもまっすぐな問いかけに一瞬驚きつつも、深い笑みを浮かべ、
「その通りだ、俺がこの犯行グループのボスの蔵斬だ。悪いがお前らはここで死んでもらうぜえ」
「そうか、それだけわかれば十分だ。みんな下がっていろ」
蔵斬は殺気をこめながら叫んだ。
咲以外の4人はその圧力に身震いし、一歩後ずさってしまう。
しかし咲は微動だにせず、自分一人で戦うと言う。
「いくらなんでも無茶だよ、咲。みんなで戦ったほうがよくない」
光が心配そうに声をかける。
しかし、咲はこちらを一回振り向いただけで何も言わなかった。
その顔には、心配するなと言ってるような気がした。
「蔵斬といったな、私が相手をしてやる」
咲は一歩前に出る。
そして、いつもの武器のバイオリンではなく、二刀のダガーを生成し言い放つ。
「紅魔法学校、2学年1組、護峰院咲。推して参る」