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彼と歩いていると…

作者: WAIai
掲載日:2026/07/14

「今日も暑いね」


私はそう言うと、手で顔をあおく。

隣には彼が歩いており、

「そうだな」

と言ってくる。


それから空を見上げたので、一緒に同じ方向を見る。

太陽は皆を明るく照らそうと張り切っているのか、陽が強く伸びていた。


彼が額に手を当て、光を遮ると、何故か私の腕をひいてくる。


「どうしたの?」


急なことだったので驚いていると、彼に動かされ、道路側を歩くことになる。


それから自分は家の並ぶ側に立つ。


「いいぞ、歩いて」

「え? よく分からないんだけど」


私が戸惑ったように言うと、カンと高い音が響いた。

何の音だろうと私と彼が視線を向けると、先に彼が気づいたようだった。


私はちらりと彼を見、一緒の方向を見ると、ようやく気づく。


「大工さん達?」

「そうみたいだ」


彼はそう答えると、私を守ろうと身構えたようだった。


大工さん達は組まれた足場に乗っており、屋根に登っている人もいた。


私は平気なんだけどなと思いつつ、守ってくれることを嬉しく思い、抱きつきたいくらいだった。


しかし彼は視線をそらさず、1点を見つめる。

どうやら足場にいた1人と目が合ったらしい。


30代くらいだろうか。

熊のように獰猛な顔つきで、彼のライオン顔に負けていなかった。

体格も良く、2人が喧嘩したらただでは終わらない、そんな危機感があった。


私は彼に触れようとして、やめる。


1対1で睨み合っており、女がしゃしゃり出る場ではなかった。


ごくりと唾液を飲み込むと、彼が私を守りながら、口を開く。


「何ですか? 俺達に用でも?」


彼の声は低く、いつでも牙を出しそうな勢いだった。

私はどうしていたのか分からず、見守っていると、大工が答えてくる。


「お前、偉いなと思ってな」


元々、知り合いだったかのように、親しげに話しかけられて、拍子抜けする。


どうやら喧嘩は免れたようだと、安心すると、彼がここは任せろとうなずいてくる。


「何が偉いんですか?」


彼の声は大工に比べて硬く、険しい顔つきとなる。


大工がピューと口笛を吹き、彼の目の前に立つ。


身長は彼のほうが高く、ライオンと熊の対決みたいな感じに見え、心配する。


しかし大工は場を明るくしようとしてか、表情を若干、緩めて言ってくる。


「彼女、危ない目にあわせないようにしただろう? だから偉いなと思って」

「それはどうも。ありがとうございます」


彼の感謝の言葉を聞き、私は急に道路側に立たせれたことを思いつく。


守ってくれようとしたんだと嬉しくなり、顔が穏やかになっていく。


大工は彼の頭に手をかざすと、

「お前、デカいな。どうだ、大工にならないか?」

「あの…それはまだ決めていないので」


彼が上手くはぐらかせると、大工が私に近づこうとするので、彼の身体がガードしてくれる。


「大丈夫だって。取らねえよ。…おい、彼女」

「は、はい…!!」


急に声をかけられ、まるで生贄として熊の前に差し出された肉のように、硬く返した。


「こいつ、大事にしてやれよ。あんたを守っているみたいだから」


大工は彼の肩をばしばしと叩くと、彼が「はあ」と答える。


怖いと思いきや、良い人っぽいので、私も困惑してしまうが、ちゃんと大工に答える。


「はい、大事にします!!」


私も守られてばかりではいられないと、胸を張る。


「それでいい、それでいい。な、彼氏?」


また肩を叩かれ、彼はうなずくにとどめる。


「じゃあな、気をつけて帰れよ」


そう言うと、大工はするすると足場を登り、仲間と合流する。


私は戸惑いながら、視線を向けるが、もう違う話をしているようで、肩すかしを食らう。


それから彼を見つめると、

「私を守ってくれたの?」

聞いてみると、背中が叩かれる。


「何か落ちてきたら危ないだろう? だからその、道路側にしたんだよ」

「そうなんだ。ありがとう」


私は身体から力を抜くと、彼と手を繋ぐ。

彼も待っていたのか、柔らかく包んでくれる。


「早く行こう。邪魔になるといけないから」

「うん」


私は素直に答え、歩き出す。


一度、彼が振り返ったので、一緒に見てみると、大工が手を振っていた。


最後までよく分からない人だったなと思いつつ、仲良く歩いて行くのだった。







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